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ダンジョン仕草  作者: 埴輪庭


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第20話:アヴァロン大迷宮第4層【陰風毒道】

 ■

 普通だな、というのが君の感想である。


 要は、石壁、石畳の殺風景な普通の迷宮ということだ。


 しかし空気は淀んでおり、まるで墓場の様に湿ってもいた。


 ルクレツィアが言うには小型の悪魔と毒蛇が出るとの事だった。


 いかにも大した事が無さそうな響きに君は仰天してしまう。


 第4層でそれとは、まさか大迷宮を過大評価していたのだろうか。


 ただ、君は毒という状態異常は余り好きではない。


 魔法で癒すには何となく勿体無いし、放置しておくには余りに危険だからだ。


 ルクレツィア達もこの階層では毒蛇にやや手を焼いたという。


 通路の各所の光源……ランプの様なものは行き先を照らすがしかし、影をも作り出す。


 もっと強い光量が必要かもしれないと考えた君は、丁度よく広場があったので、キャリエルらをその場にとどめ、『照明』の魔法を使用した。


 通路で使うと光量が強すぎて仲間達の目が眩んでしまうだろうなとおもったからだ。


 君が作り出した光の球は暫くの間君達の道中を明るく照らすだろう。


 ■


 光が通路の影を剥がすと、よくよく見れば蛇がそこかしこにいる。


 あれが全て毒蛇なら、なるほど、少し面倒かもしれない。


 キャリエルはやや顔色が悪い様だ。


 蛇が苦手なのだろうか? 


 君が問いかけるとうんうんと頷いていた。


 ついでにモーブも厭そうな表情を浮かべていた。


「私もああいう小さくて沢山居る相手というのが苦手で……」


 モーブが情けない表情で言う。


 確かに彼の戦闘スタイルは機動力を活かしたものだ。

 ああいう手合いには機動力もクソもあるまい。


 君は気にするなと肩を叩いた。


 対してルクレツィアはやる気のようだ。


 彼女は範囲攻撃の類を得意とする。


 だが君はストップを掛けた。


 ルクレツィアは死ぬ順番が分かっていないようだからだ。


 君は静かにモーブ、キャリエルを順に指さし、君自身、そしてルクレツィアを指さしていった。


 原則としてはこれが死ぬ順番である、と。


 回復を行うものは最後に死なねばならない。


 最後まで死んではならない。


 ルクレツィアの前に君が居るのは、君の役割がアタッカーである、そして全員の実力が大体同じ程度だと仮定しての事だ。


 それに単なる解毒の魔法でも君にとっては貴重なストックを一つ削る事になってしまう。


 ルクレツィアにはそういった制限はない。


 極端な重傷やあるいは死といったものの治癒を考えなければ、ルクレツィアは君より優れた癒し手と言えるだろう。


 そういった諸々の事を考えると、今回は君自身が処理した方が良い。


 ■


「はっえ~……色々考えているんだねぇ……」


 キャリエルが驚いた表情で言ってくる。


 君はそんなキャリエルにこそ驚いたが、彼女のスタイルを考えると無理もないかと納得した。


 なにせ何となくとかそういうワケの分からぬ感覚で危難を回避する者なのだ。


 彼女が仮に魔導散兵として鍛錬を積んだならば、末恐ろしい事になるかもしれないなと君は思う。


 下がっていろとキャリエルを下がらせ、君は掌を上に掲げ呟いた。


 ──『火花』


 小さい火球が君の掌からいくつも放たれ、そこかしこへ着弾し蛇を焼きつくしていく。


 威力は大分抑えてあるが、それでも蛇にとっては一撃一撃が致命となる威力で、周囲は完全にクリーンな状態となった。


 ・

 ・

 ・


 キャリエルはこげた蛇をつまみ、食べられるかなと言いだしていた。


 ルクレツィアは呆れた顔でやめなさいなと嗜めている。


 モーブは手を壁に向け何やら力を込めている。


 使いたいのかと聞くと恥ずかしそうに頷いていた。


 風を利用した移動術も大したものだとおもうのだが、と君が言うと、更に恥ずかしそうな顔をしていた。

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まだまだ沢山書いてますので作者ページからぜひよろしくお願いします。
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