〇93
結界が晴れた後、夕方になるまで高台の場所から町を眺めていた。
十分ゆっくりできたとおもうけれど、モニカ自身はさっきの事を考えている様子だった。
自分はあまり関係が無いとはいえ、この世界でも排外主義があるとするとかなりややこしい気はする。
「そろそろ帰るか・・?」
そう思っていたが、いつの間にか自分たちはあの三人に囲まれていたので、流石にそのしつこさにあきれていた。
「ふふふ・・ようやく見つけたよダーリン。」
「その呼び方古すぎるだろ・・。」
もはやどのヒロインも使わないだろうし、ただ明らかに戦闘準備に入って居るため油断はできない。
「ミーナ。あの男じゃなくてモニカの方を狙うはずだったでしょう?」
「何であんな男がいいんだか・・。」
他の二人にもそう言われていたが、ミーナは武器を構える。
「さぁ、大人しくしなさい。」
「えぇと。とりあえずさっきのテロとはあまり関係なさそうだな・・。」
「テロ?」
「まぁいい。えっと、モニカ。どうする?」
モニカの方は三人を無視して町を眺めている様子だった。明らかにやる気が無い。
「ちょっとそこの人?貴方危険な状況だってわかってる?」
「えぇ。分かってるけど。でも面倒くさいわね。貴方たちを構っているだけで面倒くさいわ。」
「ふーん?それはつまり、私に惚れてるってことね。」
「・・・。」
ミーナ以外、意味不明だよという表情をしていた。
「全く・・。何だか突然イライラしてきたわね。本当なら殺してしまってもいいのだけれど。」
ゆっくりと動き、モニカは彼女たちの方へ歩き出す。
「モニカ?」
「ナガトは下がって居て。」
謎のプレッシャーを感じた三人はすぐには動けなかった。
そのモニカの表情、その瞳が一瞬金色に輝いていたのは錯覚ではない。
「にゃ、ヤル気なの!?」
「そっちから来ていいわよ。別に、貴方たち程度の人間がそれを使いこなせるはずないもの。」
「そんな筈・・大体、あの騎士だって最大威力の魔力を発揮していたじゃない。」
「あれが最大威力・・・?」
「え?」
「本気を出せばこの町一帯を一瞬で滅ぼせるわ。この武器は、私以外使いこなせないもの。」
そう言っていたが、ミーナは構えた大罪武器の魔力を解放する。
「嘘を言わないでよ。これはどう見てもAランク以下の玩具じゃない。」
「Bランクよりも上の武器を使った事あるの?それは凄いわね、貴方。」
「挑発してるなら受けて立つわ。」
「ちょっと、ミーナ・・今は!?」
リノンが制止しようとしたが、ミーナの大罪武器から魔弾が射出される。
それがモニカに命中したが、明らかに魔力障壁が発生していなかったように見えた。
土埃が消えても、モニカ自身が全く傷一つ負っていないように見えた。
「え?え?え?」
何が起きているのか分からない。彼女自身に明らかに命中したが、魔法障壁を発生させていない状態で魔弾をくらっていいはずがないのに。
「いっそ至近距離で攻撃すればいいじゃない。二人とも、援護を!」
「テレジア・・!?」
更にテレジアが突撃し、大罪武器を彼女に対し振りかざす。
斧による重量攻撃であれば、明らかにこっちの方が上のはずだ。ただ、テレジア自身には彼女に一度遅れをとって居るが。
今は三体一。そもそも負ける必然性が無いはずだが・・。
「はぁ!」
飛び上がってそのままモニカへ攻撃する。その単純な攻撃を、モニカが取り出した大罪武器、暴食から出でる魔力の光刃により防がれた。
その光刃は黒く、明らかにテレジアが一度みた時よりも段違いに太く大きくなっている。
「な、何・・これ!?」
そして、彼女の真下に突然出て来た黒い泥。そこから出て来た無数の手により捕縛される。
更にモニカは、彼女の腹部に蹴りを直撃させた。その行為により、テレジアは意識をすぐに失ってしまう。
「さて。これで一人目ね。援護しなかったのはわざとかしら。」
「は、反則でしょ今の!?」
「私以外使いこなせないと言ったでしょう?」
「この・・・!」
更に魔弾を発射するが、それらは大罪武器により弾きかえされる。
モニカは突撃し、一瞬にしてミーナのすぐ前まで詰め寄った。
しかし、その攻撃はリノンによる援護射撃により何とか窮地を脱する事ができた。
「今まで能力を隠していたなんて・・!」
「いや、単純に貴方たちが弱いからどうしたらいいか迷っていたんだけど。脅威度でいえばアリシアの方が上ね。」
「アリシア・・こんな所で、何で・・!!」
「ん?」
突然リノンは突撃し、光刃をモニカへ叩きつけようとする。
つばぜり合いの状態になったが、すぐに体勢を崩されてリノンの横腹に回し蹴りが入ってしまう。
「っ!?」
モニカの真後ろ。ミーナは至近距離で彼女に対し大罪武器を構えている。
収束する魔力の渦が発生し、問答無用でモニカに対し魔法を射出した。
大きくその場所が爆発し、地面のレンガが砕け散っていった。
「モニカ・・!?」
ナガトが見ている先は大きな土埃が発生して見えていない。
その光景が収まるまで、自分は待っていなければいけないのだろうか。
「え?」
そのモニカは、がっしりとミーナの首を掴んでいた。
先ほどの攻撃は外したのだろうか、ミーナの手からは大罪武器が離れていた。
「残念だったわね。さっきのはおしかったわ。当たれば私が負けていたかも。」
「化物・・!」
「そうね。それで、これから先はどうすればいい?」
そう言って、モニカの左手に握られている大罪武器がモニカに向けられる。
「っ・・!?」
「私は、昔から逃げ回っていて。追い詰められたら私は人を仕方なく殺していたけれど。でも、あれは正当防衛。女の子に対して凶器を見せる奴らの方が悪いもの。」
「そう。でも、周りから見たら貴方は怪物にしか見えないわね。夜中にウサギ狩りをしている女の子なんて、獣人にも居ないもの。」
「それは初耳ね。てっきり同じような事をしているとばかり。」
「どいつもこいつも・・獣人を馬鹿に、して・・。」
「私だってお腹がすいていたから仕方が無く動物を狩って居ただけよ。」
「っ・・!?」
力が徐々に強くなる。このままでは、彼女を殺してしまいかねない。
「モニカ、もういいだろう?これ以上戦う理由が無い。」
「貴方、私に意見していいと思っているの?」
「ミーナたちだって、お前と似たような境遇のはずだろ?」
「それもそうね。でも貴方は彼女たちに酷い目をされたんでしょう?」
「その手を放すんだ。」
僕は結局、我慢ならずに自分が持っている大罪武器、無名を構えた。
「何それ・・?」
「これ以上は蛮行を許せない。」
「そう。残念ね。」
ミーナに武器が近づく。それを制止しようと僕は走り出した。
先ほどの黒い泥が更にモニカの足元から広がり、そこから出てくる手が迫って来た。
それを、僕はすぐに切り払った。無我夢中で、おそらく意味が無い行為だと思っていたが。そうでもなかったようだ。
「何!?」
驚いていたのはモニカも一緒だった。僕が持っていた無名、それが彼女の泥に反応して魔力が強まったようにも感じている。
次から次へと発生するその手を何度も切り崩し、彼女へと迫る。そこで、モニカは暴食から出でる光刃を僕に対して切り払った。
それを、僕は防御したが、不思議とその光刃は消え去った。
不思議なほどに、無名は彼女の能力に対して優位に立って居るようだ。
「嘘、こんな事・・うっ!?」
ミーナはモニカの隙をついて、膝蹴りによりモニカの肘を思いっきり蹴って居た。
流石に痛そうで、すぐにモニカの手の力が弱くなると一気に脱出。
凄い速さでバック転した後に大罪武器、色欲を回収して彼女に対し構えた。
「やっぱり愛の力ね。」
そのあまりにも適当というか空気読めないミーナの言動が、モニカをさらにイラつかせる。
「貴方・・どういうつもり・・?」
その彼女の金色の瞳の光がさらに強まったように感じる。
彼女の周囲から更に黒いオーラが出ているように見えるが、明らかに彼女は怒って居るように見えた。




