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確かに、ミーアにキスされた事自体はアリシアからすればありえない事だろうけど。
それにしたっていきなりお座りは酷いのではないか。
「地面の匂いを何回嗅ぎまわれば、自分の愚かさに気が付くのかしらね。この愚民は。」
「確かに申し訳ない限りではあるんだけれど。僕としてはもう少し優しくできないかなと。」
「私にそんな事を期待しても無駄よ。大体、あんな獣にいいようにされただなんて。しかも私の奴隷が。自分の手荷物に変な傷をいれられたようなものよ。」
「心配してくれるのは嬉しいけどさ、別にミーアは悪くは無いんじゃないか?」
「はぁ?」
「あれだって、別に本心から別に変な思いを抱いていないだろうし。僕とミーアは赤の他人であって兄妹ではないんだから。健全な行為ではあるんじゃないか?」
「貴方、どうしてそんなに擁護するのか知らないけれど。その獣を甘く見ては駄目よ。生身の人間を潰す力だけはあるんだから。」
「別にミーアは、そこまで下品というわけじゃないと思うけど。頭が馬鹿なだけで。」
「いい?獣人は他の種族と比べて動物的な本能が強い生き物なの。人間とはくらべものにならないのだから、迂闊に近づいてはいけないのよ。」
「はぁ。」
「だ、だいたい、ナガトに突然キスした事自体ありえないんだから。ミーアが何を考えているのか知らないけど普通はありえないんだから!」
「何怒ってるんだ。あんな事されたからって別に僕はアリシアの奴隷であることは止めたりしない。」
「え?あ、そう。でもどうかしら、もしミーアにまた言い寄られて、変な欲情出したりしないの?」
「欲情って。むしろ寄ってくる方が悪いんだろう。」
「・・・・・へぇ。ミーアの方が悪いから、自分は何もしないのは普通だと言いたいわけ?」
「お、女の子にキスされるのは、嬉しいはずではないんじゃないか?」
「答えになってないわ。」
突然変な笑顔をした彼女は、ゆっくりと僕に近づいてくる。
地面に座って居る状態になっていた僕の上に居る感じになったけれど、さすがにこれは近すぎるのではないか。
「ミーアからは、大体こんな感じにされていたのかしら。」
「まぁ、大体はこんな感じ、か?」
「貴方からしてみたら、確かにミーアは脅威かもしれないけれど。結局相手は貴方の敵なのだから、変な好意に騙されて相手に無抵抗でいるのは危険すぎるわね。」
「でも、武器は持っていなかったし。もし男女逆でも、ミーアは僕に乱暴していたと思うよ。」
「く、ふふふふ。成程、確かに奴隷の娘が獣人に乱暴されているのなら考えられるけれど。まさかそんな事を考えるだなんていい心がけね。」
「あの、アリシアさん?何をしたいんですか?」
目の前に居るのでかなり怖いというか、この体勢ではうかつに動けない。
「じゃぁ、女の私が奴隷に対して変な行為をしたら。貴方は怒るかしら。」
「ま、待て。どうしてそうなるんだ?」
「どうしてって。貴方が私たちの敵に対して優しすぎるもの。それでもし貴方が裏切りなんて起こしたら、貴方が可哀そうな事になるんじゃない?」
「僕がアリシアを裏切ったりするわけないだろ。」
「そう?」
本当にそういう事を起こしてもなんのメリットもないから、というのが今の所の言い訳だけど。
「15歳の女の子がそういう事をしていいのか?」
「ミーアだって女の子でしょうに。」
「あいつだって獣人だろ。アリシアが言ったように、殆ど獣なんだから。」
「猫耳のついた女の子よりも、貴方は普通の騎士の方が好みなの?」
「えぇと。何の話をしてるんだ今は・・?」
「私、モニカ、ミーア、次は誰かしら。エクレール?それとも他に居た教団の女の子?」
「僕がそんなに節操無い奴に見えるのか・・?大体、エクレールの場合あまり僕のことは興味なさそうだけど。」
「あの子の好感度を上げるのは難しそうね。でも、だからって別に私は今の状況は許せないもの。大体、女の子だからって手を抜いていた時点で貴方は駄目なのだから。」
それはつまり、僕が手を抜いていた事が理由でアリシアは怒って居るのだとしたら。
確かに僕はあまり奴隷としての仕事はしていなかったというべきだろうか。
「つ、つまりどうしろというんだ君は?」
「それが分からないっていうのなら、一度試す必要はあるわね・・。」
「?」
その意味不明な彼女の言動を聞いた後、彼女は突然迫って来た。
アリシアが突然僕にキスをした理由がよく分からない、明らかに不自然なのだけれど。どういうことなんだろうか。
そのまま普通に離れた後、アリシアも実際はかなり赤面していたようだが。
「首輪への隷従密度が高まって来たわね。私に服従する事はまんざらでもないのかしら?」
「何だその不名誉なパラメーターは!?」
男女逆だったらかなりやばい内容になってしまいかねない。
僕を奴隷として活用する事にかなり執着を抱いてしまったようだけれど、本当に大丈夫なんだろうかこの騎士は。




