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ロワールの街並みを歩き、適当に自分が仕事できそうな場所を探してみる。
アルバイトでもいいけれど、ギルド関係は個人的には気まずくなるだろうから止めておこう。
夜まで歩いていたが、とりあえずまた明日には仕事を探す用意はある。
アリシアから借りた金はあともう少し、ロワールの寒い空気がまた厳しくなる頃合いだ。
「はぁ・・。」
何をやって居るんだろうか。私は。
エクレールは本来こんな事をしていてはいけない筈だけれど、しかしここまで逃げてきてしまった以上は引き返せない。
自分の持ち物が協会の物になってから、私はただ普通のエクレールとなった。
そのまま私は普通の少女で居るべきなのだろうか、それは私には分からない。
「んー。とりあえず、もう戻ろうかな。」
やる気すら感じられない。ずるずると引き延ばして、結果的には自分は何もしないまま終わってしまいたい。
人間として生まれた事を恨めばいいのか、あるいは今の社会を不条理だと叫べばいいのか。
そんな甘い考えさえ出てきてしまうけれど、エクレールはもう過去など自分から忘れているのだから。
「適当に生きる方法はあるけど、それを何十年もかけるのは辛いな。」
人間の人生は50年とプラスアルファ。50を過ぎればその人間はそこまで重宝されるわけではない。
経験や知識を要求するような仕事はともかく、それ以外の事に関しては明らかに居ない方がいいのだ。
新しさを生まない老いた人間になるまで、ずっと生きている事が苦痛なのだとしたらそれは地獄だろう。
エクレールでさえ、別にこの世界のことはあまり好きではないのだから。
「はぁ・・めんどうくさい。」
生きているのが面倒くさいのか、それとも自分が面倒くさいのか。
エクレールはそのまま通路を歩いて、自分の居場所へ戻ろうとしていた時だった。
ルーン石によって照らされている街灯の下に、見知った少女が居た。
最初は誰か分からなかったが、体格や雰囲気からして彼女はモニカだというのが分かった。
まさか、こんな場所でまた会えるとは思っていなかったけれど。
「こ、こんばんは。」
近づいて、とりあえず挨拶してみる。
モニカは、エクレールを見ていた。もしかして忘れられてしまったのだろうか。エクレールじゃあるまいし。
「貴方・・ここに住んでいたの?」
「いや、ただここに便利な仮住まいがあるだけで・・・。モニカこそ何してるの?」
「そうね。ナンパ待ち?」
「・・・は?」
一瞬エクレールは何事かと思ったが、とりあえす話は聞いておこう。
「適当に話しかけて来た人間を倒して金銭入手。気絶させればとりあえず上等だけど。この町って結構広いからすぐに衛兵から逃げられるのよね。」
「それただの犯罪者じゃない。なんでそういう事するの!?」
「ロリコンなんてみんな死ねばいい。」
「貴方の場合明らかに金銭目的でしょう!?」
「夜に大声を出さないでくれる?」
脱力したエクレールは、とりあえずモニカを反面教師として受け取っておいた。
駄目な人間の駄目な行動により、ロワールの治安は悪化していくのは止めておいた方がいいけど。
とりあえず、前みたいな血まみれのワンピースで歩いているよりはマシだろう。




