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「そういえばお伝えして居ませんでしたが。ナガトさんが持っている剣は大罪としての機能はありません。七つの大罪を概念として武器にインストールするために試作されたものです。聞いてますか?」
適当に聞いていただけで、僕は普通に横になって寝ていた。
次の町まではかなり時間が長いので、今は普通に休んでいたいのだ。
「あぁ。とりあえず貰っておくよ。」
「貸したのであってあなたに譲った事にはなってませんが・・。」
「色々あって疲れたな。正直、このままゆっくりしているのも悪くない。」
「そう言ってますけど、結局のところ貴方はなんなんですか?モニカに協力すると言った割にすぐにアリシアさんに協力してるし。」
「ん?まぁそうなるな。」
「はぁ。男という人はなぜこう鞍替えするのか。」
「別にやましい事はしてない。そういえば、モニカに一度噛まれたけど。結局噛まれただけで別に何も起きてないな。」
「そうですね。モニカは恐らく、貴方の血を覚えたのでしょう。」
「どういう事?」
「血を覚える、その血の中にある情報を覚える事で貴方を追跡できるようにしている筈です。」
「そんな便利な事できるのか・・。」
もしかしたらまた彼女にはすぐ会えるのかもしれないが、また戦闘になるのは回避したい。
「何のんきな事いってるのよ。下手をしたら私じゃなくて貴方を殺しに来る可能性だってあるじゃない。」
「何でだ?」
「なんでって。聞いた限りじゃ貴方、モニカに一度協力する事を受け入れたんでしょう?彼女からしてみれば、かなり不誠実な約束だと思うけれど。」
「うーん。僕としては、彼女はもう少しうまく生きてくれたらいいと思っていただけだから。」
「最低ですねこの奴隷。」
グレコからの評価がかなり下がって居る様子だが、モニカを敵に回したくないのは確かだった。
彼女は彼女なりの生き方があるはずだし、過去の話を聞いた以上はそもそも無視する事ができなかった。
「また合ったら何か奢ってもいいだろう。」
「何を?」
「さぁ。モニカもかなり肉を偏食しているぐらいだから。好きなものは限定されるだろうけど。」
「貴方は一体彼女を何だと思ってるんですか?言っておきますけど餌で釣っても彼女は仲間にはなりませんよ?下手をすれば貴方殺される事だってあるんですがね。むしろ死んでください。」
「別にモニカの事を雑に扱っているわけじゃないよ。あんな寒い恰好して獣みたいな生活をしている時点でおかしいのに。」
「彼女は確かにそうですが、しかし10年前はもっと酷かったんですからね。虚弱体質だから物を食べれないのに、両親が死んだ後に売られた後の彼女はもう殆ど人格は残って居ませんでした。今の状態になったからといって貴方にいいように扱われたくないはずです。」
「最初は騎士の奴隷だったか。どっちにしろあまり人間らしくないのは今も同じじゃないか。」
「人間らしくないのは確かにそうですが。彼女は元々動きが鈍っていた右腕をあの魔法使いに別の物に改造されたのは不本意です。」
「その魔法使いさんが殺された事は、モニカはどう思ってるんだ?」
「さぁ。でも、死体が後で教団に回収されたので。彼女がどこまで恨んでいるかは分かりません。ただ、右腕と暴食を手に入れた後のモニカは、今よりもはるかに酷かった。まさか熊一体分を暴食するだなんて、それほど食に飢えていたのでしょうね。」
「熊?」
あまり想像したくない状況だが、彼女は不死となった後にはもう普通から遠ざかって居る。
「もはや悪魔もびっくりの行為なので、ダガーの力もある程度機能していますし。七つの大罪の力を発揮するだけのポテンシャルは確かにありました。ただ、彼女はもう通常の人間を逸脱した以上、元の状態には戻れません。彼女は体で殺戮する事を覚えていますから。自分の体に染みついてしまったその癖は、殆どの生命にとっては非常に脅威となっています。アリシアさんも、実際の所例外ではありません。」
一度アリシアも殺されかけたが、グレコの言う通りモニカが悪魔的な存在となっているのは否定できない。
「10年間も獣の血肉で生きていたくせに見た目は綺麗だからな・・。とりあえず、一応聞いておくけどさ。グレコは一体モニカにどういう生活をしてほしいんだ?」
「え?」
「そこまであいつの事を心配しているのなら、明らかに戦わせない方がいいんじゃないか。」
「そんな事できたら最初から止めてます。あの子は明らかに自分から行動しているんですから。分からないんですか?私が居なくても彼女は勝手に行動するんです。」
それはつまり、10年前に暴食と右腕を手に入れた後に彼女は自分から獣を襲っている事になる。
あの屋敷の中にあった動物の死骸・・白骨化している分も含め、彼女は獣のような凶行をしてきた。
小動物以上の、狼と思われるものも確かにあったけれど。冷静に考えればあれは別に魔法使いさんやグレコが命令した事ではない。
「もしかして、本当はやってほしくなかったのか?」
「当り前じゃないですか。いくら私でも彼女にあんな事はさせません。彼女、最初からおかしいんですから。私がどう言ったところで止められないんです。あの右腕のせいで特に。」
グレコが止める事はできない、というよりモニカは明らかに自発的に暴食を実践している。
明らかに普通の人間なら死ぬような行為を彼女はしていた。明らかに、彼女は他の大罪の所持者よりも欲が暴走しているのだ。
10年前、虚弱体質だったということで彼女は拒食であることを強いられている。
その反動によって彼女はあのような行為をしたのだろうか。
いくらなんでも正直異常過ぎる行為だが、だからといって僕が彼女をどうにかできるのだろうか。
「はぁ。町につくまで眠らせてくれ。」
「私に喋らせておいて何を。本当に寝てますし。勝手な人たちですねー全く。アリシアさん?貴方もなにか言ってください。」
「んー。そのモニカさんの話を聞いていると、明らかに私じゃ別の意味で勝て無さそうっていうか。町につくまではすこしお休みしておきたいわね。また彼女に会ったら、おいしいごはんでもあげればいいじゃない?」
「私の言っている事の意味が分かって居ないんですね?何て冷たい人たちですか。全く、この世界の人間たちは明らかに狂っています。」
「うるさいわね。潰されたいの?」
「・・・・・・はぁ。何なんですかこの人たちは。」
さすがに疲れた様子でグレコはぐったりしてしまった。
そのままロワールまではあともう少し、ただひたすら僕たちが乗って居る馬車は移動し続ける。




