○17
本当は今すぐにでも帰りたかった。
しかし、名前の知らない少女は何処までも前に進む。
エクレールは自分がよく知らない場所で、その場所で発生する異臭で鼻をつまんでいた。
「あの、これ何ですか?」
「知らないの?」
「物凄く嫌な臭いが。」
「死体の匂い。」
「え?」
「死体といっても、新しいものよ。この町の住民はもう居ないし。居たとしても白骨化している。多分、その匂いはこの屋敷の中にあるもの。」
「どうして、こんな真似をしてるの?下手をしたら貴方も危ないじゃない?」
「健康面なら問題ない。この屋敷の中は、今はもう死体の墓場だから。」
「な、なんの?」
「動物。私が今日に至るまで、自分が生きるために動物たちの命を奪うしかなかった。衛兵やギルド協会から逃げて隠れるためには、こうするしかなかった。」
「別に、悪意があってしたわけじゃないんでしょう?」
「悪意ね。無ければいけど。」
「協会の人にちゃんと言えば、貴方の事はちゃんと分かってくれるはず。」
「エクレール、貴方は恐らく。あまり私とは居ない方がいい。」
「私、実を言うと道に迷いやすくて。本当は明日にでも別の町に行きたいんだけど。」
「そう。」
「貴方と私ならきっと苦難を乗り越えられる!」
「怪しいにも程があるわ。」
「そんなこと言って。ほら、包帯外して私を見る。私の決意を信じられないでしょう?」
「別に。私はこの屋敷を守りたいだけで、貴方は私の物だもの。決意なんて知らないわ。」
「はい?」
全くといっていいほど、エクレールは何も理解していなかった。
二人の周囲に突然、兵士たちが現れ銃器を向ける。
衛兵たちが呼んだ軍人というのは分かっているが、少女にとっては今更自分を排除しようとする事は気にしていた。
「あっ、貴方。」
エクレールたちの前に、彼女が知る人物が現れる。
「久しぶりね。エクレール、どうでもいいけど何回仕事を邪魔したら気がすむのかしら。」
金髪の女性は、長い派手な銃器を右手に持っている。
隊長クラスのハットを被ったその姿は、エクレールにとっては馴染みのある格好だ。
「邪魔って、どういうこと?」
「そこに居る時点で貴方は障害となっているの。」
「ユリア、だからどういうこと?」
「その少女を発見した場合、射殺する命令が下ったの。本当なら可愛そうだけど、10年前の連続殺人の犯人であれば容赦はできないわね。」
右手が挙げられる。エクレールは彼女のセリフが理解できず、
「撃て!」
その容赦のない号令により全兵士の銃が発砲された。
単発とはいえ、数十人による射撃となれば熊一体は倒せる威力になる。
しかし、その銃弾は全てエクレールの魔法防御により防がれていた。




