○14
辺りが暗くなってきたので、炎系の妖精を召喚して暗闇を照らしていた。
エクレールは適当に道を歩いている。
正直、道は割とどうでもよく、山を越えれば町へ行ける。
確か、西の方の町は行ってはいけないところだから、東へ行けばいい。
そう思うけれど、エクレールは寒さに震えてしまう。
「うう、熊さんとか出てきませんように。」
そう願って歩いて行く。
暗闇の中を歩くのは慣れているけれど、今日は何処か異質な冷気を感じる。
「え?」
薄暗いけれど、確かに足元には血の跡があった。
恐らく猛獣が鹿を殺したのだろう。
その気になれば山火事も起こせるし、心配は要らない。
いや、そんな事をしてはいけないが。彼女にとっては、今は緊急事態なのだ。
「妖精さん。私に力を貸して。」
妖精が反応する。
「無理!?せめて勇気だけでも!」
妖精にすら呆れられるが、今は進むしかない。
一日中歩けば、町にはつけるはずだ。
そう思っていたが、彼女はふと何かが道を塞いでいるのを見た。
「え?」
女の子が立っている。
綺麗な銀色の髪が見えるが、彼女の服は血のようなもので汚れている。
更に、頭と左手には包帯が握られていた。
怪我でも、しているのだろうか。
「あ、あの。幽霊じゃないですよね。」
少女は振り向く。
片目以外は顔を判別できない。
「あの。一人で何やってるの?」
少女は答えない。
「えっと、お菓子、食べる?」
少女は反応しない。
「えっと。もしかして、邪魔かな。あはは。」
そう、通り過ぎようとした。
「ねえ。」
「え、何?」
「帰り道が分からないから、案内してくれる?」
正直、物凄く嫌だった。
「えっと、どこに住んでるの?」
「旧ペドロ。」
「そ、そこは誰も居ないじゃない?」
「うん。でも、あそこが私の故郷だから。」
「え?故郷?」
故郷を自覚しているには若過ぎる。
エクレールよりも年下に見えるが、実は包帯の下はそうでもないのだろうか。
「そっか。迷子ならしょうがないね。って、妖精さん?」
妖精はエクレールの顔の前に止まった。
「大丈夫だよ。こんな夜なんだから、誰だって怖がるでしょう?」
妖精はエクレールの言う意味不明な事に対し疑問を感じていた。
「君、お名前は?」
「忘れた。」
「そっか。きっと、辛い目に遭ったんだね。可哀想に、私のお菓子あげるね。」
「別に、おなかすいてない。」
妖精は激しく動いてエクレールを止めようとしたが、その努力は虚しくも失敗する。
「甘い。」
「美味しいでしょ?」
少女は適当にエクレールから貰ったお菓子を食べる。
近くに自分が殺したオオカミがあるけれど、今日は回収しないことにした。




