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ふと、振り返るとそこにエクレールがいた。
「うぅ。協会に戻って来たのはいいけど任務まで暇すぎだよー。」
「では、そこでトイレ掃除していてくださいな。」
「それはもっと嫌。」
エクレールの言う通り確かに暇な時間帯はあるけれど、戦闘まで少し大人しくしてほしいのがアリシアの気持ちだった。
「エクレール?少し大人しくできないの?」
「うぅ。こうしているとおちつかないし。」
「昔、幼いワイバーンに乗って町で暴れまわって居たけど。同じようなことはしないでよね。」
「あ、あれは・・。」
アリシアの記憶上では、幼いワイバーンを制止するためにエクレールが搭乗したのはいいが。そのまま町の外まで走っていくという内容だった。
その時、アリシアはワイバーンが吐き出した炎に巻き込まれそうになった事を恨んでいるのだが。エクレールはその時アリシアが居たという事実を覚えていなかったという。
「全く。何でそう、出鱈目な状況になるのかしらね。」
「あれは私のせいじゃないし。ユリアが止めてくださいって強制したのが悪いんです!」
そうなの?とユリアに視線を移動する。
「あのワイバーンは妖精にたぶらかされて気をおかしくしていたんです。エクレールなら、何とか止められると思っていたのですが。」
「私に対してドラゴンブレスを吐きつけた事に関してはどうなのかしら。」
「衛兵隊に囲まれた時に何とかなりそうでしたけれど。あのワイバーンの飼い主すら妖精のせいで頭がおかしくなってしまわれて。」
「あれ、酔ってるだけなんだけど。」
「いっその事、ムーンキャンサーでなんとかならなかったの?」
アリシアにとっては、当時の力関係は明らかにエクレールの方が上だったのだが・・。
「そんな事したらワイバーンが可哀そうじゃない。妖精さんにまた会えればきっと幸せになれるって思っていたんだから。」
「その。結局そのワイバーン何だったのかしら。エクレールじゃなくてユリアに聞きたいんだけど。」
「原因は飼い主の不手際でしたので。適当に協会がワイバーンを没収しました。」
「はぁ・・・。他にも遺跡で色々やっていたみたいだけど。そこらへんは聞かなくてもいいわね。別に私は関係ないし。」
「同じギルドの関係者として当時の、主犯エクレールによる騒動の苦しみを分かち合いたいのですが。」
「いいえ。結構です。」
「何で皆そういう時に限って冷たいの・・!?」
「冷たいのではなく、事後処理に苦しめられたと言ってほしいのですが。」
「だ、大体ワイバーンも別に私のせいじゃないよね!?」
「えぇ。そのワイバーンをたぶらかしていた妖精が貴方の物だったはずですが・・?」
「え?」
そして、エクレールの背中からふとその妖精が現れる。
魔法使いが使役する、魔力を原動力にして働く一種の生命体のわけだが・・。
「ほら。貴方が飼っている妖精だってほぼエクレールのせいだとおっしゃっているではありませんか。」
「えー?記憶にないんだけどー?」
「マジで記憶にないのならここでたたき出してあげようかしら・・。」
「暴力は反対だよ!大体私のせいじゃないし・・!?何で妖精さんまで私を否定するの!?」
「当時にしたって、エクレールの寝起きの悪さで妖精を潰しかけたとか。」
「私そんなに大きくないよね!?」
「えっと・・。どうやら、潰されかけたようですね。というより、虫と勘違いされた・・?」
エルフ特有の妖精とのコミュニケーションでユリアは妖精から情報を聞き出していたが。
こうしてみるとムーンキャンサーを使っている時のエクレールの方が張り切り過ぎているようだ。
「とりあえず、もうそろそろ私は帰っていいかしら。」
「そんな、せめて私が主犯だということを否定して、弁護してよアリシア!?」
「いや、事実でしょ・・?大体、貴方こそここで何しに来たのよ。」
「何しにって、ムーンキャンサーの適当なメンテナンスだけど。むしろ帰らせてくれないっていうか。」
「この状況ですから。エクレールにはしっかり働いてもらわないと。」
「うぅ、助けてエルシオーネ。」
「彼女はたった今、高台の整備に向かっているので。」
「そんな雑用に・・?」
「モニカが汚染したと思われる物の撤去もあるので。普通の人には危険だと思いますから。」
「モニカ、大丈夫かな・・。」
「大丈夫じゃない?きっとまたナガトの所に来るだろうし。」
「ナガトさんのところに来て、どうするの?」
「え?あぁ・・えぇと。まぁ、私としては当人たちの秘め事だから・・。」
「え?」
「だ、大体私は別に気にしてないし?たかが奴隷、むしろ私を朝起してくれない使えない時点で無能なのよ。」
「えっと。アリシア。モニカは、どうして・・。」
「か、勘違いしないでくれる?別にモニカが夜一緒にナガトと寝ていたとか主人の私には関係ないんだから!!」
そんなでかい声を公共の場所で言ってしまい、周囲に注目されてしまっていた。
「・・・あの。アリシア。」
「成程。とりあえず、参考に居たしますわ。でも、そういうことはこういった場所で言わない方がよろしいかと。」
「・・・・・わ、悪かったわね!」
そういって突然走り出して逃げようとするが、人とぶつかりそうになってしまった。
「きゃぁ!?」
「あぁ、アリシアが人を踏み台に!?」
「してないわよ!?えっと、大丈夫?」
女の子は大丈夫なようだったが、人形を落としてしまっていた。
「う、うん。」
その人形を拾って、女の子はすぐに走って逃げていく。
アリシアはため息をついているが、自分の言った事は別に間違いじゃないと思っている。
「とにかく。私はだからナガトなんか別に・・って、エクレール?」
そのエクレールはずっと、その女の子の方を見ていた。
どこか感情が抜けきって居るようだが。何を彼女は見たのだろうか。
「エクレール?どうしたの?」
「え?あぁ、えぇと。」
どこか困惑しているような状態になっていたが、何か問題があったのだろうか。
それを聞く前に、誰かが話しかけてくる。
「丁度良くユリアと一緒にいたようだな。私の読みは正しかったようだ。エクレール。」
「え・・?」
「あら、お兄様。」
ユリアの、お兄さん?
その男性が突然現れてアリシアは、そういえばエクレールはどうして家出なんてしていたのか思い出してしまった。
「お姉ちゃん、やっと見つけたよ!!」
「す、スフレ!?何でここに居るの!?」
エクレールの妹、スフレも男性と一緒だったようだ。
「何で?じゃないし!?アリシアさんも!何で普通に私を置いていくんですか!?」
「あはははは。まぁ、大丈夫でなによりじゃない。それで、その人は・・。」
「誰・・だっけ?」
エクレールが言って、その場が凍ってしまった。
「僕に対してパイケーキを投げつけた後がこれか。全く、どういう教育をされたらこうなるのか。」
「お兄様に対してそのような・・エクレール?」
というより、本気でエクレールは名前を忘れている可能性があるのでアリシアにとっては冷や汗ものだった。
「セルジオだ。今の所は、エクレールの両親に対しては婚約の約束を破棄しているよ。そもそも事件のせいで政略結婚の話がスムーズにいかなくなってきたからね。」
「お兄様の場合、最初から結婚する気などなかったくせに・・。でも、後でエクレールをお姉さまと呼ばせられなくなって残念ですわ。」
「私、お姉ちゃんがまた一人増えちゃうんだ・・?」
「何意味の分からない事言ってるのよ・・。セルジオさん?とりあえずエクレールの事はもういいのね。」
「あぁ。スフレとエクレールを会わせて、家に帰らせるのを条件付きとなった。あの場所でスフレと会わなければ、エクレールをすぐに見つけられなかっただろうけれどね。」
「あれ?ユリアとは連絡取り合ってるからすぐに分かると思うけど。」
「僕はギルド協会の人間じゃないから、すぐに連絡を取り合ってくれなくてね。こうして自分から出向かわないとユリアに会えないんだよ。」
「はぁ・・。面倒な事するのね協会って。エクレール、とりあえず結婚の心配がなくなってよかったわね。・・エクレール?」
また固まって居る・・・?というより、どうしてゆっくりと手を剣の柄に伸ばしているのだろうか。
「スフレを、まさか私と結婚できないからって手を出して・・?」
「何を馬鹿言っているんだ君は・・!?」
「今すぐスフレから離れてください。じゃないとここで斬り落とします!」
「何勝手な妄想しているんですかエクレール!?こんな場所で事件起こさないでください!?」
「きっと、きっとそうに決まって居ます!貴族は皆、女の子に手を出せなかったら狂気発して誰かを襲うって教わったんだから!!」
「誰に教わったのよそんな茶番劇。」
「離してアリシア!そいつ殺せない!」
突然暴れだそうとするエクレールをがっしりとアリシアとユリアが押さえつけていたが。
「全く。馬鹿な女はこれだから手に余る。確かに君と比べればスフレの方が女性として好みだが。」
「「「っ!!!??」」」
「勘違いしないでくれ。第一、あの時は僕から婚約の破棄を願い出たかったのだからな。僕が求めている女性像は君ではないことは確かなんだが。」
突然変な事を言い出したが、ユリアだけは笑っていた。
「お兄様、ロリコン趣味もいいかげんにしてくださらない?」
空気が更に凍り、エクレールはショックでそのまま剣を落としてしまった。




