33.ギルド勢との戦い
「道の数が減ってきたな」
「そうですね。どうやら私たちの進んだ道は、かなり早いルートだったようです」
「二人のおかげです……っ」
少女の言葉は、間違いないと思う。
先行するサクラが魔物を即打倒、もしくは俺が追撃する形で動けなくして進む。
この形が、あまりに的確過ぎた。
減少を続ける別れ道は、一か所に収束していってるようだ。
魔導石の鳴動も、これ以上なさそうなところまできてる。
「ここは……」
たどり着いた広い空間には、大きな道が一つだけ。
誰が見ても分かる。
宝の在処は、この先だ。
どうやら俺たちは、先頭集団の一角になっていたようだ。
「……おい、見ろよ」
聞こえてきた声。
振り返ると、ギルド勢の一団が同じホールに入ってきた。
俺たちを見るなり、男たちは目配せを一つ。
八人全員が武器を取り、続く道の前に立ち塞がる。そして。
「お前たちはここまでだ。この先へ行くのは俺たちだけでいい」
ハッキリと、そう言い放った。
見れば男たちの中には、魔法剣士を脅して道を占有した者たちや、少女に魔物を押し付けて進んだ男もいる。
どうやら、同じギルドの仲間だったようだ。
「消えろ」
男は少女に剣を向け、威圧するような声で言い放った。
進むつもりなら、叩き潰す。
向けられる、明確な敵意。
人数差もあって、その威圧感はかなりのものだ。
「聞こえなかったのか? 消えろって言ってんだよ」
「そうはいきません」
サクラはすぐさまそう言い返して、前に出た。すると。
「消えろって言ってんだろ! 【フレイムキャノン】!」
「「「っ!!」」」
間髪入れる事すらなく、放たれた火炎弾。
おいおい、凶暴が過ぎるだろ!
先手を打たれる形になった俺たち。
サクラは鞘から刀を抜き、大きく払う。
「【旋風】!」
すると火炎弾は一刀両断され、吹き抜ける風に霧散した。
「サクラ! 【フレアストライク】!」
それを見た俺は、自然とその名を呼んでいた。
するとサクラは振り返ることもなく、その場に片ヒザを突く。
直後、その頭上を飛んでいった爆発の魔法は、ギルド勢の足元で炸裂。
「「「うおおおおおお――――っ!?」」」
巻き起こった爆炎が、魔法剣士から道を奪った男たちをまとめて転がした。
「こいつら……強えぞっ!」
魔法の範囲にいなかったギルド勢の一人が、その火力に慄く。
サクラはこの隙を突いて、素早く接近。
「オラァァァァ――ッ!!」
対して一人の男が、手にした槍斧を全力で振り下ろしにいく。
「【稲妻】!」
「っ!? ぐああああああ――――っ!!」
しかしサクラは急加速して、得物を振り下ろす前に男を斬り飛ばした。
しっかり刀を『返して』いる辺り、どうやら『殺すな』の規則を守っているようだ。
「【フリーズストライク】!」
「ぐああっ!」
俺はさらに氷砲弾を放ち、後方で魔法を使おうとしていた男を先んじて弾き飛ばす。
するとその後ろにいた一人の男が、猛然と駆け出してきた。
「あいつは……っ!」
少女を狙って一直線に迫り来るのは奇しくも、先ほど魔物を押し付けて逃げていった男だ!
「死ねやぁぁぁぁ――――っ!!」
手にした両手剣の払いを、少女はしっかり見極めかわす。
そこから繰り出す反撃は見事に、男の肩を斬った。
「ちいっ!」
だが男は止まらない。
そのまま全力で振り下ろしてきた両手剣。
少女は慌てず、ショートソードを合わせる。
「ここっ!」
そして剣の中心に据えられた魔法石を発動して爆発を起こすと、男の剣を弾き飛ばした。
「なっ!?」
見事な返しに、驚愕する男。
「やああああ――――っ!」
少女は借り物ショートソードの側面を、男の横っ面に叩きつける。
「あ、があっ!」
そこから、さらに逆回転。
再び剣の側面を、振り抜く形で反対の側頭部に叩き込んだ。
「ぐああああああ――っ!!」
弾き飛ばされ転がった男は脳震盪を起こし、起き上がることもできない。
見事な連撃で、少女は余裕の勝利を決めてみせた。
こうしてすでに半数が、戦闘不能に陥ったギルド勢。
戦いの優劣は、これで間違いなく決まった。
後はこのまま、順当に詰めていくだけだ。
俺がそう思った、その瞬間だった。
「行け! 進めええええ――っ!!」
後方から聞こえてきた、荒々しい声。
見ればホールに、新たなギルド勢が駆け込んできていた。
「お前たちはそいつらを足止めしろ! その隙に俺たちが宝をいただく!」
「……チッ、分け前は等分だぞ!」
どうやらこいつらも、同じギルドの仲間らしい。
飛び込んできた新手のギルド勢は、先行していた者たちに足止めを要求。
そのまま俺たちを追い越して、ホールを突き進む。
「宗一郎さん!」
慌ててサクラが走り出し、俺が足止めの魔法を放つために右腕を伸ばすと――。
「「「っ!?」」」
俺たちの間をすり抜けていく、一つの輝き。
飛んでいった『凝縮された炎球』のようなものが、炸裂した。
「「「うああああああ――――っ!!」」」
巻き起こった爆発に、先行しようとしていたギルド勢がまとめて転がる。
「な、なんだ……?」
「何が起こったんだ!?」
まさかの事態に、驚愕するギルド勢。
振り返るとそこにいたのは、ダンジョンではめったに見かけない重装備。
甲冑のような装備を揃いで身にまとい、顔までしっかりと隠した騎士たちがそこにいた。
「……あれは、教団騎士か?」
言われて思い出す。
確かにあの格好は、ダークロードの『部屋探し』にダンジョン特区に向かった時、見かけた教団の騎士たちだ。
鎧を鳴らしながら、四人の騎士が並んでこちらにやってくる。
「五階層の宝は、我々が回収する」
冷たくそう言い放ち、進む教団騎士たち。
「……後から来て、偉そうにしてんじゃねえぞォォォォ――ッ!!」
そんな騎士たちに、ギルド勢は激昂して剣を取り直した。
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