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悪役令嬢は普通の生活に戻る

*あともう一話で完結です。最後はレオとソフィアの結婚式。暴走気味のレオ視点の独白になります。明日投稿できるように頑張ります。


その後の混乱は想像を絶するものだった。


ソロモンの怒りによる被害は非常に大きく、噂では100か所以上も雷が落ちて、地震や暴風雨による損壊も数多く報告されたという。


ソロモン皇帝一人がちょっと(?)怒っただけで全国的な被害が出たということで、ソロモン帝国への宣戦布告がどれだけ無謀な愚挙であったかということが周知され、それを扇動しようとした国王エドワードや主戦派への風当たりは強くなった。更に自宅謹慎させられていたリッチモンド公爵ら穏健派貴族が王宮に戻り、議会を無視して戦争を強行しようとした国王へ退位を迫る議案を通過させた。


戦争への道筋に向かった原因の一つは鬼だった訳だが、エドワードは操られていた訳ではなく、口車に乗せられて自分の意思で戦争を引き起こそうとした。同情の余地はない、というのが正直な感想だ。


更に、名門ブロンテ公爵家を確たる証拠もなく国家反逆罪で拘束し、財産を不当に奪い、屋敷や使用人に対して狼藉を働いたことも大きな反感を呼んだ。お父さまは多額の賠償請求と共に、私に対する捜査の再検証と名誉回復を求めた。


私が巻き込まれた事件に関する再調査は迅速に行われた。全ての証拠が杜撰であったことが判明し、私の冤罪が晴れて認められた。また、亡くなったローズ・フレンチの死因についても再調査が為され、フレンチ子爵家の使用人がヨーク公爵家の関係者から毒を盛るように買収されたことも発覚した。


ヨーク公爵家のキャサリンは心神耗弱状態で療養中。父親のヨーク公爵は汚職やローズ・フレンチ殺害に関与した疑いがあるとして逮捕された。イザベル元王妃は退位したエドワードと二人で人里離れた離宮に生涯幽閉されることになった。それまで閉じ込められていた前王が再び国王として復活したのだ。


そういったゴタゴタが落ち着くまで半年以上かかったが、私の無罪は確定し名誉も回復された。それと同時にレオが王太子の座に戻り、私との婚約破棄は無かったことにされた。


本当に・・・大変な長い道のりだったが、我が家は綺麗に修復され、国家からの賠償金も正当に支払われた。お父さま、お母さま、使用人も全員無事で元の生活に戻ることが出来た。


私とジェフリー、ミア、クリスも魔法学院に戻った。学院での日常生活が戻ってきて、私たちは既に二年生になっていた。レオだけは王宮での後始末が忙しく、まだ復学出来ていない。レオに逢えなくて寂しいけど、まめに手紙もくれるし、この状況では仕方がないと理解している。


「そういえばさぁ、週末にまたソロモンが会いに来たんだけど・・」


みんなで昼食中にミアが話し出した。


ソロモンとミアの関係は周知の事実となり、彼がお忍びでしょっちゅうミアに会いに来ることもみんな知っている。


「そっか。良かったね。それで?」


と尋ねるとミアは少し複雑な表情で話し出した。


「最近ようやく創造主クリエイターと交信することが出来たんだって」


「あ、そうなんだ!良かったね。で、バグは無くなったって?」


「うん。バグが無くなってすごく喜んでたって言ってたよ。それでね、ソロモンに御礼がてら何かゲームのことで希望はある?って聞かれたらしいの。新しい能力を設定するとか」


へぇ、ゲームの設定上の変更ねぇ。


ミアが言葉を続ける。


「それでね、ソロモンは私と一緒に年をとって死んでいきたいから、不老不死の設定を止めて欲しいって頼んだらしいんだよね」


「へぇ!そんなこと出来るんだ。まぁ、出来るのか。なんてったってクリエイターだもんね」


「うん。ソロモン曰く、攻略キャラがヒロインと添い遂げるために不老不死廃止希望ってネットで発表したらバズるんじゃないかって、クリエイターは喜んでたって」


「な、なるほどね・・・そういうマーケティング戦略もありっていうことか」


「でもさ、私のせいでせっかくの不老不死が無くなっちゃうのって勿体なくない?」


ミアの複雑な表情はそのせいか。ちょっと罪悪感を覚えているのかな?でも・・・


「ミア、想像してみて。もし、逆の立場でさ。自分がずっと若いままで、ソロモンだけが一人で年老いて死んでいっちゃうんだよ。それを見送らないといけないんだよ。嫌じゃない?」


ミアは少し考えていたが、


「確かにね。それはそうだわ」


と納得したようだ。


ちなみに一緒にランチを食べている男性陣は、私たちが女子恋愛トークをしている間は全く口を挟まない。沈黙は金なりとでも思っているようだ。


「それでね、学院を卒業したら結婚してソロモン帝国に住むことになりそうだわ」


とミアがさりげなく言った。


「え!?プロポーズされたの?!おめでとう!」


ミアの顔が真っ赤になっている。珍しい。心底照れているようだ。


「う、うん。私たちもう二年生じゃない?だから、学院にいる間にソフィアと一緒に沢山思い出が作れたら嬉しいな。それから、追放された時に住んでた屋敷はそのまま保存しておくからソフィアたちはいつでも遊びに来てイイってソロモンが言ってたよ」


「あ、ありがとう。じゃあ、遊びに行くね。でも、ミアがソロモン帝国に行っちゃったら寂しくなるなぁ。私、友達いないし・・・」


「そんなことないじゃん!ソフィアへの誹謗中傷は全部ウソだったって認められたし、クラスメートもソフィアと仲良くなりたがってる子が多いよ」


ミアの言葉はその通りで、学院内でも私の名誉回復はしっかりと為されて、生徒会長も直々に謝罪に来たくらいだ。レオがその辺りもちゃんとしてくれているような気がする。有難いことだけど、やっぱりコミュ障の私はなかなか人と打ち解けられないんだよね。


「それにしても、キャサリンはゲームの中では完全にモブだったのよね~。この世界ではキャラが強すぎてうっかりモブだって忘れそうだったけど。ソフィア、彼女が鬼だってよく気づいたね」


私は彼女が鬼じゃないかって疑っていたけど、100%の確信はなかった。あれは賭けだったなぁ。


「まぁ、運が良かったよ。みんな無事で本当に良かったね」


と言うと、その場にいた全員がコクリと頷いた。


「そういえば、クリス!クリスはリッチモンド公爵との関係はどうなったの?」


ミアは聞きにくいことをはっきり聞ける稀有な資質を持っている。


「ああ、父上とはマルバスや母さんのことについて話し合った。血は繋がっていなくても息子だと思っているし、仕事で分からないことがあったら相談に来いと言ってくれた。ソフィアの国外追放に付いて行くために縁を切ったけど、また戻ってきても良いとも言われたんだ・・・。ただ、僕はリッチモンド公爵家で良い思い出が一つもないからな。城での生活の方が快適だと答えたら、父上は苦笑いしていた」


クリスがスッキリした表情をしているので、私は安堵した。実の親子ではないにせよ、リッチモンド公爵と良好な関係を築く切っ掛けになってくれたらいいなと思った。ちなみに騒動後、クリスはレオの侍従として復職した。



「あ~~~!腹減った。俺の分残ってるか?」


その時、私の後ろから馴染みのある声が聞こえた。慌てて振り返ると、少し疲れた様子のレオが立っている。


久しぶりに会う愛しい人の姿に目頭がじんと熱くなった。また背が伸びて、男ぶりが上がった気がする。すらりとして見えるが制服の下には鍛え抜かれた身体の厚みを感じるし、すっかり大人の男性になった顔付きは鋭さを増して、益々凛々しくなった。長くて黒い睫毛に縁どられた切れ長の瞳が甘く私を見つめている。


この人の目に私はどんな風に映っているんだろう?


私は突然恥ずかしくなり、焦って立ち上がろうとして身体のバランスを崩した。レオは私を軽々と支えると、そのまま強く抱きしめた。


「会いたくて堪らなかった」


と熱い息で耳の中に囁かれると、私の身体もカッと熱くなる。


「私も!」


そう言ってレオの背中に手を回した。


「あ~もう、二人きりの時にやってよ!砂糖吐きそう~」


呆れたようなミアの声に、私たちは慌ててお互いの体を離し席に戻った。


「久しぶりにソフィアの手料理が食いたい!」


とレオが残ったランチに手を伸ばす。


楽しそうに軽口を交わしながら私の料理を食べている姿を見て、レオが近くに戻ってきた幸せを実感した。


***


レオが学院に戻って来て、私たちは再び元のように学院生活を送れるようになった。レオによると、王宮でのゴタゴタはひとまず片付いたという。


色々あったけれども、その後の学院生活は穏やかなもので、卒業するまで私たちは多くの楽しい思い出を共有することが出来た。


卒業した後、レオは国王に即位することになっている。私との結婚式と戴冠式を同時に行う計画らしい。かなり大掛かりな式になりそうだけど、国民の間で人気の高いレオが結婚して即位するということで民衆は楽しみにしているようだ。


その前に、ソロモンとミアの結婚式が挙げられた。後ほどソロモン帝国で正式な結婚式を行う予定だが、その前にアビントン王国で身内や仲の良い友達だけで小さな式を挙げることにしたという。


ミアとソロモンの結婚式の日は快晴だった。


ミアは華やかなティアラに、真っ白なシルクオーガンジーのウェディングドレスを身にまとっている。柔らかで艶のある上品な質感のドレスはミアに良く似合っている。


あまりの美しさ、愛らしさに私の涙が止まらなくなった。


ミア~、とっても綺麗だよ~。幸せになってね~(泣)。


隣に立つソロモンは黒に近い紺色と白地の礼服に身を包んで神妙に立っている。ただ立っているだけなのにその美貌のせいで、恐ろしいほどの存在感を示している。やっぱり目立つなぁ~。


二人が顔を見合わせた時に流れる空気は穏やかで、お互いの視線から深い愛情が伝わってくる。お似合いの夫婦になるだろう。


皇帝という立場を考えると、こじんまりとした結婚式だったかもしれないが、アットホームで愛情に満ち溢れた素敵な御式だったと思う。何よりミアとソロモンの二人がとても幸せそうで、列席者の誰もが二人の前途を心から祝福した。


式が終わり、お別れの時間が近づいて来た。


素敵な御式だったなぁ~と私が余韻にひたっていた時、花嫁姿の美しいミアが私に抱きついて来た。


「ソフィア、色々とありがとう。絶対にソロモン帝国に遊びに来てね!一生友達だよ」


という言葉に私の胸も熱くなった。純粋に嬉しい!


「私もミアに感謝してもしきれない。ずっと友達だよね」


と言って彼女を抱きしめた。


その時ミアが悪戯っぽい笑顔で、私の耳元に口を寄せて囁いた。


「あのさ、あたしね、実は前世では男だったんだ」


というミアの言葉に私は呆気にとられた。


ミアはウィンクをバッチリ決めて、呆然とする私を置いたまま風のように去って行った。


・・・そうか。確かに前世での性別を聞いた覚えはない。勿論、そんなことで私の彼女に対する気持ちは変わらない。今は女の子としてソロモンと一緒になれて幸せそうだから、良かった・・んだろう。うん。


ただ・・・


その時、私の方を眩しそうに見るレオと目が合った。私が笑顔で手を振ると嬉しそうに駆け寄ってくる。


・・・レオにはそのことは言わないようにしようと私は固く心に誓ったのだった。



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