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悪役令嬢はヤンデレに耐性ができる

*本日二度目の投稿です。


「そんなバカな!?」


私たちが学院に戻り、マルバスが皇帝ソロモンかもしれないということを伝えると、レオたちは驚きで絶句した。


「バカなって言われたって、だって、そうなんだも~ん。さすがのイケメンだったわ。確かに最高の美形ね。ネットで評判になるのも当然だわ」


というミアに男性陣は頭を抱えた。


今日王宮には行かなかったジェフリーもその場にいる。


「でもな、マルバスは俺が子供の頃からずっと王宮に出入りしてるんだぞ?なんで隣国の皇帝がそんなことするんだ?」


そうなのだ。マルバスが実はソロモンだったとして、彼は何のためにアビントン王国の王宮に出入りしているのか?王妃付きのポーションマスター兼魔術師として?


「でも、マルバス殿がソロモン皇帝だったとすると、あの強さにも納得ですね。ソロモン皇帝は謎が多いですが、最強の魔術師と言うのは有名ですから」


クリスの冷静な言葉に、レオも落ち着いたようだ。


「マルバスが来たタイミングで父上が正気に戻ったことは事実だ。大変だったが、父上には自分が操られていたということを理解してもらった。父上は『不甲斐ない』と自分を責めていたが・・。不必要な戦争はすべきでないということを閣僚や高官とも確認して、書面にした。明朝の議会でもその旨を宣言する予定だ。心配だから、その議会には俺も出席する予定だ。主戦派はハシゴを外された形になって、今も揉めていると思うが・・・。マルバスがそれを狙って王宮に現れて、更に奴がソロモンだったとすると、ソロモン帝国としては戦争を回避したいということか・・・?」


というレオの言葉にクリスが落ち着き払った顔で答えた。


「そうだろうな。でなければ、わざわざ王宮に来る必要はないだろう。ソロモン帝国に戦争の意図はないということだ」


なるほど。これで当面は戦争を回避できたと考えて良いのだろうか?


それに戦争に関してのそれぞれの立ち位置が判明したように思う。


戦争を起こしたいのはあの黒い靄。そして、そのために人間に憑りついている。


黒い靄の敵がマルバス。


つまりマルバスは戦争反対派・・・でいいんだよね?


「・・・ということは、マルバス(=ソロモン)は私たちの味方ということ?」


と呟くとミアとレオが同時に


「違う!」


と叫んだ。


「・・・あれは観賞用イケメンであって、絶対に信用できる奴じゃないわよ!」


とミアが力説すると、レオも


「珍しく気が合うな。俺もあいつは信用できないと思う」


と腕を組んで、うんうんと頷いた。


まぁね、彼が何のためにアビントン王国に出入りしているのかも分からないし、ミアにしたことを考えても全面的に信頼は出来ない。


「信用までしてないけど、敵の敵は味方っていうじゃない?」


と言ったら、レオがぐいぐいと近づいてきて、私の手を握った。


「ソフィア。お前はあいつにほだされてしまったのか?あいつの顔面がいいからか?」


そして、私をお姫様抱っこするとレオは風のようにその場から走り去り、空いている教室に私を連れ込んだ。


残されたみんなが『仕方ないな』というように肩を竦めていたのが微かに視界に入った。


二人きりになるとレオは私を抱きしめて、耳元で


「このところずっとソフィアが足りなかった。二人きりになれなくて寂しかったのは俺だけか?」


と耳元で囁く。


レオの声から溢れ出る切迫感に私の体もカッと熱くなった。


「わ、わたしも二人きりになりたかったよ・・・その・・寂しかったし」


そう言うとレオが堪らなくなったように、私を激しく掻き抱いた


早くなった彼の心臓の音が聞こえる。私の胸もどきどきしている。


レオが私の顎に指をかけて、私に口付けた。軽いキスを繰り返した後、不意に彼の舌が私の唇を割って中に入って来た。そのまま深くなる口付けに私はただ翻弄されるだけだった。


執拗な口付けの後、ようやく唇を離したレオは私の前髪を指で持ち上げて、額にちゅっとキスをした。


「お前を・・・閉じ込めてもいいか?俺しか会えないところに入れておきたい。他の男に見せたくない」


独占欲丸出しのレオの言葉に内心喜んでしまう自分がいる。『これはまずい』と自分でも分かっているんだけど。


「・・・私はレオのものだから、レオの好きにしていいよ」


そう言うとレオが「くぅーーーーっ」と唸り、私をもう一度強く抱きしめた。


「・・・ヤバい。そんなこと言うと俺の我慢がきかなくなる・・・」


レオは息を荒くして、私の耳を甘噛みした。


今まで経験したことない感覚に「ひゃっ」と肩を揺らすと、レオは私の肩に頭を載せて「はぁ~」っと溜息をついた。


「ああ、俺ってエライ」


そのまましばらく二人で抱き合った後、レオが顔を上げて真剣な顔で話し出した


「・・・ごめん。ソフィアを幸せにしたい気持ちに嘘はないんだ。監禁なんてしたい訳じゃないけど・・・でも、心配なのもあるんだ。父上は正気に戻って、戦争も取りあえずは回避できそうだ。そうすると、あの黒い靄みたいなのが再びソフィアを狙って来るんじゃないかと不安で・・・」


そっか。そういう懸念もあるんだ。


「私は大丈夫よ。マルバス・・えーと、ソロモン様が魔法を設定してくれたので、攻撃されたら魔法が発動するようになってるみたいだし・・・」


「それも気に入らないんだ。なんであの男が助けに来る前提なんだ?俺じゃなくて?」


「あ・・・ごめん・・・。レオの魔法を私の中に設定するって・・・できる?」


「出来ないから怒ってるんだ!・・・そんな魔法聞いたことないし!」


「ご、ごめん・・・」


「いや・・・いいんだ。ソフィアのせいじゃない。悔しいけど、俺には出来ないから。情けないな」


レオは真剣に凹んでいるようだ。


「レオ・・・私はレオを一番頼りにしているよ?」


「分かってる・・・でも、ソフィアが危ない時に俺が助けられなかったのが・・・やっぱり不甲斐なくて悔しいんだ。ノアだって騎士団長になったのに、俺だけ相変わらず情けないままで・・・」


そうだ。ノアは最近近衛騎士団の団長に抜擢されたという噂を聞いた。頑張ってるんだなぁと嬉しくなる。


でも、私はレオの腕の中が一番安心できる。それは口に出さずに私は彼の頭をくしゃくしゃと撫でた。黒いサラサラの髪に指を通すと気持ちいい。


レオは何も言わずに私を抱きしめた。



*****


その後、みんなのところに戻ると、彼らは熱心に何かを議論していた。


「・・・だからぁ、その黒い靄はモブに化けて隠れてるって言ってたんでしょ?モブなんて星の数ほどいるのよ。だから、誰に憑りついて隠れてるかなんて特定は不可能に近いと思うわよ」


ミアの言葉にクリスとジェフリーは困った様子で黙り込んだ。


ミアが私たちをチラッとみて「お帰り」と短く言った。


「ごめん」と小さな声で囁いて、席に座る。


ミアの台詞で何を話していたかは大体判った。以前、マルバス(=ソロモン?)が言っていたモブに化けて隠れている黒い靄を見つけられないかどうか話し合っていたんだろう。ミアの言う通り不可能に近いと思う。


以前彼らにはモブの説明もしたけど、ストーリーに関連する主要人物以外は全員モブだもんね。この世界では名門のリッチモンド公爵家だってクリス以外はモブだし、ヨーク公爵家の面々だって基本モブだ。


フルネームと顔が出てくるのは、ヒロイン、攻略対象、悪役令嬢と、ストーリーに直接関連する人達くらいだよね。


それ以外の人達のことは全く分からないと言ってもいい。その中から誰があの黒い靄に憑りつかれているかなんて特定できるはずがない。


私たちはみんなで顔を見合わせて溜息をつき、誰からともなくその日は解散となった。



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