悪役令嬢はヒロインと出会う
お待たせして申し訳ありませんでした<m(__)m>。今日から物語を再開します。今後は一日一話投稿を目標にしています。引き続き読んで頂けたらとても嬉しいです。どうか宜しくお願い致します!
私とジェフリーが乗る馬車がゆっくりと止まった。
馬車の扉が開くと目の前に壮麗な魔法学院の建物が立ちはだかる。
今日は入学式。いよいよゲームが動き出す日を迎えた。
私とレオ、クリス、ジェフリーは同学年で入学し、ノアは入学式だけレオに付き添うが、その後は騎士団に戻ることになっている。ゲームでは間もなくノアは近衛騎士団最強の団長になる予定だ。
ちなみにジェフリーは正式にブロンテ公爵家の養子になった。
これまでのところ、ゲームの筋書き通りの展開になっているように思う。
ゲームと違うのは、私とレオが両想いで、クリスやノア、ジェフリーとも仲の良い友達でいるということくらいか。
でも、そういう気持ち的な要素が重要なのかもしれない、と自分に言い聞かせる。
その時、レオが馬車から降りた私を見つけて駆け寄って来てくれた。レオの黒い髪と瞳に、黒をベースにした学院の制服は良く似合っている。切れ長の目に凛々しい眉。目にかかっている前髪を無造作にかき上げる姿が一段と大人びて色っぽくなったと言わざるを得ない。
こんなにカッコいい人が、こんな私の恋人兼婚約者でいいんだろうか?
レオは背が高くて、それでなくても目立つ。周囲の令嬢達が全員熱い視線をレオに向けていることに嫌でも気がついた。
きゃあきゃあ聞こえる黄色い声は全てレオへの賛美の言葉だ。
そして、対照的に敵意の籠った視線が私に直接向かってくる。当然かもしれないけど・・・怖い。
魔法学院の入学式でも、思っていた以上に自分の評判が悪いことを肌で感じた。
二学年上にキャサリン・ヨーク公爵令嬢が在学していて、彼女と取巻き令嬢たちが私の悪評をあちこちで吹聴しているらしい。
嘘ばかりとも言い切れないのは、以前彼女に招待されたお茶会で私がキレて、途中退出してしまったからだ。その場にいた貴族令嬢たちも私に対して悪感情を持っているのは当然だろう。
はぁ・・・。やっぱり短気は良くないなぁ。反省。
*****
私は入学式の後、ヒロインであるミア・ジョーンズ子爵令嬢を探していた。
私は彼女が転生ヒロインではないかと疑っているので、ゲームについての話を聞きたいと思っていた。彼女ならマルバスのことも知っているかもしれない。
ゲームでは入学式の後、ヒロインのミアは木から降りられなくなった猫のため、制服のドレス姿で木に登って助けようとするのだ。
そして、足を滑らせて落ちたところがレオだった。それが運命の出会いになる。
既に舞踏会で出会いを果たしているから、そこまで運命的でもないかもしれないけど、それでも空から可愛い女の子が降ってきたら、大きなときめきイベントになるだろう。
そんなことを考えながら歩いていたら、突然私の上に人が落ちてきた。
とっさに魔法を使って衝撃を和らげたので二人とも無事だったが、落ちてきた人の顔を見て、私は呆気に取られた。
フワフワの明るい薄茶色の髪の毛に茶色の瞳。華奢で小動物のような可愛さに溢れている・・・
ヒロインのミア・ジョーンズ子爵令嬢だ!
彼女は
「あ、いたた・・・ごめんなさい。無事?大丈夫?」
と言いつつ、腕に抱えた猫を心配そうに見つめた。
「えーと、もしかして木から降りられなくなった猫を助けて、足を滑らせて落ちちゃったの・・かな?」
「え、その通りです!すごーい!なんで分かったんですか?」
いや、ときめきイベントだからね・・・って私が相手じゃないはずだけど!?
ミアは私の顔をまじまじと見つめて
「もしかして、あくや・・・いや、ソフィア・ブロンテ様でいらっしゃいますか?」
と尋ねた。
やけに表情が生き生きとしている。彼女の目が爛々と輝いていて、迫力に押されて私は少し後ずさった。
「はい。そうですが・・」
と頷くと、ミアはガッツポーズを取った!実に漢らしく勇壮なポーズで。ガニマタだし・・(汗)。
「よっしゃ!リアル悪役令嬢!ゲット!」
あ、そうか。この子も転生者だ。間違いなく前世日本人だと確信する。
「あの・・・日本のどこから来たの?」
とつい尋ねてしまった。ミアは目をまん丸にして
「やっぱり!転生者なんですよね?そうだと思ったんですよ~!だって、王太子がメロメロだったもん。ヤバい!リアル転生悪役令嬢だ!あ、握手して貰えますか?」
と手を伸ばしてきた。何故かお互いを見つめ合い熱い握手を交わした後、私は
「あ、あの、あちらでゆっくり話さない?」
と近くにあったベンチを指さした。
ミアはとても可愛くて面白い女の子で、すぐにお互い名前で呼び合うほどに打ち解けた。
「そうなんだ~。保健室の先生か~。いいなぁ。憧れるなぁ。私学校に行ったことなかったから」
というミアの話を聞くと、前世で彼女には生まれつきの疾患があり、学校に行くことが出来なかったという。多少の病院内教育はあったらしいが、やはり実際の学校への憧れは強かったそうだ。
漫画やゲームが唯一の楽しみで、自分が学校に行ったらどんな感じなのかなぁっていつも想像していたのだという。
でも、15歳の時に病状が悪化し、亡くなってしまった・・。
僅か15歳で人生が終わってしまったなんて。未来ある子供達が亡くなってしまうというのは悲劇だ。ご両親もさぞかし嘆かれたことだろう。
あっけらかんと笑っているミアだが、きっと心の奥にはやるせない辛い気持ちを隠しているに違いない。
「ソフィア。そんな顔しないで!20歳まで生きられないってずっと言われてきたからさ。結構覚悟は出来てたんだよ・・・」
とミアが言った瞬間、私は堪らなくなって彼女を抱きしめた。
彼女は小柄なので私の腕の中にすっぽり入ってしまう。
ミアは私の胸でスンっと鼻をすすった。私は健気なミアが愛おしくなり、ギュッと力を入れて抱きしめた。
「ソフィア・・・まじで巨乳・・・。たまんね」
そう言いながら、ミアは私の胸にグリグリと顔を押し付けてくる。
ん?!・・・今なんって言った?
その時
「おい!!!そこの二人!!!何をしている!?離れろ!」
という聞きなれた声がした。
声の方向を見ると、レオが仁王立ちになって顔を真っ赤にしている。
両脇にいるクリスとノアが
「ミア嬢、ナイス!」
とサムズアップをする中、ジェフリーは恥ずかしそうに俯いていた。
ミアがニヤリとして
「嫌よ!せっかくソフィアが抱きしめてくれたのに!この最高に気持ちいいマシュマロボディな胸で泣いていいって、ソフィアから抱きしめてくれたのよ!」
と言い返す。
レオはギリギリと歯ぎしりしながら両拳を握り締める。あ、額に青筋が浮かんだ。
「お、俺だって触ったことないのに!・・・いいか。ソフィアの初めては全部俺のものだ!」
「女同士なんだからいいじゃない?ねぇ、ソフィア?それに、男からは触られたことないわよね?」
「・・・も、もちろんよ。それに、触ったって言っても、手で揉まれた訳じゃないし、たまたま抱きしめた時に頭が当たったくらいで・・・」
「手で・・・!揉ま・・・!」
何故か男性陣が頭を抱えて赤面して悶える中、ミアは「・・・ソフィア、おもしれー!」と言いながら大爆笑している。
レオはつかつかと近づいて来ると、ミアをべりっと私から剥がした。
「いいか!?今回は女だから許してやるが、次にやったら絶対に許さねーからな。大体、お前は誰だ?」
「嫌だなぁ。一緒にダンスまで踊った仲なのに覚えてないの?」
ミアの言葉にレオはマジマジと彼女の顔を見つめる。
・・・レオもミアが可愛いって思うんじゃないかな。
不安になってレオを見ると、
「舞踏会でダンスした令嬢の顔なんて覚えている訳ないだろう?」
と真剣に首を傾げている。
私が小声で
「レオ!あの・・・ほら・・・ミア・ジョーンズ子爵令嬢・・・その・・ヒロインの」
とごにょごにょ伝えると、ようやく思い出した様子だ。
「ああ!例の!?ヒロインとかいう?」
「ヒロインの顔を忘れる?あり得ない~」
と言うミアにレオは
「ソフィア以外の顔を覚えるのは時間の無駄だ。ソフィアも俺以外の男の顔は覚える必要ないからな!」
と胸を張る。
「・・・なんかすごいね。王太子。こんなキャラだったっけ?」
とミアが私の耳元で囁いた。
確かにレオは独占欲が強いかもしれない。でも、私みたいにすぐに愛されている自信を失ってしまう人間には、それくらい愛情を示してくれる方が安心できる。
「うん、なんか・・照れるけど、すごい愛されてるって感じるの・・嬉しいかな」
という私にミアは
「ああ、お似合いなんだね」
と遠い目で答えた。




