悪役令嬢は義弟が怖い
その夜は明確な結論が出ないまま、私たちは解散した。
レオはもう一度国王に結婚のことを掛け合ってみると言っていたけど、私は望み薄だと思う。
結局、これがゲームの強制力ということなのだろう。
ゲーム通り、私とレオは婚約した状態で魔法学院に入学することになる。その後のことは・・・人事を尽くして天命を待つしかないということか(ため息)。
*****
私が正式にレオと婚約したことで、お父さまとお母さまはブロンテ公爵家の後継ぎについて考える必要が出てきた。
これまでは、私の結婚相手が継げばよいと思っていたようだが、私が王家に嫁いでしまってはそういう訳にはいかない。
お母さまは病弱で、私を出産した時も大変だったそうだ。医師からは大事をとって二人目は諦めた方が良いと言われたらしい。
お父さまから養子を考えていると言われた時に、私はまたゲームのストーリーを思い出した。
ジェフリー・ブロンテ(旧姓:ジェフリー・ノーフォーク)。
彼はブロンテ公爵家の養子でやはり攻略対象だったと記憶している。
年齢は同じだが、悪役令嬢ソフィアの義理の弟にあたる。ブロンテ公爵家の後継ぎとなるために養子に入った。
遠縁の子供だが、両親を亡くし親戚に引き取られて不遇な生活をしていたはず。
その後、悪役令嬢ソフィアからも虐められ、人間不信に陥っていたところをヒロインに救われるのだ。
ああ、着々とゲームの筋書き通りになっていく(もちろん、私は虐めないけど!)。
不安が募った私はこっそりと溜息をついた。
*****
ジェフリー・ノーフォーク、後のジェフリー・ブロンテが屋敷にやってくる日。
私は朝から緊張してソワソワしていた。お父さまとお母さまも落ち着かない様子で使用人たちに出迎えの準備を指示している。
ブロンテ公爵家とジェフリーとの関係はちょっとややこしい。
父方のお祖父さまの妹さんは当時のノーフォーク子爵に嫁いだ。そこでジョージという息子をもうけ、そのジョージの一人息子がジェフリーだそうだ。つまり、お祖父さまの妹さんの孫にあたる。あるいはお父さまの従兄弟の子供と言った方が分かりやすいかな?
ジョージはノーフォーク子爵位を継いだが、数年前にジョージは奥方と共に事故で亡くなった。
ジョージ・ノーフォーク子爵の死後、異母弟であるサイモン・ノーフォークが子爵位を継いだ。両親を失って独りぼっちになったジェフリーは叔父にあたるサイモンに引き取られ、養育されている。
サイモンは子沢山だそうで、そこに引き取られたジェフリーは肩身の狭い思いをしているかもしれないとお父さまとお母さまは心配していた。ただ、他家の問題であり、口を挟むことは出来ないと静観していたが、養子問題が発生した時にジェフリーを思い出したらしい。
そんなわけで、ブロンテ公爵家と血縁関係があり両親を亡くしたジェフリーを養子にすることをノーフォーク子爵に打診し、それが受け入れられたという。当然だが、サイモン・ノーフォーク子爵と私たちは全く血のつながりがない。ジョージとサイモンは異母兄弟だからね。
私は朝から気合を入れて準備をし、一張羅のドレスでお出迎えだ。専属侍女のマリアと相談して、悪役令嬢っぽくない清楚な水色のドレスを選んだ。彼を怖がらせないようにという配慮だ。
執事がお父さまに彼らの到着を耳打ちし、私たちはいそいそと屋敷のエントランスへ向かった。
お父さまとお母さまの間に挟まり、私はにこやかに出迎えるために表情筋を酷使していた。
案内されて入って来たのは大人の男女二人と、私と同年代くらいの美少年二人だった。
大人の男女がノーフォーク子爵夫妻で、少年のうちの一人がジェフリーなのだろう。
視線を向けると、どちらがジェフリーなのかは明白だった。
少年の一人は高価そうなスーツを着て、堂々と自信ありげに立っている。
もう一人の少年は従者なのだろうか?
みすぼらしい服装に終始怯えたような表情で周囲を伺っている。
挨拶が済むとノーフォーク子爵夫妻は逃げるようにそそくさと帰って行き、少年二人が残された。
「初めまして。ブロンテ公爵閣下から大変有難いお申し出を頂き、光栄に感じると同時に心から感謝申し上げます」
と大変立派な挨拶をしたのは、予想通り高価な身なりのジェフリー少年だった。
もう一人の少年は幼い頃から一緒に育ってきた従者のパトリックだという。彼も両親を事故で失い身寄りがない境遇だそうだ。
「僕達は二人とも両親を亡くして、ずっと一緒に過ごしてきたんです。ね?パトリック?」
と声を掛けられて、パトリックはおずおずと頷いた。
「だから、パトリックを僕の専属従者にして、僕とパトリックを同じ部屋にしてもらえませんか?」
という言葉にお父さまとお母さまは躊躇していたが、一人だと心細いのだろうと最終的には彼の願いを認めて、パトリック用のベッドをジェフリーのために用意した部屋に運び込むことにした。
ジェフリーは美少年というだけでなく、口調もハキハキとしていて大変人懐っこい。頭の回転が速いことも当意即妙な会話から見てとれる。コミュニケーションのお化けだ。コミュ障の私とは正反対だな・・・(悲)。
両親を亡くして親戚の家で冷遇されていたような暗さは全くない。
想像とは違ったジェフリーに私は戸惑うばかりだった。
ジェフリーは常に明るく朗らかな笑顔を絶やさない。
両親や使用人にも積極的に話しかけているし、私に対してもにこやかで、
「僕はソフィア様のような優しくて美しいお姉さまが欲しいとずっと思っていました。夢が叶って嬉しいです!お姉さまと呼んでいいですか?」
などと社交辞令も完璧なコミュニケーション能力を発揮している。
私は
「う・・うん・・・。ありがとう・・・」
くらいしか言うことがない。
実を言うと、レオからは
「何!?義理の弟になるそいつも攻略対象!?絶対にそいつから嫌われてくれ!間違っても好かれないで欲しい」
と厳命されている。
それもあって、私は意図的に少し距離を置くようにしているのだが、ジェフリーは何かというと私に纏わりついてくるし、邪険にすることも出来ない。
お父さまもお母さまも使用人も誰もがジェフリーを褒め称え、将来のブロンテ公爵として申し分ないと考えている。誰からも好かれる人気者なのだ。
・・・だけど、私はレオの命令がなかったとしても、ジェフリーと仲良くする自信がなかった。
上手く説明できないが、ジェフリーと目を合わせる度に何故か恐怖の感情が強くなるのだ。
何かを・・・いや、誰かを連想させる。
そして、私は思い出した。
前世で相沢さんがいじめを受けていた時。
いじめの首謀者はなんと学年トップの優等生だった。
先生に言っても容易には信じてもらえないと相沢さんと彼女のご両親はコツコツと証拠を集め、学校に訴え出た。私も知っていることを証言したので、ある程度事情を知っている。
優等生は自分で手を汚さずに、他の生徒を操っていじめを扇動していた。
多くの証言があったにも関わらず、いじめの実行犯のみ処罰を受けて、優等生はお咎め無しだった。彼女は涙ながらに、ほんの冗談のつもりだったなどと弁明したらしい。それを真に受ける教師もどうかと思うが、彼女の生活態度や成績が申し分ないレベルだったこともあり、学校が取った対応としては、相沢さんとクラスを別にするくらいだった。
優等生は狡賢い生徒だった。一度疑われた以上もう尻尾は出さないだろう。
でも、私は彼女と目が合う度に思った。
彼女は周囲の大人を徹底的にバカにしているし、見下している。どのようにしたら大人の心証を操ることができるか熟知しているのだ。
この子はどんな大人に成長するのだろう、と空恐ろしくなった経験がある。
そして、ジェフリーの目を見ていると、私はまさにその優等生と目が合った時と同じ感情を抱いてしまうのだ。
ジェフリーは周囲の人間を、私たちを心底バカにしているのではないか?
無邪気で純粋そうな振舞いをしているのは、私たちの心を掴み操ろうとしているから?
そんなことを考えてしまって、私はすぐに反省した。
・・・証拠もないのに、私はなんて酷いことを考えているんだろう。
これって悪役令嬢っぽい考え方じゃない?
私はネガティブだけど、人を貶めるようなことは考えたことなかったのに・・・。
自己嫌悪でズーンと落ち込んだ。
自分がこんなに嫌な人間だとは思わなかった。ジェフリーは単に人懐っこい美少年なだけよ。
それでもジェフリーに近づくのは何となく怖くて『レオから注意されてるから』と言い訳しながら、私は彼を避けるように過ごしていた。
*****
そんなある日、私はパトリックが一人で庭を歩いているのを見かけた。
珍しいな。いつもジェフリーと一緒にいるのに・・。何やってるんだろう?
どうしてか分からないけど、パトリックはいつも怯えているようで私は心配していた。
一度ジェフリー抜きで話をしてみたい。
そう思った私はパトリックを追いかけた。
「パトリック!」
と声を掛けると、ビクッと肩を揺らしたパトリックが振り返った。
パトリックもジェフリーも金髪碧眼の美少年だが、ジェフリーが切れ長の目に凛々しい顔立ちをしているのに対して、パトリックは瞳が大きくどちらかというとたれ目で柔和な印象だ。
「あ、ソフィア様・・・」
「どうしたの?庭に何か用?」
と尋ねると真っ蒼な顔になって、地面に平伏した。そのまま、ぶるぶる震えている。
え・・・?私、そんなに怖い?
「勝手な真似をして誠に申し訳ありません。あの・・その・・・。もう部屋に戻ります。二度と勝手なことは致しませんので、どうか御見逃し下さい」
「責めているわけじゃないのよ。怯えさせてごめんなさい。何か用事があるんでしょう?私に手伝えることないかしら?パトリックは何も悪いことしていないわ。ほら、立って。大丈夫?」
と優しく助けおこす。
まだガタガタ震えていたパトリックは驚いた顔で
「え・・・?」
と私を見つめる。
「どうしたの?」
と話を聞こうとした時に、ミャ~という声が聞こえた。
猫だ!猫、大好き!
私は興奮して辺りを見回した。
すると茂みの影に、痩せこけて薄汚れた子猫が隠れていた。元々は白い猫だったのかもしれないけど、汚れて灰色に見える。
パトリックが焦って
「た、大変申し訳ありません!この子には何の罪もありません。どうか罰するなら私を。この子を殺さないでやって下さい!本当に申し訳ありません!」
とまた地面に這いつくばろうとするのを私は慌てて止めた。
「パトリック。大丈夫よ!私ね、猫大好きなの。あなたがこの猫の世話をしていたの?」
「はい、野良猫のようで・・・こっそりと食べ物を・・・大変申し訳ありません!」
「いいのよ。ねぇ、この子を厨房に連れて行きましょう。きっとちゃんとした食べ物をもらえるわ」
「わ、私も一緒に・・ですか?」
「もちろんよ!私はいつも屋敷の厨房に入り浸っているの。良かったらパトリックのためにおやつを作るわ!」
そう言いながら、私はそっと子猫を抱き上げた。少し汚くて臭うかも。洗浄魔法をかけてあげなくちゃ。
それにしても、私の腕に両脚をかけてみぃみぃ鳴いている様子は悶えるほど可愛い!
ふと猫の後ろ脚に傷があるのが見えた。毛に血がこびりついてるな。膿んでしまっているのかもしれない。
パトリックも同じ傷に気がついたのだろう。心配そうに子猫の足を見つめている。
私は
「大丈夫。私は治癒魔法が得意なのよ」
と言って、子猫の後ろ脚に治癒魔法を掛けた。
ついでに洗浄魔法もかけよう。
フワッとした風とともに子猫の毛が真っ白でフワフワになった。傷ももう残っていないようだ。
パトリックの目がまん丸になった。
「ソフィア様は・・・やっぱり魔女なのですか?」
そして、失礼なことを言ってしまったのかもしれないと不安になったのだろう。慌てて自分の口を両手で押さえた。
「・・・魔女???うーん、そう言われればそうなのかな?でも、この世界の人間は魔法が使える人が多いでしょ?ジェフリーも高い魔力があるって、お父さまが仰っていたわ」
そういうとパトリックの顔が曇った。
どうしたんだろう?
でも、多くの人が魔法を使えるこの世界で『魔女』っていうと『人に害を与える魔法を使う者』というニュアンスが入る。
私は、そんな風に診られているのかと少し落ち込むが、悪役令嬢だから仕方がないのかな、という気もする。
パトリックに悪気はないのだろう。あまり気にしないようにしようと気持ちを切り替えた。
「じゃあ、厨房に行ってみる?今日はね、カステラっていうケーキを作ろうと思っていたの。良かったら一緒に作ってみない?」
と誘ってみた。
「ソフィア様が・・・作るのですか?」
「うん。私ね。料理とお菓子作りが趣味なのよ」
というとパトリックがポカンと口を開けて驚いている。
私はパトリックの手を引いて、厨房の料理長のところに行き、事情を説明した。
料理長は子供と動物が大好きだ。
早速、子猫にミルクを与えてくれた。そして、猫が好きそうな肉を細かくミンチにしてあげる。子猫は嬉しそうに「はふ、はふ」と息を荒くして興奮しながら、夢中で餌を食べている。
良かった。元気そうだわ。パトリックも嬉しそうに子猫を見つめている。
その後、作り方を教えながらパトリックと一緒にカステラを作った。
パトリックは卵を割ったこともなかったらしく、私が教えること一つ一つの説明に目を輝かせて聞き入っている。
「ソフィア様の手際が素晴らしくて・・・公爵家のご令嬢なのに、本当にお料理がお上手なんですね・・・」
とパトリックが感嘆したように呟いた。
「そうなんだよ!お嬢様は美しくて優しいだけじゃない。幼い頃から厨房に入り浸って、俺たちと一緒に料理をしたり、メニューを考えてくれたりしたんだよ。美味しい新メニューのアイデアを次々に出してくれてなぁ。厨房の面子も屋敷の使用人たちも、みんなお嬢様が大好きだよ。しかも、俺たち使用人のために治癒魔法まで勉強してくれて・・・。俺たちが怪我をするとお嬢様がすぐに治して下さるんだ。俺の火傷も何度お嬢様に癒して頂いたか・・・。お嬢様はブロンテ公爵家の宝だよ。俺たちみんなの自慢のお嬢様だ!」
大袈裟な料理長の言葉を聞いて、
「・・・そうだったんですか?・・幼い頃からそんな風に・・・」
と、パトリックは何か考え込んでいる。
その後、パトリックはずっと静かで心配になったけど、焼きたてのカステラを頬張ると
「うわ・・・フワフワで、それでいてしっとり甘い!こんな・・・こんな美味しいもの、初めて食べます!」
と涙目になった。
「そりゃそうだろう!パトリック!公爵家では毎日お嬢様が考えた極上のメニューが食べられるんだぞ!俺はたとえ給金がなくなったとしても、この食事だけでここで働きたいって思えるよ」
と誰かが言い、厨房が温かい笑いに包まれた。パトリックも楽しそうに笑い声を立てている。
その時
「あの~、すみません。ここにパトリックは来ていますか?」
とジェフリーが戸口から顔を出した。
瞬時にパトリックの笑顔が消えた。代わりに恐怖が彼の顔に浮かんだのがすぐに分かった。
前世の相沢さんと同じ表情だ。私の胸の動悸も激しくなる。どうして、ジェフリーが近くに来るとこんなに緊張するんだろう。
「パトリック、こんなところにいたのか?姿が見えないから心配したよ。さぁ、早く部屋に戻ろう」
とジェフリーがパトリックに近づいて来る。
パトリックの顔が引きつっているのを見て、私は知らず知らずのうちにジェフリーの前に立ちはだかってしまった。
「お姉さま?どうなさいました?良かったら、この後お姉さまも一緒にお茶を飲みませんか?」
笑顔のジェフリーは愛くるしいはずなのに、私は恐怖しか感じない。顔がガチガチに強張っているのが自分でも分かった。
料理長は心配そうに私を見ている。
いけない。ここは穏便にすませないと。
「パトリックは料理に興味があるみたいなの。ジェフリーは一人で何でも出来るでしょう?パトリックが常にお世話をする必要はないんじゃないかしら?良かったらパトリックを厨房で働かせてあげてもらえない?ちょうど厨房で人が足りなくて困っていたのよ。ね?」
と料理長に目配せすると、彼はすぐに私の意図をくみ取ってくれた。
「ああ、パトリックは手先も器用だし、手伝ってくれると有難いんだが、パトリック、どうだ?」
それを聞いたパトリックははっきりと安堵の表情を浮かべ、厨房の全員がそれに気がついた。
「は、はい。私で良かったら、どうか厨房で働かせて下さい。ジェフリー様、私も是非皆さんのお役に立ちたいんです!」
私はジェフリーが返事をする前に
「まぁ、パトリックもやる気になってくれて良かったわ。そうだ。パトリックも自立して働くことになるのだから、使用人として個室を用意させましょう。厨房から近い部屋が確か空いていたわよね?」
と話を進めた。
「お嬢様、俺の部屋の隣がちょうど空いてますよ。パトリック、どうだ?俺の隣に来るか?」
料理人のジャンが言ってくれて、パトリックがコクコクと頷いた。
「あ、あありがとうございます。是非・・その・・お願いします」
というパトリックの言葉を聞いたジェフリーを取巻く空気の気温が突如氷点下に下がったように感じた。彼の笑顔からも冷気が伝わって来る。
「へぇ、そうか。パトリックが一人部屋を選ぶとは思わなかったな。何があったんだろう?」
そう言いながら、ジェフリーは私の目を正面から見据えた。笑顔だけど目が全く笑っていない。瞳の奥から刺すような憎悪の視線を感じる。
ああ、やっぱり・・・。ジェフリーはやはり見た目通りの無邪気で可愛い男の子ではない。
「お嬢様。じゃあ、早速パトリックの部屋を調えますよ」
料理長が私とジェフリーの間に入ってくれて、私はホッと安堵の溜息をついた。
・・・どうしてだろう?ジェフリーが怖い。ものすごく・・・怖い。
「・・・分かった。パトリック。部屋に自分の荷物を取りにおいで。僕も一緒に荷物をまとめるのを手伝うから」
というジェフリーの言葉にパトリックの肩がビクリと揺れた。
「そんな、未来の公爵様にそんなことをさせられませんよ。ジェフリー様。大丈夫です。俺が手伝いに行きますよ。さぁ、一緒に行こう。パトリック」
とジャンが手伝いを申し出てくれて、パトリックの肩に手を置いた。
パトリックの顔が安心したように緩むのを見て、私もほっとした。
ジェフリーは笑みを浮かべて、
「そうだね。じゃぁ、お願いしよう。ありがとう。パトリック、みんなが助けてくれるのを感謝しなくちゃいけないよ」
と言うと、二人の後について厨房から出て行った。
しかし、戸口から出る前に私を一瞥した視線は、とても可愛いとも無邪気とも言えない冷徹なものだった。




