第1話:ドワーフで女性でナイスボディの賢者。でも髭面
「もし…私の声は聞こえますか?」
どこかから、鈴を転がしたような女性の声が聞こえる。
「太田太様、聞こえますでしょうか?」
何故か瞼を開けない。
「グあアあああァぁ……」
んん?なんか喉がおかしいような。
やっと目をあけられて、上半身を起こしてみた。
……なにここ? ジ〇リに出てくるどこかの塔みたいなの
まるでラノベの異世界転移シーンのようだ
「お目覚めになられてよかった……」
またさっきの声が聞こえて、俺は声の方を見た。
立派なローブを纏った小柄な、明らかに魔法使いと思える人間。
しかし、暴力的な胸部が、女性であることを主張している。
そして、胸部と同じくらい『髭』も立派だった。
「そこは美人エルフか美人王女だろ?! なんで?!髭の女ドワーフってなんで?!」
というのが、太の異世界第一声だった。
どうやらここは、『ノリディア』と言う名の「異世界」って奴だらしい。
別に魔王倒す為でも、巻き込まれたわけでもなく、俺がこっち来たのは、只の事故だったらしい。
……いっそ魔王と戦えとかの方が、納得できたのにさ
件のドワーフは「賢者」と言われているらしく、古の召喚魔法の研究をしていた。
そして、ノリディアでは起動できない魔力量が必要な書き方で、召喚陣を描いてみたが、なぜか起動したらしい。
たまたま座標指定先になってた世界が以上に魔素が濃く、勝手に繋がり起動したのだそうだ。
どうやら、「地球」には多量の魔力が手つかずであるらしく、偶々そこに繋がってしまい、地球の魔力で起動したのだと。
今回はとっさに、俺と言う「人間」にゲートを繋いで、消滅と同時に召喚陣を閉じることができた。しかし俺はゲートと一緒に消滅して死んでしまったって訳だ。
……理不尽よなあ。でも、ラノベ好きとしてはどうせなら異世界とか楽しむかね。恋人も家族もいない還暦近い独身男だし。
「賢者」であるガーベラ・エルフューギはせめてこちらで生を繋げるようにとっさに散りそうな魂を集めてくれたらしい。
そしてこちらでの肉体に定着させてくれたと。
そういう訳で俺はここに居るのだが、今の俺は、おなじみ超強力なオーガの肉体に、オーク内臓使ったことによる食欲や性豪スキルが合わさった、中ボスのようなモンスターになっている。
なんでこんな事になったかと言うと、急いで俺の魂を定着させる肉体用意しなきゃいけなかったのだが、なんせ予定外。
そこで実験用のモンスターの素材しかなく、混ぜたらこうなったとガーベラは土下座しながら語った。
うん、仕方ないよ、こうして生き返らせてくれたしなあ。
でも異世界転生かと思ったら、まさかモンスターとは……。しかもオーガはともかく、女の敵NO1のオーク成分は嫌だなあ。
あと、急に死んだのはびっくりで多少心残りもある。
これは独身男性全てわかってもらえると思うが、タブレットやPCの中身、HDDは触らないで破棄して欲しい。
特にローカルディスクの中に、それっぽい名で4段階下に沈めて隠してある、あのファイルだけは見つかったら死ねる。いや、もう死んでるのか。
心の中で「俺の隠しファイル覗いた奴は遅漏になって、風俗で延長になる呪い」をかけて、気持ちの整理は終わった。
さて、そうして俺とガーベラとの生活が始まった。
当初は、せっかく頑健で強い体になったし、早くここを出て冒険者になって、独り立ちしようかと思ったんだが、
「言いづらいが、その見た目では普通に討伐されるのう……」
あ、やっぱり?
俺もそう思ったんだよなあ。明らかに悪人顔だし。
そして君は、本当はのじゃロリなのね、髭面だけど……
喰っちゃ寝も三日で飽きる。
俺は、気になってた事をガーベラに聞いてみた。
「ここさあ、メイドとか使わないの?」
「いろいろ秘密があってな…、まえに雇ったメイドが他国の間諜だったりもあってな。身の回りのことは自分で出来るしのう」
ものすごくドやってるが、この塔は汚部屋だらけなんですが?
ついでに料理も酷いもんで、クタクタに煮たスープと、焼き加減と言う言葉を知らない人間が焼いた肉か魚、味は塩のみだ。
「……え?、出来てるって本気で言ってる? あの料理って流石に今後もあれなら勘弁だし、部屋も汚部屋じゃん」
「な、ど、どこに何があるかわかっとりゃええんじゃ! それに食事など只の栄養補給では無いか!」
……コイツ自覚はあるけど、料理も片付けも出来ない女だろ
「そこでさ、俺もただ世話になるのも嫌だし、家事しようか?」
「そ、それは助かるが、元々こっちのせいだしの…」
「うーん、そうだ!。じゃあさ、魔法教えてよ。俺達からすると魔法ってロマンだし、使ってみたい」
「ふむ、使えるかは保証できんが、教えるのは構わんぞ?」
お、やったね。ウーム、「大魔導士」目指してやろうかな。
では、約束通り家事するかな。早速掃除からしますかね。
おっとその前に
「よーし、じゃあ家事は俺に任せとけ。早速だが風呂沸かすから入れ。……一応我慢してたが、おまえ普通に臭うぞ?」
「な、おまえ、それ、女にいう事じゃないだ…」
「黙れ!女扱いされたきゃ髭を剃れ! いいか、俺は女の髭と腋毛は認めん派閥だからな!」
こうして俺の異世界生活が始まったのだった。




