10-48 違和感検知
狩人頭を討った。
死亡確認もして、やっとひと息つく。
ただ、こいつが本当に単独犯だったのかもまだ分からない。他に協力者がいて、こちらを狙っていないとも限らない。
手早く処理をして、一度村に戻る。
狩人頭の首をぶら下げて凱旋することも考えたが、止めた。
まだいるかもしれない他の裏切り者への情報アドバンテージになるし、何より狩人頭が裏切り者だったと公表するのは士気にかかわる。
彼は俺たちの任務を受けて公国を偵察中、行方不明になったのだ。
当然、犯人はにっくき公国の奴らに違いあるまい。公国ゆるすまじ。なのだ。
「アカイト、良くやったな」
村に戻る途上、リュックの中に隠したアカイトを労う。
彼は留守番組だったが、ドンを引き寄せたときと同様のやり方で、呼び寄せられるかを試してみたら、できた。
白ガキに頼んでアカーネに報せて準備をさせたから、なかなか大変だったが……。
森の中で、警戒している敵を待ち伏せて仕留める。
今回の目的にアカイトがぴったりすぎたのだ。
まあ、仮に失敗しても、アカイトが精神崩壊するだけだし……と試してみたわけだが、結果的には想定していたよりもかなり助かった。
実際に森の中で偵察をさせてみると、「賢者」アカイトとの対話で自分のスキルの使い方を学んでいるアカイトは「樹眼」の性能を大いに発揮し、森に仕掛けられた罠の発見や解除だけでなく、何らかの認識阻害系のスキルを使ったらしい狩人頭も、簡単に捕捉してしまった。
戦闘後に改めて話を聞いてみると、「樹眼」は、木々に接している情報を取りにいけるらしいから、認識阻害を使っただけで木の陰に隠れていたり、木の上を移動している者なら普通に看破できてしまうらしい。
「樹眼」が通りやすい木、通りにくい木というものもあるようだし、どこでも同じように使えるというわけではなさそうだが、索敵が気配頼りの俺と比べると森の中での信頼度は相当高い。
「何のこれしき、でござるよ。殿が拙者をお呼びと聞いて、嬉しかったでござる!」
「すまんな、いきなり血生臭い戦いに駆り出して。あっちの様子はどうだ?」
ついでにアカイトに、港都市の様子を聞いてみる。
港都市の屋敷に残っているのはアカーネ、ジグ、そして元襲撃者のアレシアとイエモンだ。
俺が名前を付け、『守護者』のジョブになったイエモンはかなり活躍しているようだ。
ジグと屋敷の護衛責任者のような立場で、最近ジグが雇った連中のまとめ役もしているらしい。アカイト目線なので要領を得ないところもあるのだが、どうやらその中の1人と恋仲?にあるとか。順風満帆すぎるだろ。
竜門族の小娘であるアレシアは新しい連中と訓練しながら雑用係のようなことをしているらしい。もめ事を起こすのはいつも彼女に任せている連中らしい。
何やってんだアイツ。
アカーネは部屋や地下室に籠って好き勝手やっているようだ。
新しく雇ったやつらをパシって、研究材料や軽食をよく買わせているらしい。
そのせいかちょっとふくよかになりましたぞ! とのこと。
そしてジグだが、スクスクとジョブが育っているらしく、エモンド家の伝手でジョブのレベルを調べたところ、『支配者』がレベル21まで上がったとのこと。
拾ったときはレベル10かそれ未満だった気がするが、屋敷の責任者として『支配者』らしき言動をしていたら、爆速でレベルが上がっているようだ。
そして新しいスキルの名前は「スキル阻害」というらしい。
屋敷連中相手に実験しているようだが、スキル名から期待したほどの効果は今のところ確認されていない、と。
小難しい話ゆえか、一瞬「賢者アカイト」になって説明してくれたところによると、名前の通り他者のスキルの発動や効果を阻害するのは間違いないらしい。
ただ、その発動条件が厳しい。「何のスキルを、どう阻害するのか」をイメージできていないと発動しないようなのだ。
意識外からのスキルや、何のスキルか分かっていない状態ではほぼ無意味。
阻害できたとしても、「威力が下がった」くらいの効果で、完全に防ぐことはできない。
じゃあ使えないじゃないか、と思うが……これはあれだな、使い方が無限大である代わりに、使いこなすのが鬼難しいタイプのスキルだと思うな。
スキルの話になったので、ここ最近ロクにステータス確認ができていなかったことを思い出す。村に帰ったらステータス確認タイムと洒落こもう。
その前に、今回の狩人頭の始末をどうするか、話を付けておく必要があるか。
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無事に村に帰還したあと、何もなかったフリをしながら、拠点にしている元村長の館でニール曹長を呼び出す。
「よく来てくれたな、ニール曹長」
「いえ。何か御用ですか?」
「あんたには言っておこうと思ってな。村の裏切り者だが、狩人頭がそうだった」
「何ですと?」
ニールは眉を寄せて不機嫌そうな顔をした。
「……何かあったようですな」
「ああ。曹長の協力もあって、無事裏切り者を釣り出せたんだが……これが狩人頭だった」
「確かなのですね?」
「ああ。自分で言っていたからな、公国に付いたと」
正確には公国というより、『渡り鳥』のカイルに付いたような感じだったが。
「……にわかには信じられません。しかし……む? そういえば、ヨーヨー隊長は手ぶらで戻られましたね。逃げられましたか?」
「いや、殺した」
「ほう……そうですか」
「だが、埋めて来た。今狩人頭が裏切って死んで、村が動揺するかと思ってな」
「……なるほど。それで、私のところに来たのは」
「察してるかもしれんが、これを公国の仕業にする」
「ああ、そっちですか……」
ニールは思案気に頷く。
「そっち、とは?」
「いえ。いくつか手はありそうですが、確かに。公国に殺されたことにするのはメリットが大きそうです」
「良い手だと思うか?」
「ええ。特に、村の中に残っている公国シンパを混乱させることはできるでしょう」
「……いると思うか? まだ、裏切り者が」
「どうでしょうな。しかし、もしいるとしたら2種類、考えられます」
ニールは人差し指と中指を立てて、数字の2を示す。
「1つは、公国シンパとして組織だって動いている場合。この場合、いきなり同志と連絡が絶たれ、状況が理解できない可能性が高い。こちらで情報を流すタイミングを計ることで、炙り出しを狙えそうです」
「もう1つは?」
「狩人頭、その人に従っている場合ですよ。狩人頭というのはこの村では特別な存在のようですからね。その場に長く留まっていた人物であれば、個人的な協力者が出てもおかしくはない。その場合、公国が殺したという情報の真実性によっては……彼らの感情をうまく操れるでしょう」
うむ、流石にあの狩人頭をして偽情報を信じ込ませた情報戦のプロ。
面構えが違う。
後はニールに任せて、俺はサーシャたちと戯れて任務完了を待ちたいよ、ホントに。
ただでさえ、楽勝とまではいかなくてもそうそう苦戦はしないと思っていた裏切り者への待ち伏せで、想定外の苦戦を強いられたのだ。
もう俺は十分に仕事をしたと思うのだが。
「よし、その方向で頼む。それから、俺の情報が敵に流れていた。隊長になった経緯とかな。おそらくあいつらだ」
「ああ、新人たちですか……」
「キツく言っておいてくれ」
「それはもう。ご迷惑をお掛けしました」
ニールが珍しく、完全に申し訳ない表情になって頭を下げた。
とにかく、裏切り者が片付けば、あとは決戦の方のカタが付くまで粘るだけだ。
なかなか決戦の方の情報は入らない。
実はもう大敗していて、軍が情報封鎖しているだけとか、ないよな?
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部屋で、自分のステータスから順番に確認する。
*******人物データ*******
ヨーヨー(人間族)
ジョブ ☆干渉者(32)魔法使い(36↑)魔剣士(29↑)※警戒士
MP 63/72
・補正
攻撃 D+
防御 F+
俊敏 D
持久 E+
魔法 B
魔防 D+
・スキル
ステータス閲覧Ⅱ、ステータス操作、ジョブ追加Ⅱ、ステータス表示制限、スキル説明Ⅰ、獲得経験値増加、サブジョブ設定、天啓
火魔法、水魔法、土魔法、風魔法、魔弾、身体強化魔法、溶岩魔法、性質付与、氷魔法
身体強化魔法、強撃、魔剣術、魔閃、魔力放出、魔創剣、受け剣
気配察知Ⅱ、気配探知、地中探知、聴力強化Ⅰ、レストサークル、違和感検知(new)
・補足情報
隷属者:サーシャ、アカーネ、キスティ、ルキ、ジグ、アカイト、イエモン、アレシア
隷属獣:ドン
*******************
使っているジョブは全体的に上昇していっている。
今回新たにスキルを会得したのが『警戒士』だ。
戦闘中はサブジョブにしていることの方が多いが、何せ索敵する機会が多いので、気付けばレベル36だ。
会得した「違和感検知」の説明がこれ。
『違和感検知:自身の違和感に対する認知を促す』
また効果が掴みにくいスキルだ。
どうやら魔力も使用できるようなのだが、基本は勝手に発動するパッシブスキルのようだ。
アカイトの「隠形魔力」なんかを使ってみると、確かに何か違和感を感じる、気がする。
隠密系のスキルに対するアンチスキルだろうか。
今までは「気配探知」の多重撃ちなどで無理やり見破って来たから、それ用のスキルが生えたのかもしれない。
さて、注目なのがアカイトだ。
*******人物データ*******
アカイト(ラキット族)
ジョブ 森の隠者(27↑)
MP 2/32
・補正
攻撃 G-
防御 G-
俊敏 E-
持久 E-
魔法 E
魔防 E+
・スキル
(危険察知Ⅰ)
隠者の知恵、樹眼、隠形魔力、戦士化、地形記録、体重操作、土魔法(new)
・補足情報
ヨーヨーに隷属
*******************
おわかりだろうか。
土魔法が生えた。
……生えた。
「森の隠者」って、魔法スキル生えるんだあ……。
既に、魔力限界までさんざん練習させている。
俺は『魔法使い』ジョブがあるから、土魔法しか使えない状態というのがあまり想像できない。が、派生ジョブとしてはままあることだ。
魔法の土を創るといったことはまだ出来ていないが、手を付けた状態で柔らかい地面を少し動かす程度ならアカイトもすぐ出来た。
もともと「樹眼」とかで魔力操作の練習をしていた成果かもしれない。
「戦士化」しなければ貧弱なステータスのアカイトだが、魔法を攻撃スキルとして使うことで、一定の攻撃力を得ることができるかもしれない。
本人の「優れた戦士になりたい」という夢からは遠ざかるかもしれないが、まあそこは使いようだ。
次にサーシャだが、サーシャも今回の戦いでスキルを会得した。
*******人物データ*******
サーシャ(人間族)
ジョブ 十本流し(26↑)
MP 18/24
・補正
攻撃 E+
防御 F+
俊敏 E-
持久 E-
魔法 G
魔防 G
・スキル
射撃大強、遠目、溜め撃ち、風詠み、握力強化、矢の魔印、魔法の矢、気配察知、貫く一矢(new)
・補足情報
ヨーヨーに隷属
*******************
最近「気配察知」を会得したサーシャだが、続いて「貫く一矢」を会得した。
試してもらったところ、発動するのにはかなりの精神集中が必要なようだ。
単にスキルの発動を思ったり、魔力を流しても発動しない。
高い集中力で、時間をかけて標的に射かけるとき、半ば自動で付与されるようだ。
発動すると、矢の速度と、威力に補正が乗る、のだと思う。
想定通りの効果なら、スナイパー的な活躍に貢献できる。
キスティ、ルキは大きな変化なし。
どちらもレベル35に達した。
あと、ドンのステータスだが……。
*******対象データ*******
ドン(ケルミィ)
MP 12/12
・スキル
気配察知Ⅱ、刺突小強、危険察知Ⅱ、知性Ⅱ
・補足情報
ヨーヨーに隷属
*******************
何故か魔力がちょっとずつ増え続けている。
成長期なんだろうか。
いつも、そこまで喰って大丈夫だろうかってくらい木の実を食べてるし。
「ギキィ」
はいはい。
貢物は欠かしませんよ。





