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【マイルド】異世界 きまぐれぶらり旅~奴隷ハーレムを添えて~  作者: さとうねこ


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10-4 換気

白ガキから依頼の話を聞いた。


目を覚ますと探査艦の個室ベッドだ。

昨日ハッスルしたキスティを押しのけて立ち上がる。

艦内の何かのセンサーが反応して、少しだけ天井が白く光る。


こうしていると白ガキと話した内容が全て夢の中の事だったように感じる。

だが不思議なことに、あの空間で話したことは夢のように薄れることはなく、まるでそこに実際に行っていたかのように鮮明に記憶に残っているのだ。


「んん~……主、どうした?」

「キスティ。残念ながらやることができた」

「んん?」

「だがお前らにも詳しいことは言えないようだ」

「……待ってくれ、起き抜けに言われても頭が回らん」

「気にするな」


本当は何も言うべきではないのだろうが、白ガキに確認したダメなラインには抵触していない。言わないのではなく、言えない。こう言っておけば、サーシャ辺りは色々察してくれるだろう。たぶん。


「ん~、うるさい~」


ベッドの端、俺とキスティが足を向けていた場所から、眠そうな声がする。


「アカーネ、いつからそこにいた?」

「……さっき」


アカーネは勝手に潜り込んでいたようだ。

ネコか。


「さっきって。魔道具で夜更かしでもしていたか?」

「とーぜん」

「そうか」


当然なら仕方がない。


「まあ、好きなだけ寝ておけ。俺は色々準備してくる。キスティも来るか?」

「そうしよう」


服を着て出ていこうとすると、アカーネから待ったが掛かる。


「ね~」

「どうした?」

「ここちょっと臭い……」

「……ヘルプAI、この部屋を換気できるか?」

「消臭モードで換気します」

「頼む」


別にアカーネが頼んでも、換気くらいはヘルプAIがやってくれるんだが。

まったく。



デッキに向かうと、サーシャとルキが料理をしていた。

シャオもそれを手伝っているというか、ルキの頭の上から観察している。


「おはようございます」

「おはよう。アカイトはどうした?」

「ドンちゃんと特訓するとかで、訓練室に行っていますよ」

「ドンとかよ」


すっかり馴染んでしまった探査艦。

やはりここを手放すのは惜しい。


「ルキ、野菜の切り方が雑ですよ」

「これくらいの方が歯ごたえがあります」

「貴女はそうでしょうけど、あんまり硬いとアカーネが残すんです」

「……母親みたいです」

「何か言いました?」

「いいえ」


サーシャとルキは落ち着いたトーンで、結構よくしゃべる。

気が合うというか、サーシャとしては感性が比較的近いのがルキだから何かと構っているように見える。

ルキが刻んでいるのは人参的な何かと、青々とした葉物野菜。

旅暮らしだと、葉物野菜なんかは不足しがちだ。


「サーシャ、その野菜は?」

「この艦で収穫したものです。ここは便利ですね」

「便利だよなあ」


思えば白ガキ、ここを俺たちに便利に使わせたのも、放棄するのは不便だと思わせるためだったのだろうか。

確かに効果的だ。


朝飯はサラダに煮物、焼き魚と色んな料理が机に所狭しと並べられた。

サーシャはアカーネを起こしたがったが、俺が止めた。

ここには冷蔵庫もあるのだから、後で起きた時に食えばいいのだ。


「さて、アカーネはいないが、ここで皆に伝えておく」


朝飯を堪能したあと、先におなか一杯になった俺が口火を切る。


「そのまま食べながら聞いてくれ。俺にはちょっとやることができたが、その詳しい話はできない」


一度手を止めたルキと違って、サーシャは手と口を動かしながら目線だけをこちらに向けた。たしかに食べながらとは言ったが。


「……えー、まあ、ここでもちょっと休んだし、すぐに旅に出るってことでもないが。今日から準備を始める。手始めに、エモンド商会の商会長に会う」


もぐもぐ。

そう聞こえてきそうなほど咀嚼しながらサーシャが頷く。


「場合によってはまた長期の任務に出るかもしれないから、それぞれ出れる準備はしておいてくれ。あ、それと」


白ガキの依頼に頭を持ってかれていたが、これは伝えておくか。


「キュレス帝国は周辺諸国と戦争状態に入ったらしい。相手はズレシオン、エメルト、それにソラグだ」


ぶはっ。

サーシャが口に含んでいたものを吐き出した。


「ゲホッ、ケホッ! ……不覚。ご主人さま、今の話は本当、ですか?」

「ああ、どうやらガチらしい」


キスティ、ルキは固まって箸とフォークを取り落としていた。


「あ、主、それはどこから……」

「さてな。ただ、それなりに信頼は置ける筋だ。そのことを確かめるためにも、商会長に会う」


サーシャは汚してしまった自身の前の机を手際よく片づけながら、思案顔だ。

キスティは困惑顔。

昨日はキスティとハッスルしていたわけだし、どこで情報を得たのか腑に落ちないのかもしれない。消去法で察してくれても良いのだが。

ルキは無表情で固まっている。


「……サラーフィー王国はどうなりましたか?」

「それは分からんが、何も聞いていないということは、開戦はしてないんだろうな」

「そうですか。その戦いにサラーフィー王家が介入するだけの力はないとは思いますが……内戦は起こるかもしれませんね」

「内戦か。あそこは王家の力が弱いって話だったもんな」

「王家がどちらかに近いと見なされれば、反対の勢力が反王家の者を煽って対立させようとするでしょう。そして、それと分かっていて乗る者もいる。それがあの国です」

「となると、王家がどちらに与するとしても、サラーフィー自体は影響は少なそうだな」


残るアカイトが静かだと思って目をやると、首を傾げながら、サーシャの前にゴミ箱を持ってきたりしている。

まあ、こいつは東の諸国とは縁が薄いから、あんまり事の大きさが分からないのかも。


「主! ズレシオン連合王国はともかく、ソラグ公国がキュレス帝国と戦っているというのは間違いないのか? ウィンスニアあたりの間違いではないか?」

「それを確かめに行くってことだ。俺が聞いた情報じゃ、ソラグ公国が最初にキュレス帝国に攻め入ったらしいぞ」

「なんと……」

「そんなに意外か?」

「あの国とキュレスの王、いや帝王は兄弟同然と聞いた。それが真っ先に攻め込むなど……」

「まあ、王同士が仲良くても、重臣が納得していないとかもあり得るだろ」

「それはそうだが……ううむ」


公王とやらは、よほど野心を隠すのが上手かったということか。

あるいは、兄弟のように交流があったからこそ許せないということもあるかもしれない。

人と人の関係は複雑なものだし、人が裏切っていく理由なんて、あっけないほど単純なものだったりするのだ。


「ご主人様は、その戦いに介入されるおつもりですか?」


机の上を片付けたサーシャが流石にもぐもぐは止めて訊いてくる。


「まだ決めていないが、その可能性はある。ただ、どちらかを勝たせることを目標にするつもりはない」

「あくまで傭兵として参戦されるおつもりでしょうか?」

「それも一手だが、状況次第だな」

「なるほど。冒頭に仰っていた、やることというのが優先なのですね?」

「まあ、そうだ」


サーシャは頷く。


「分かりました。まずはエモンド商会との面会を準備しましょう」

「頼む」


立ち会うのはサーシャとキスティ、あとジグもかな。

会長がいきなり殺気を飛ばしてくることもないとは思うが、帝王あたりに言われて俺と敵対してくる可能性もゼロじゃない。



***************************



東の家に転移する。

今度は地下から出て、居間でジグを見つける。


「ヨーヨー様、丁度良かった」

「あっ、ええっ? いつの間に来てたの!?」


横でソファに座ってミカン的な果実の皮を剥いていた竜紋族の娘、アレシアが驚いている。


「気にするな。ジグ、丁度良かったってのは?」

「エモンド商会の使いがこの後来る」

「マジか?」

「ヨーヨー様たちが帰ってきてると思ったんだと思う。すぐに会いたいって」

「また、偉く切迫してるな……そうだ、ジグだけ地下に来い」

「うん」

「ねっ、ねぇ! あたしは!?」


アレシアが手を挙げて主張している。


「お前は来なくて良い」

「えっ、ええ~? なんかゲゲラッタが改名してるし、色々聞きたいことあるんだけど」

「ジグから聞け」

「教えてくんないんだよ!」

「そうか、なら俺も言うことはない」


アレシアを置いて地下に行き、ジグにも開戦の件を共有しておく。

ジグはピクリと反応したが、サーシャやキスティほど驚かない。

ジグも西の出身だからか。


「……知らないことにしておいた方が良い?」

「そうだな、エモンド商会にも最初は言わないようにしてくれ」

「分かった」

「エモンド商会の使いに少しでも悪意が見えたなら、合図して教えてくれ」

「うん」


とりあえず会長との会談を取り付けて、それからだな。


「それと、この家の運営だが」

「うん」

「いざという時に使える人材も確保しておきたい」

「いざという時?」

「ああ。俺じゃなくてジグや、他の従者の隷属者にする者。イエモンやアレシアの下に付けても良い。そんで、隷属していないが使えるってやつらも」

「……ここは地下に戸籍なしもいるから、人手を囲うこと自体は可能。でも役に立つ?」

「ああ。いざという時、切っても惜しくない奴は囲っておいて損はない」

「……」


ジグは俺の目をじっと見る。


「なんだ?」

「ヨーヨー様らしくない。何かあった?」

「まあ、色々な。詳しくは説明できないが、打てる手は全て打てるようにしておきたい」

「敵は帝国? それとも別の組織?」

「さてな。いや、帝国ではないと言っておこう」


変な動きをして帝国当局に睨まれるのは避けておきたい。


「分かった。エモンド商会は味方?」

「それはまだ分からん」

「……なるほど」

「でもまあ、出来れば味方というか、便利に利用させてもらいたいところだ」

「エモンド商会は使える」

「そう思うか?」


ジグはこくりと頷く。


「あっちの用事次第だけど。協力できるなら、人を集めるのにも便利」

「まあ、大商会だしな……」


看板というか、信用力は俺と比べるまでもないだろう。


「そういえば、アレシアはどうなんだ? あんまり情報共有はしていないようだが」

「……使えると言えば使える。彼女は分かりやすい」

「ほう?」

「自分が得になることは喜んで受ける。だから今のメンバーで裏切るとしたら彼女」

「ほう」

「ただ進んで裏切るほどの悪性もない。ヨーヨー様の強さを知れば尚更」

「ふむ。一度たたっ切ったんだがな?」

「結構前のことだし、案外大事にされてるから、麻痺してる。拷問されたら秘密も喋る可能性がある」

「ふむ……」


だからあまり重要なことは共有していないのか。


「まあこのままでも良いが、大事なところを話せないのは面倒だな。何か手はあるか?」

「……1つ」

「なんだ?」

「ヨーヨー様の女にすれば良い」

「……おい」

「あれは力に心酔する可能性がある。連れ回してしまうのが実は近道かも」

「別に連れ回すのに、女にする必要はないだろ」

「それはそう」


案外あっさりと折れた。

連れ回すか。


「アレシアはイエモンとそういう仲だったりしないのか?」

「ない」

「……いや、はたから見てそうだとしても」

「ない。アレシアはイエモンを異性として見ない。あとイエモンにはもうちょっと良い子をあてがうべき」

「おいおい。あてがうって」


イエモンはアカイトを除けばはじめての男従者なわけだが、そこの恋愛事情には興味はないぞ。サーシャ達に恋慕したら困るが。


「外部の者と自由恋愛させると、情報漏洩のもと。こっちで良い相手を用意するのが良い」

「用意って」

「奴隷とか。いかにも好きそうなタイプを家事手伝いにする」

「そう簡単にくっつくかね?」

「できる」


おいおい。

こいつは本当に何歳なんだよ。


「そ、そうか。じゃあ任せたぞ」


どうせ使える頭数を増やそうとしているのだ。

世話係のなかにイエモンの相手を用意してやっても罰は当たらないだろう。

あくまで本人たちがその気になれば、だが……。



俺が転移してしばらくして、エモンド商会からの使いが現れたと聞いて、応接間に入る。

俺が机に肘をついて大物感を演出していると、イエモンが相手を案内してきた。


「失礼します! エモンド商会のテッド・エモンド様をお連れしました」

「うむ……え?」


イエモンの背後から現れたのは、いつぞや護衛した御仁。

テッド・エモンド会長その人だった。


「今日は使いということでしたが……」

「重要な案件ですから、私自身が連絡係の真似事を務めておりましてな」

「ど、どうぞ」


とりあえず中に入ってもらい、着席してもらう。

会長の背後には専属護衛のノッチガートと、俺の知らない気難しそうな年配女性が控えている。


会長は座るや否や、雑談にも入らずいきなり口を開いた。


「ヨーヨーさん。戦争のことはご存じかな?」



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