タイトル未定2025/11/19 20:12
冬休みの間、それぞれの学校へ入学手続きに追われていた若菜と流花は、冬休みが終わった後の日曜日、久しぶりに二人で会った。
誘ったのは、流花の方だった。
待ち合わせ場所で若菜を待っていると、赤いチェックのミニスカートに黒いロングブーツを履いた若菜がやって来た。
「お待たせ!」
若菜とは対照的に、流花はジーンズにスニーカーを履いていた。
「今日は、つきあわせちゃって、ごめんね」
「良いよ!それより、何処へ行くの?」
「行きながら話すよ。さぁ、行こう」
流花は歩き出し、若菜は流花の後を追った。
地下鉄に乗り、更に路線バスに乗り換えた。
バスは数人の客しか乗っていなかったので、若菜と流花は最後尾の席に座った。
座席に座ると流花は、思い切ったように切り出した。
「実はね……バイトの帰りに偶然マスターに会って、一緒に食事をしたの」
思いもよらない流花の言葉に、若菜は声が出ず、ただただ流花をみつめるだけだった。
「本当に、偶然会っただけだよ!」
「シロちゃん……それって、いつの話?」
「えっと……」
流花は、若菜の問いに答えた。
「その日って、北神さんとちはるさんと、三人でマスターの店に行った日だ!」
「えぇ~!マスターの店に行ったの?」
「うん。パパが旅行に行った時、マスターの分のお土産を買ってきたから、お土産を渡しに。一人じゃ店に入れてもらえないから、北神さんたちと行ったんだ。でも、店はやっていなかったから、違う店でご飯を食べた」
「そうだったんだ」
「マスターと一緒に食事をしたなんて、良いなぁ!ねぇ、マスターどうだった?何を話したの?」
「マスターは、サラリーマンみたいな恰好をしていた」
「サラリーマン?普段は、リーマンなのかなぁ?」
「さぁ……疲れた顔をしていたよ。でね……」
「うん、うん!」
「ビール飲んで、タバコを吸っていた!」
「タバコ!店じゃ、吸わないよね」
「ヘビースモーカーだったよ」
「ビール飲んでタバコを吸っている姿、写真を撮った?」
「まさか!店の中だよ。そんなこと、できるわけないじゃない!」
「だよね~見たかったなぁ」
「あとね……」
「うん、うん」
「マスター独身だって」
「嘘ぉ~」
「独身って、言っていたけど……」
そこまで言った流花は、言うのをためらっていた。
そんな流花を、若菜は急かした。
「なによ!気になるじゃん!」
「……独身って、言っていたけど。マスターの薬指に、ふたつの指輪があった」
「ふたつの指輪?」
「薬指に、ふたつ指輪をつけていたの」
「薬指に?なんで、ふたつも?」
「さぁ。わからない。マスターは、お守りみたいなものだって、言っていた」
「益々、マスターがわからないね。そこが、魅力なんだけど」
「そうだね。あっ、そろそろ降りるよ」
言いながら流花は、窓側のボタンを押した。
バスを降りると、そこは繁華街から外れた郊外で、マンションや団地が並んだ新興住宅地だった。
緑豊かで、近くに小学校や公民館があった。
「マスターと食事をした夜、バス停まで送ってもらって、その時マスターは何処に住んでいるのか聞いたの」
若菜は、周りの景色を見まわした。
「……もしかして、此処がマスターが住んでいる場所?」
「うん。マンションに住んでいるんだって。マスターから、マンションの名前を聞いたよ」
若菜と流花は、バーテンダーが住んでいるマンションを探した。
マンションは、公園の目の前にあった。
日あたりが良く、快適な場所に建っていた。
「マンションの名前は、聞いたけど。部屋の番号までは、聞かなかった」
「さすがに、そこまでは聞けないよね」
「ごめんね。わからないのに、こんなとこまで引っ張り出しちゃって」
「ううん。マスターのこといっぱい聞けて、嬉しかった!マスターこんなところに、住んでいるんだ」
「でも、こんな大きなマンションに、男独りで住むかなぁ?」
「独身でしょ?家族と暮らしているんだよ」
「そうだね。そう言えば、マスターも私やスイと同じで、一人っ子なんだって。しかも、父子家庭!」
「そうなんだ。お父さんと、ふたりで暮らしているのかな?」
若菜が、そう言った時だった。
マンションから、幼稚園児くらいの男の子が出てきたのは。
男の子は、公園の方に走って行った。
「可愛い~」
目がくりくりした男の子で、思わず若菜と流花は声をそろえて言った。
男の子は、大きな滑り台にかけより、滑り台の階段を上り始めた。
「滑ってる!可愛いね」
若菜が目を細めて言うと、流花が突然若菜の服の袖を引っ張った。
「スイ……スイ」
「ん、何?」
「マスター!」
「えっ!」
黒いジャンパーにジーンズ赤いスニーカーを履いたマスターが、マンションから出てきた。
マスターは公園に入ると、滑り台の方へ行った。
滑り台で遊んでいた男の子は滑り台から滑り終えると、マスターの方へ走って行き、マスターの足に抱き付いた。
マスターは男の子の手を握り、男の子と手をつないで、若菜と流花がいる反対側の方から公園を出た。
その一部始終を若菜と流花は、黙ったままみつめていた。
「何、あれ……」
若菜は、ぽつりとつぶやいた。
「わからない」
「なんなの、あの男の子!マスターは、独身なんでしょ?」
「……親戚の子が、たまたま遊びにきていた?」
「そう……かな」
しばらくの間、若菜と流花は黙り込んでしまった。
その沈黙を、流花が破った。
「もしかして……」
「なっ……なに?」
「マスターって、実は……バツイチ……とか」
「バツイチ……」
「離婚して、子供を引き取った?」
「離婚したなら、独身って言ってもおかしくないし」
「つじつまは、あうわね」
「スイ、どうする?」
「どうするって?」
「マスター追い続ける?」
若菜は、思い切り伸びをして、マスターが住んでいるマンションを見上げた。
「まだ、何もわからないじゃない!これからよ。シロちゃんは?」
「私は……わからない。ただ、もっとマスターのことを知りたい。そう、思うだけ」
二人は、照れくさそうに笑った。
「スイ、帰ろうか」
「うん」
若菜と流花は、肩を並べて公園を横切った。
かっこよくて、女性から愛される男性キャラを作ってみたい。
きっかけは、そんなささいなものでした。
いざ向き合ってみると、アイディアが浮かんで軽弾みでやってはいけない。
そんな思いで、書きました。
1作品で終わらず、この小説はシリーズ化します。
そして登場人物(数名)の名前は、当時某サイトで交流をしていた方たちの名前(本名ではありません)です。
使って良いか確認をして、お借りしました。
懐かしいなぁ。
次に投稿をする小説は、「DANDY」の続きです。




