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The slave girl decided the way of life

 ――人間は、生き方を簡単に変える事は出来ない。

 

 彼女――キリカ・レイフォードには、その変えられない生き方がある。幼い頃から叩き込まれたであろう暗殺術。孤児だった彼女が何も知らず、世間から枠を外された存在として生きて来た結果だ。そして、彼女自身が選択して来た生き方。

 裏の世界で忍び、悪が悪を捌く世の中だからこそ出来る事だ。だがその生き方も、きっと窮屈だっただろうと思わざるを得ないのだ。学校で初めて出会ったあの日から、彼女の本当の笑顔という物を見た事が無い。


 「……」


 口角が上がった程度。その程度の笑みは見た事があっても、白い歯が見える程の笑みは見た事が無い。彼女自身が何かに興味を持った所も、何かで喜んでいる所も見た事が無い。……いや、一度だけ見た事があったかもしれない。

 まだあの少女が生きていた頃、マリア・スカーレットが生きていた時の事だ。あの少女が彼女と共に行動している時や彼女の事を叱っている時、彼女は確かに口角が上がっていたように思える。


 「……」


 だがこれは過去の記憶。思い出でしかないこの記憶は、一度心の奥へと仕舞っておこう。そして今は、今の彼女とどう過ごしていくかを決めよう。勿論、彼女と相談しながら……


 「お待ちしていました、レイフォードさん」

 「……私がここに来るのを知ってたの?」

 「いいえ、勘で待ってました」

 「もし来なかったら、どうするつもりだったの?」

 

 私は彼女の問い掛けに対して首を横に振り、何食わぬ表情を浮かべて口を開くのであった。


 「それでも待つつもりでした。最初から、来るまで」

 「……迷惑な人」

 「えへへ、良く言われます」

 「褒めてない」

 「それで、答えを聞いても宜しいですか?」

 

 私は自分の頬を指先でなぞりつつ、彼女に改めて例の件について答えが出たかを確認した。答えは「ノー」と言われるかもしれないが、それでも私は彼女をどうにかして雇うつもりだ。どうにかして、という部分は想像に任せるとしよう。


 「いつから日本に行けば良い?」

 「…………へ?」

 「……契約の話、いつから?」

 「う、受けてくれるのっ!?やったぁ!!」

 「はしゃぎ過ぎ。私が切っても構わないと思ったら、すぐに姿を消すから追わないで。それが条件」

 「分かりました!じゃあずっと一緒に居られますね!レイフォードさん、いえ……霧華さん!」

 「はぁ……(答え、早まったかな)」


 私は心から喜びを抑え切れず、彼女の手をしっかりと握り締めた。これ以上の無いくらいに繋ぎ、もう放す訳にはいかないと心に誓いながら、私は言うのであった。


 「宜しくお願いします、私の護衛さん」

 「……霧華で良いけど、護衛さんと呼ぶのは止めて」

 「あはは、ダメか。それじゃあ霧華さん、これが私が居る場所の住所と電話番号です。プライベート番号はもう渡してあるので、私個人に用がある時も無い時も連絡して下さい!待ってるんで!」

 「ん、じゃあまた」

 「はい!待ってます!!必ず!!」


 私が大きく手を振ると、立ち去って行く彼女の背中を見届ける。キャリーバッグを持っていたから、そのまま日本へと行くのかと思っていたが違うらしい。恐らく、彼女自身の用があるのだろう。それが済んだら、日本でまた一緒に居られる。

 

 それはもう……――楽しみである。

 

 


  ◆◆◆




 二年の間、暮らし続けたこの地とも別れの時だ。最初はあの話に乗る気は無かったが、私が出来る事をするのに支障が無いと思った結果である。護衛だろうが暗殺だろうが、他者を助ける結果を生むのも必然であり同義だ。

 もし、その道中で私が道を踏み外したとしても、彼女がそれを見逃すつもりは無いだろう。そして何より、彼女がこちら側へと足を踏み入れようとするのを注視する。その代わりに私が傍で、彼女を見張りながら仕事をすれば良いだけの話だ。

 どのみち、こちら側へと入ったら最後……私は逃げ場なんていう物は存在しないのだ。なるようになるしかなく、全てはこの世の何処にも居ない神が決める事だ。でももし、神様が本当に居るのだとすれば、一つだけ願いを叶えて欲しい事がある。


 「……行って来ます、マリア」


 もう一度、地獄で彼女と会えるように。それが私が持つ、唯一の願いである。その為なら私は、何でもやり遂げる。暗殺も、護衛も、全て……この命が尽きるまで、私はこの生き方を貫く。


 「――……ようこそ、霧華さん。いえ、おかえりなさい!」

 「……」


 何故なら私は、あらゆる存在の奴隷であるのだから。次は、彼女の奴隷として生きよう――。

ご拝読、感謝致します。

作者の三城谷と申します。まずは、ここまで着いて来て頂いて感謝の言葉を述べさせて頂きます。


【奴隷少女は笑わない】という一部作から始まり、この作品という外伝のような、続編のような、という曖昧な位置で書かせて頂きました。まだまだ続きそうな書き方で終わらせているのは、読者様方に想像の幅を共に広げたいと思ったから、というのが大きいです。


 勿論、気持ちの悪い終わり方をしているようであれば、今後の作品で訂正していくので考慮する点では御座います。が、一応そういう作風だという事はご了承願いたいと思っております。ですが、あえて……いえ、この一言を言わせて頂きます。


 最後まで読んで頂き有難う御座いました。また別の作品でお会い、そして面白いと思ってもらえるような作品を作って行きたいと思います。今後とも、宜しくお願いします。それでは、また何処かで

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