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Luckey number 11(ラッキーナンバー11)③

「それで、なんで君が僕のバイクの後ろに乗ってるんだ」

「仕方ないじゃない。歩いて帰るわけにもいかないし」


 アンドロイドとエイリアンという奇妙な組み合わせがプラヤ砂漠を走り抜ける。彼女の白髪が一筋の線となって流れていた。


「走りながら状況を説明するわ。異星人」

「そうだ、それ。初めて会った時も言ってた。『異星人』って『エイリアン』って意味だろ。どうして僕が異星人だってわかるんだ?」

「黙って、そこも含めて説明するから。

 ちなみに、今はどこに向かっているの?」

「……分からない。一応、プラヤ市に僕が営んでいるガンショップがある

 けれど、そこに帰るのは危険なのかな?」

「そこの人通りは?」

「少なくはない。二、三人は必ず通りにいる」

「じゃあ、そこでいいわ」


 「出来るだけ、スピードをあげて」と彼女は命令する。それを聞いたファーストはスロットルを回す。フォトンムーブメントが加速を始めた。


「それで、どこから話したかしら?」

「……まだ、何も話してないよ」

「そう、そうだったわね。

 まず、自己紹介を始めましょう。

 私は戦闘用アンドロイド。型番は『破壊者デストロイヤー

 ——異星人《あなた達》の宇宙船を破壊するために造られた兵器よ」


 ファーストは思わず、ブレーキを踏む。驚きのあまり体制を崩しそうになるが、そこは『破壊者デストロイヤー』がうまくバイクを支えたため、ファーストは怪我こそしないものの、心に大きな衝撃を受ける。バイクから降りて、ファーストは彼女を問い詰めた。


「は? え? なんだって!?

 僕たちの宇宙船を破壊するために造られた?

 じゃあ君は僕の敵ってことか?

 っていうか、僕たちの存在はすでに知られているのか?」

「一度にいくつも質問をしないこと、そして最後まで話を聞いてから質問をのがこの星の『マナー』というものよ。覚えときなさい?

 いいこと? 『あなたたちの襲来は予期されていた』けれども、知っていて、今生きているのは私だけ――あとは全員死んでいるわ」

 

 ファーストはしばらく考えた。「死んでる」が、何かの比喩のようには見えない。それに、彼女の思考もよくわからない。何が目的なのか? ファーストの疑問はそれだった。彼女は話を続ける。


「あなたはこの国の政治システムについてご存じ?」

「まあ、多少は。この星にきて二番目に勉強したのがそれだ」

「じゃあこの国の対立関係も?」

「科学省と生産省のことか。知ってる

 ……ただ、すまないけれど、僕達には「対立」という概念を知識として知っているだけで、概念として把握できているか、確信を持っていない」

「『対立』が理解できないって……どういうことよ?」


 それを聞かれたファーストは気まずそうな顔をして、首を振った。「気にしないでくれ」と彼が言うと、彼女は顔を近づけて、その真意を探ろうとしたがファーストは彼女を突き飛ばしてそれを拒否する。


「まあ、いいわ。とにかくバイクに乗って、走って」


 ファーストは彼女に促されるままバイクに跨ってスロットルを回す。もう一度、フォトンムーブメントは加速を始める。それに合わせるように破壊者デストロイヤーもバイクのボディを叩き、話しを再開させる。


「私の動力源はこれ(・・)よ。

 これはこの星のエネルギー革命を起こした」

「フォトンとその制御装置か。

 たしかに、それの秘めてる可能性は無限に近いのかもしれない」

「そうね、そしてそれを支配できれば莫大な利益を生むことは誰だって明白よ。実際、こいつは全てのエネルギーを駆逐したのだから」


 そう言って彼女は、墓標のように立ち並ぶ石油プラントを眺めた。もはや過去の遺物(レガシー)と化したこれを巡り争いが起きた。けれども今となっては誰も見向きをしなかった。


「フォトンムーブメントの利権を巡って対立が起きている」

「そう、そして私の開発者はその『対立』に巻き込まれて亡くなった――だから、復讐の機会を計っている」


 ファーストは思わず肩を震わせる――これが、この星に来て初めての『恐怖』という感情だった。その声は彼女の肌を思わせる、白雪のように冷たい。しかしその言葉には憎悪が潜む。それは彼女の瞳のように轟轟と燃え上がっていた。


「アンドロイドなのに、人を殺すのか?」

「親を殺されれば犬だって人を殺すわ。憎いから殺す――おかしいところなど、一つもないでしょう?」

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