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Luckey number 11(ラッキーナンバー11)④

 ファーストは自分の店である「ガンズ&ファースト」に到着した。藍色の壁に付けられた乳白色の古びた換気扇が、歓迎でもするかのようにガタガタと音を鳴らす。


「随分と寂れた店ね」

「余計なお世話だ……。

 それに、優しい人から好意で譲ってもらった店だ。文句はないさ」


 ファーストは彼女を二階に案内する。一つのテーブルと一つの机、冷蔵庫、型遅れのガスコンロ、流し。これがこの部屋にある全てだった。他の部屋へと繋がる扉には何があるのか、破壊者デストロイヤーが訊ねると、彼は「店の倉庫として使ってる。数丁の銃と、弾薬が置いてあるだけ」と答えた。


「それで、君は復讐を考えている。科学省と生産省に」

「ええ」

「けれど、その事実が「僕と君が敵対関係にならない」という理由にはつながらないように僕は思えるんだけど」

「いえ、つながるわ。

 私はアンドロイド――いや、正確に言えば戦闘人形。

 命令されない限り勝手な行動はできないように造られている。ましてや『あなた達』の船を破壊するなんて、人類の命運を左右するような行動よ。命令がなければ出来るわけがない。

 じゃあ、問題。その『命令権』は誰が持ってるでしょうか」

「……科学省と、生産省ってこと?」

「よくできました」


 彼女はにっこりと笑ってそう答えた。


「そういうことよ、異星人。

 あなたが私に協力してくれれば、それは結果的にあなたの星を守ることにつながる。悪い取引ではないでしょう?」

「信用していいのか?」


 「もちろんよ」と彼女は笑った。ファーストは考える「僕は騙されているのかもしれない」と。そう考えて、窓辺に移動して、外を見る。宇宙船は空に浮かぶ。ファーストは太陽を見て、今の時刻を計る——この部屋に時計はない


 11時28分と11秒


 ——……ラッキーナンバーは11だったか。ファーストは先ほどの殺し屋の言葉を思い出した。幸運の数字。「11」時と「11」秒だ。これはおそらく、何かのお告げに違いない。そう思った彼は、彼女の紅い瞳に燃える可能性に賭けることに決めた。


「ならば僕も賭けよう、君のその復讐に。

 力を貸そう。それが僕たちのためとなるのならば」

「賢明な判断よ。後悔はさせないわ

 それじゃあ、これから私のことは『ディスト』と呼びなさい」

「ディスト?」

「ええ、私のことを知っている人間がいるかもしれない。

 それに、デストロイヤーなんて名前、女の子らしくないでしょ?」


 ファーストはエイリアンなので「女の子」らしい、という意味がわからなかった。しかし、彼はその名前が、どこか彼女にピッタリのように感じ「なるほど、すごくいいね」とほめる。


 彼はこの時「名前」というものに強く惹かれた。彼の「ファースト」という呼び名は管理番号に過ぎない。一番初めに地球に降り立ったから「ファースト(一番目)」ただそれだけだった。


「何か浮かない顔してるわね?」

「いいや、全然さ。よろしく『ディスト』

 僕は君を助けよう。君の復讐を」

「ええ、よろしく。異星――異星人ってのも味気ないわね

 そういえば、あなた。名前は?」

「無いよ。僕達の星に名前という文化はない。ただ、この星では一応『ファースト』って呼ばれてる――僕はそれを気に入ってないけれどね」


「そう。じゃあよろしく、ファースト。

 この奇妙な縁に誓って、私はあなたの『武器』となりましょう」


 そう言って彼女は微笑んだ。悪魔的な笑み。

 白の髪に、印象的な紅い目。

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