The owl don't sleep(梟は眠らない)①
梟は眠らない。
どこかでそのような記述があった気がするのを、科学省所属であるライオット・バルトリーは思い出した。真夜中の一時だというのに、一人の男――黒い、フード付きのコートが特徴的だった――は興味深い様子で、地面を這うように見つめる。それは梟が獲物を探す時のように感じた。
「いやあ、ライオット君。実に興味深い。
ハハハ全く。冷や汗をかいてしまう。ハハ」
コートの男は立ち上がると、笑いながら、ライオットにそう話しかけた。「興味深い」という言葉は比喩や冗談ではないようで、彼には凶器的な笑みを浮かべている。ライオットは「なぜ?」と訊く。
「なぜかだって? 君。この死体を見たまえよ。
この死体の傷口を、断面を、その死に様を観察したまえ」
コートの男に促されるまま、ライオットはその死体を観察する。それはどうやら、この砂漠にのさばるヤクザくずれたちのものだった。
致命傷と思われる腹部の損傷は、まるでドリルでかき回されたようにぐちゃぐちゃになっていて、ライオットは思わず、今日の昼に食べたミートパイを思い出してしまった。「興味深いだろう」と男は笑う。
「僕はこのプラヤ地方で発見されている総ての原生生物、自然動物を網羅しているつもりだが、この傷はその全ての特徴のどれも当て嵌らない。次に考えられるのは軍事兵器によるものだが……君、どう思う」
「俺にもわかりませんね。
知る限り、このような傷ができる軍事兵器は存在しません」
「『Exactly』
僕もまったくの同意見だ。だが、そうなると、うん。こいつらを殺した犯人は——おそらく、この世のものではない。僕らの常識の外れにあるものだろう」
「常識の外れ?」とライオットは心の中でつぶやく。理詰めで物事を考えるこのコートの男から、そのような単語が出てくることに、ライオットは違和感を覚える。
「ハハハ、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をするね。君。
けれど仕方がないだろう。そう考えられないのならば、そう考えるしかない
たしか、この近くでパトロール隊の死体が発見されているんだろう。次はそちらの現場に行こうじゃないか。案内してくれ」
ライオットはコートの男の命令にしたがって、ここから数百メートル離れたところにある戦闘現場だったようなところへと案内した。しかし、そこはもうすでにあらかた片付けられており、書類の手がかりの他にめぼしいものはないだろう、と彼は男に告げた——コートの男は探偵だった。
「ふむ。しかしこうして訪れてみると、実際に書類だけではわからないことは多くあるものさ。たとえば——ほら、これなんかそうだろう?」
探偵がライオットは小さな声をあげる。それは空薬莢だった。
「なぜ見逃していたのか、それを追求するのはよそうか。
しかし、これだけでもいろいろ分かることはあるぜ。
たとえば、見たまえ、ここには五発分の薬莢がまとまって落としてある——にも関わらず弾痕を見ろ、これらのほとんどはフォトンレーザーによるものだ」
「実弾を使う武器の発見は報告書にはありませんでしたね」
「ハハハ、こいつは愉快だぞ。
プラヤ砂漠のこのあたりで、何か一悶着あったことは間違いないようだな」
探偵は満足げに頷きながら、薬莢を袋の中に入れ、それをライオットに渡した。夜の砂漠には探偵と彼の他には誰もいない。
「それにしても寒いね、夜も更けると、ここは昼とは全く別の顔を見せる。
室内に行きたいな。そう……——とかさ」
それを聞いた時、ライオットは彼の正気を疑った。彼は自分の上司から「探偵『ワイズマン・クルーパ』という男はプラヤで2番目に危険な男だから、お前がしっかりとブレーキングをしろよ」と注意を受けたことを思い出した。
「ワイズマンが二番ならば、一番は?」とライオットが訊ねると、その上司は苦笑いをした。それからバツの悪い顔で「お前だよ」と答えていた。




