39、今思えば、一閃の守護者
モルテーナ皇国での戦いが終わった後、予想通り色々な事が問題となった。
魔物を集団で狂わせるニニルケルナは 同時期にでも発生する可能性があること。突然現れることからみて 転移してきた可能性があり、それが異世界なのか 他の大陸からなのかは不明。今まで以上の警戒が必要な旨が各国に伝えられていた。
次に、アトラントの大地が竜の生息地である事がハッキリした事。これによって今後 地竜などが降りて来る可能性も高く、要所には砦が築かれる事となった。当然 飛竜にも対応できる作りになる。
レンジの保護下に入った有翼人のハーハトエルとナナエルの姉妹は 朽ちていた都の最後の住人ではあるが、アトラントの地は広い為、他にも生きている同族が居るのかも知れない可能性が有る。幸いな事には色々な種族が存在する世の中である為、彼女達を差別するような風潮は無い。
あの一件以来 姉のハーハトエルは 鈍感なレンジでも分かるくらいに彼を慕っている。他の嫁たちとも仲良くなり 外堀はとっくに埋め立てられていた。妹のナナエルも大変に懐いている。サトミと歳も近く色々と将来のことを話しているようだ。
モルテーナ帝国の宮廷魔術師であるススルナは、「両国の魔法研究をする」という表向きの理由をたてにミケランティアの街に滞在している。今はまだククルチアの屋敷に賓客として迎えられているが、彼女もレンジとのデート券をめぐって熾烈な競争に参加している以上 その心中は押して知るべしである。
そして、何と言っても一番の問題は 古代竜と契約までしたレンジ本人の事となる。
その点だけでも危険な存在として恐れられるには充分であるのに、彼は災害とまで言われる黒いドラゴンを一閃で葬ってしまう力を見せた。
この驚愕の事実は その日のうちに各国へと伝えられ、全ての国が全力で自国に取り込むためにスカウトマンを派遣してきた。
次から次に押し寄せる訪問客にウンザリした彼は、ククルチアに公式の場をもうけてもらい 自分の立場をハッキリと公言した。
「俺は賢者ローレシアから冒険者として育てられた 彼女の弟子だ。だから どの国にも仕官するつもりは無い。今後は 俺の妻達が暮らすシンビジウムとミケルティアの街を拠点として行動する予定だ。勿論、何者が攻撃して来ても全力で彼女達を守ってみせる」
レンジが自分の立場をハッキリとさせたために 一応 勧誘騒ぎは収まっていった。
まぁ、そのせいで今まで以上に彼は女性達の憧れの的と成り、嫁希望者が増大してレンジを困惑させた。
シンビジウムの街と角塔は 絶対的な守りを得た事で、何処の国も手が出せない場所になった。
一番安全な街としても知れ渡り 人々が集まったため大きな都市へと変わって行く。
押しも押されぬ経済と文化の中心となり、やがて サトミが次代の賢者として頭角を現す事で さらに立場は磐石なものとなるだろう。
ミケルティアの街も同様で 人口が増えたため、街を囲う城壁を大きく拡張しなくてはならなかった。以前は困窮し、存在する事にも苦労していた街は 今では楽に城壁拡張工事を行えるほど豊かに成っていた。
優秀な人材も集まり、領主のククルチアが妊娠して産休に入っても何の心配もいらないほど 安定した街になったのだ。
そして、当のレンジは・・・
「あっ、・・あっんっっ。レンジさん、もう一度しますか?3回目ですよ」
「あぁ、ごめん。疲れたか?」
「いいえ、私は嬉しいのですが、貴方の体が心配なんです。その・・2日おきに女性の相手をしているのですから無理をされているのではないですか?」
「そか、ありがとな。でも、俺も幸せなんだ。今くらいの年齢が一番女の子を好きになるらしいからな。体の事は心配ない」
「そうですか。なら離しませんよ、今度は何時こうして愛せるか分からないのですしね」
「あー、その点はごめんな。なるべく増やさないようにしてるんだけど」
「ふふっ。私も後から仲間に入れてもらったんですから、独占したいなんて我が侭は言いませんよ。でも、今は私のものです。ミャウラさんなんて一回で妊娠してしまったので残念そうですしね。後悔しない様にいたしますわ・・・んっっっ」
ローレシアが心配した通り、レンジは沢山の嫁を楽しませる事に時間を取られていた。幸いな事には まだ高校に通っている年齢で一番Hがしたい年頃であったため、本人も苦労とは考えずハーレム状態を楽しんでいた。
地球に居たなら 欲望をかかえて悶々としている事は間違い無い。変な世界に迷い込んでしまったが 彼にとってはパラダイスであり、最高のリア充であった。
コンコン☆☆ コンコン☆☆
「主。お楽しみの所 申し訳ないが、緊急連絡が来ている」
「ジィサマか?問題ないよ。入ってくれ」
2人とも満足して そろそろ休もうとしている時に連絡を持ってきたのは、何と人型になった古代竜のジィサマである。
「ジィサマと名づけたのは大失敗だよな・・ほんと」
「名前は変更できない。主に付けてもらった名前だ。私は気に入っている」
そう・・古代竜で喋り方も渋かったので 当然のように爺様だと思い込んでいたのだが、人になったジィサマは少女であった。今はレンジの家でメイドをしている。最初 「詐欺だ」とレンジが騒いだが 種族的にはやっと今位の年齢になれたそうな。それまで掛かったのが何年なのか、は教えてくれなかった。とんでもない長寿な生き物である。
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もうすぐ夜が明けようとする頃、学術都市シンビジウムを囲う城壁の上には沢山の冒険者と 角塔に勤める一騎当千の少女達が武装をして集まっていた。
「ミアーシャ様、全ての準備が整いました」
「よし、そのまま待機するように通達しろ」
塔の安定により ミアーシャも本来の落ち着きと冷静さを取り戻し 女王もかくやという風格を身に付けていた。
さらに、塔では子を授かった少女たちも多くなり 母親としての力強さを持つようになってきた。子を守る母は強い、塔の戦力は大幅な底上げが成されていた。
「ミアーシャ様、魔法部門の子達が出撃許可を求めております。離れているうちに殲滅魔法を使いたいとの事です」
「待てと伝えろ。気持ちは良く分かるが、それをやると集まってくれた者達に報酬を与えられなくなるからな」
「・・今回の大群は恐ろしい数です。皆が不安に思っておりますが・・」
「案ずるな。ふふっ、来たようだな。あれを見れば納得するだろう」
目で確認できるのがやっとの距離なのに 既に伝わってくる威圧は居並ぶ猛者達の視線を一斉に引き付けていた。
「あのシルエットは古代竜のジィサマ。レンジ様が来て下さった」
「何と、黒竜討伐の英雄が来ただと」
「一閃の竜殺しが来たぞ」
「「「「キャーァァァッ、レンジさまーーー♡」」」」
一部 場違いな歓声に迎えられて 古代竜に乗ったレンジとマーマレーナが城壁近くに舞い降りた。示し合わせたように少し離れて転移ゲートが開かれ、妊婦以外の動ける嫁たちがゾロゾロとでてきた。
それだけで国と戦争が出来るほどの火力がある優秀な女性達だ。
首にレンジを乗せたまま城壁に古代竜が近づくと 見慣れない者達は思わず腰が引けてしまう。
「ミアーシャさん、遅くなったけど参上したぜ。作戦を教えてくれるか?」
「指示はこれに書いてある。頼んだぞ」
計画を書いた紙を手渡すあたり、最初からレンジが来る事を想定しての作戦である。指示書を見たレンジは
軽くタメ息を付いてジィサマにも指示を伝えた。
この時点では 多くの者達がドラゴンブレスによる殲滅を予測していた。しかし、古代竜はレンジ達を降ろすとアッサリと飛び立ってしまった。
「やれやれ・・最近 人使いが荒いんだから」
ブツブツ言いながら 彼はレナだけ引き連れて 魔物の大群が姿を現しだした森の方に歩いて行く。
「レンジさん?」
「魔力の限界ギリギリまで使う。後のことをよろしく頼む、レナ」
「おまかせください。あなた」
既に視界を埋め尽くすほどの魔物たち。その数は一万を超えるだろう。中にはオーガやサイクロプスという手強い相手も確認できた。
この日、城壁の上から高みの見物になってしまった者達は 生涯の語り草になる光景を目にする。
津波のように押し寄せていた万を超える魔物たちは レンジの居合い切りのような一閃の後、並べたドミノが倒れていくが如く、波が引くようにバタバタと倒れ付してしまった。
途中にあった木々は一斉に葉を落とし 見渡す限りが魔物と枯れ木で埋め尽くされていた。どんな大魔法を見せられるよりも恐ろしい光景である。
そしてレンジも腰が抜けたように その場に座り込んでいた。
事情を知らない見学者が心配する中、後ろに控えていたマーマレーナは レンジに駆け寄ると人目を憚らず濃厚なキスを始めてしまった。
「「「あああーーーーずるい」」」
誰ともなく 多くの少女達から不満の声が上がるが、彼女以外は誰もレンジに魔力を供与することが出来ないのだ。これこそがマーマレーナが掴み取った自分だけの立ち居地である。この上ない嬉しい役目を得て 彼女のコンプレックスはすっかり消え去っていた。
「集まってくれた勇気ある冒険者の諸君。君達には 冒険者ギルドの指示の元、倒された魔物の処分に協力してもらう」
場に微妙な雰囲気が流れる。後片付けの為に集めたのか・・と。
「見ろ、あそこには山のような数の魔石と肉と そして有効に使える部位が転がっている。商業ギルドも気合を入れて仕入れをしろ。冒険者ギルドは集まった収益の3割を受け取れ。残りは集まってくれた勇者達に均等に分配するように。我ら塔の分は考えなくて良い。不要な魔物の死体は集めて置け、ドラゴンが喜んで食べてくれるからな」
皆が言葉の意味を理解するのに少なくない時間を必要とした。何故なら、日々生活する為に何匹かの魔物を仲間と協力して狩っている者たちである。目の前には一生掛かっても倒せない数の魔物が転がっている。
いったいどれ程の金額になるか想像する事が出来ないのである。
「日ごろ街の為に戦ってくれる報酬だ、とっとと処分して今夜は宴会でもするが良い」
ざわ
ざわざわ
「「「「うおおおおーーーーーーすげーー」」」」
「「「シンビジウムばんさーい」」」
「野郎共、俺たちが一番乗りするぞ。いそげーー」
その後は街をあげての祭りのような大騒ぎとなった。本来なら三日は軽く掛かるであろう魔物の処理を一日で終わらせるほど 報酬に喜んだ者達が熱狂して張り切っていた。
現況である魔物のニニルケルナを焼き払い、戻ってきた古代竜は大量の魔物の肉に大満足である。
有言実行して街を守り抜くレンジの姿は 彼の持つ力に対する恐怖をいつしか尊敬の念に変えていた。
それとは別に、サトミと未開地の探索にも足を運び 塔に有る世界地図を大きく広げていった。
彼は多くの家族に恵まれながらも 最後まで冒険者として生きぬいた・・とだけ 記録書の最期には記されている。
おわり
読んで下さった皆さん、ありがとうございます。
書きたかった剣士の物語を終わらせていただきます。




