■ 犠牲は つきもの
ここは、とある国家レベルの秘密研究所。
責任者の教授と、その助手が激論を交わしている。
「教授。この実験を行えば、一部の動植物に深刻な影響を与えます」
実験中止を訴える助手に向かって、
「科学の発展に、多少の犠牲はつきものだよ。君にだって、それくらいわかるだろう」
と、教授が一蹴した。
二人の論戦を察するかのように、モニターがオンになり、誰もが知っている政治家が話に割って入る。
「そろそろ実験開始の時刻だが、準備は良いかね?」
太々しい態度で、恰幅の良い男が言った。
「はい、勿論ですとも」
今までの表情とは、打って変わった笑顔で教授が応える。
「では、早速に始めます」
助手の制止を振り切り、教授が実験スタートのボタンに近づいたその時である。教授たちは、いや地球全体が白い光に包まれた。
そして神々しいまでの光が収まったその後には、地球はもちろんの事、太陽系全ての惑星が跡形もなく吹き飛んでいた。
消え去った星系から離れること数光年。そこには異星人のスペースシップが、悠々と星の海に浮かんでいる。
「総督、今の実験で複数の惑星が消滅しました。実験は成功です。
しかし対象星系の第三惑星には、未開ながら知的生命体も居住していたようですが……、本当によろしかったのでしょうか?」
いくらか良心の呵責を感じている副総督が言う。
「科学の発展に多少の犠牲はつきものだよ。君にだって、それくらいわかるだろう」
実験責任者である総督はそう言って、部下を侮蔑するように見下した。
【終わり】




