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■ カタログこわい

「あぁ、まただ。いったい、あとどれくらい届けば止むんだろうか」


俺は庭先の郵便受けに入った、妻宛の商品カタログやダイレクトメールを見て毒づいた。


彼女は通販の鬼とも言える女であり、テレビ、雑誌、ネットを問わず、とにかくカタログや資料の請求をしまくっていた。


”しまくっていた”と過去形なのは、数年前に彼女はいなくなり、失踪届を出しているからだ。しかし受取人のいない郵便物が、今だに我が家へと舞い込むのである。もちろんその都度、受け取り拒否の手続きをしてはいるものの、それが後を絶つ事はない。


俺はカタログが届くたびに、心をえぐられるような思いをした。失踪した妻を思っての事かって? 違う違う。それはまるで、郵便物から「ちゃんと受取人に渡せ、渡せ!」と、責められているように感じるからだ。


「もう、いいかげんにしろ! 受取人は、確かにこの家にいるよ。でも、渡せるわけないじゃないか!」


俺はカタログを乱雑に放り投げる。


そして、足元の床をドンドンと踏み鳴らしながら、


「お前は、徹底的に俺を苦しめる女だな!」


と、その下に埋められている妻に向かって怒声を浴びせた。




【終わり】


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