第29話紫苑とルーナの二人旅 改
少し、というか大分駄文です。あまり気にしないで!
天鬼紫苑とルジアーナ・ルベリオスが街から出て数日、2人はテレス達のあとを追って森を進んでいた。
道をゆく時にたまに自然とは思えないような隠れ家?のような植物で囲まれた所があったのでテレス達が寝泊まりしたんだろうと言う考えを2人で話していたりした。1回だけ夜だったので泊まったりもしたが。
危険な所ではあるために普通なら死を覚悟して、魔物との戦いをできるだけ避けて通るところなのだがこの男、それをせずに今、ルーナに弓を教えていたのだ。しかも実践で。魔物に向かって。
獣目、イノシシ型の魔物。名をグリーンボア地域によって属性が変わる獣種。こいつは風を纏って突進してくるのが特徴だ。どこにでも居る獣で狩られやすいが、スピードもあるので遠距離型の弓で戦うのは難しい。そんな相手に紫苑はルーナを戦わしている。
少し開けた場所で弓もまだ撃ちやすい。しかしその分、相手も突進がしやすくルーナは避けるので精一杯だった。紫苑はそれを少し離れた場所で見ている。
酷い男だ。と言ってもそもそもはルーナが鍛えて欲しいと頼んだ結果ではあるのだが。
遡ること街を出て1晩明けたころ、少し休んだ後に再び森を進み出し、歩いているとルーナは色んなことを話してきた。森のことや魔物のことなどだ。その中で魔物が出てきたらという質問に紫苑は「俺が斬る」と一言だけだった。つまりは守られるだけということになるのだがルーナは少し前に戦えるようになりたいと言ったばかりだ。そんな自分が守られるだけと言うのはそれを否定しているようで嫌に感じたのだろう。そのためにどうにか戦えるようになりたいと思うのだが、弓を教えてくれると言っていたクリスは現在離れてしまっている。そのために教えて貰えるとしても紫苑だけ、だからルーナはすぐに紫苑に教えを乞うた。それを紫苑は「俺のはキツいが良いのか?」そういうとルーナは頷き、快く快諾した。
まずは身につけていた短剣の扱い方をと思ったのだがそれは簡単に終わった。それは紫苑の国のものと少し違うのでそのまま教えるとその短剣自体を活かす戦いが出来ないからクリスに教わると言うことになった。けれども動きはすぐに理解出来た。逆手持ちで暗殺者のようなものだったけれど。上達はしたけどもきついものであった。
ほとんど実戦形式で持ち方を教えたあとは紫苑に斬りかかりそのまま紫苑が避けたりして動きを教えるくらいだったが紫苑は筋が良いと褒めていた。
その次に弓、まずは眠る前の夜に手ほどきを受ける。引き方、立ち方などを教わり、最後は近くの木を的にして練習をする。これを3日ほど繰り返した。
そして今日、たまたま出くわしたグリーンボアを見て食料にしようと考えた紫苑はルーナの練習にと思って狩りをさせようと考えた。
「ルーナよ。あの猪が見えるか?」
「うん」
「あれを狩るぞ」
「えっと、練習のため?」
「それもあるが食料のためにもな」
「…うん。わかったよシオンさん」
ルーナは納得したように言うと準備をした。と言っても弓と矢を番えただけだが。
やらなかったら上達もしない。それに食料ずっと非常食を食べるのも行けない。紫苑の袋に入っている食料にも限りがある。いつまでもそればかり食べる訳には行かない。
「準備は良いか?」
「はい!」
「息をゆっくりと吸い込め。ゆっくりとよく狙え。やつはまだ俺らに気づいておらぬ。行けると思うなら射るのだ」
紫苑に言われてゆっくりと息を吸い込むとルーナは矢を引いた。ゆっくりと落ち着いて教えてもらった通りの動きをした。そして目一杯引くと猪に合わせる。
矢と相手の頭が重なり、矢を放とうとするが相手の目を視界に捉えた瞬間、ルーナは矢を離せなくなった。そして、何もしていない相手を傷つけるたいう行為に恐怖し、手が震えてしまった。
(私は命を奪おうとしてる?)
それに今更気づいてしまった。彼女は今まで何回も生き物が死ぬ光景は見てきた。しかしそれを下したのは自身ではなく他の誰か。例えばクリスが殺していた魔物。もしくは自分や親友の命を狙っていたもので死んだのは聞いたものの彼女自身は気絶してみていない。
悪意なきものを殺す。そう想像しただけで体が固まってしまった。今視線の先にいるのはただご飯を食べている1匹の生き物なのだから。
今まで感覚が麻痺していたルーナだが自分が殺すとなって初めてその重さを感じ取った。
紫苑はそれに気づきながらも何も言わなかった。それは必要なものだろうと感じたからだ。殺すことに何も感じなくなっては行けないと紫苑の考えだ。
ルーナは止めていた息と苦しくなりどうすれば良いか迷い始めた。
そのとき、風の向きが変わってしまった。たまたま風下にいたため鼻の良い猪目のやつから隠れられていたが風上になったことでバレてしまう。そしてそのせいで猪はこちらを勢いよく向く。それに驚きルーナは思わず手を放す。
離された矢はふにゃっと揺れて飛び猪の眉間とはかけはなれた方向に飛び何とか体の端をかするだけで終わった。
「あっ」
かすった矢が地面に突き刺さるとルーナは失敗したことを理解する。その事で自分の至らなさと怒られてしまうのではないかと言うことがよぎり俯いてしまう。しかしそんなことはなく頭の上には少しゴツゴツしながらも優しく手が添えられた。
「そなたは優しいな。その気持ち忘れるでない。それに初めてなら仕方あるまい」
そう言ってルーナのか頭を撫でたあと、紫苑は立ち上がり刀を抜こうとする。それだけで何をしようとするかすぐに分かる。
しかしルーナはそれを腕を掴んで止めた。
「……どうした?」
「…まだ出来るよ」
「そのように震えておっては続けることは困難だ。お主はしっかりと成長出来ておる。後は任しておけ」
「命を奪うことの重さは理解したよ。私は何にも理解してなくて武器だけ持って力を持った気でいただけだったんだ。このままだったら私は同じことを繰り返しちゃう!いざと言う時に動けない!また守れない!だから私はここで引いちゃったらダメだとおもうから…だからお願い…シオンさん。僕にやらして」
見た目はただ命を奪うことに恐れ、震えてしまっている少女。けれどその言葉からは強い意志が感じられるものだった。
紫苑は少し悩んだ。
「やれるのだな?」
「やって見せるよ!」
「そうか。ならひとまずは離れるぞ」
「えっ?今すぐじゃないの?」
「あれを見ろ。先程まで警戒しておったがこちらを捉えて攻撃してこようとしておる」
そう言われてルーナはグリーンボアを見る。グリーンボアは今にでも走ってこようとしていた。
「うん。一旦にげよう!」
2人が走り出すと同時にグリーンボアは風を纏って走り出した。
森を走っていると景色はなかなか変わらないのだがすぐに開放感がある場所に出た。そこは何もない場所だった。木々もなく、水もない砂だけのような場所だった。
気づけばグリーンボアは見えなかったが森の中から枝が折れる音が聞こえていた。
ルーナはそこで止まり、弓を構える。
「シオンさん。ここでやるよ」
「わかった。気をつけろ」
そう言うと紫苑はこの何も無い土地の端の方に移動する。
間もなくグリーンボアは現れた。どうやら相当怒っているようでルーナを見た瞬間、相当な大きさで鳴き声を上げた。
グリーンボアはすぐに目の前に居たルーナに標的をロックオンすると突っ込んでくる。
風を纏っていてスピードも早く、相当なものだ。少し戸惑ったルーナは矢をいることも出来ずに避けることを強制させられる。当たれば致命傷だ。そしてそれを何度も繰り返す。紫苑の指導の賜物でもある。そんな時突然、グリーンボアは転けた。そのために時間に余裕ができる。
(変われないままなんて嫌だ。だけどそのために殺すなんて私はしたくない。これは生きるための殺し)
猪との距離にしてあと30メートルほど。グリーンボアはすぐに立ち上がりこちらに突進してくる。ルーナはそれを外の情報として一旦無視して深呼吸をして矢をゆっくりと引く。今の自分では早く構えたとしても上手くいらないと思ったからだ。
矢を引くとやはり先程の恐怖が自分を襲う。また震える。
(私は命を奪う。その重さを忘れない。ごめんね。あなたの命、貰うよ)
震えたままでは矢は当たらない。そこでルーナは矢を引いて、直前まで待った。
相手は風を纏っていて、その威力は相当なもの簡単には崩せない。だから纏う風の中心を狙う。それは頭。そこだけは無防備だった。
目と鼻と先という距離にまで近づいてきた。
「今だ!」
ルーナが矢から手を放す。勢いよく放たれた矢はすぐにグリーンボアに突き刺さるが、それと同時に彼女はグリーンボアにぶつかり吹き飛ばされる。空中に浮きながら吹き飛ばされ浮遊感が来るがそれよりもおなかにダイレクトに当たったために吐きそうになるながら痛みをその身にウケる。痛さで顔が歪む。おそらく骨がいだたのだろう。
(これで地面に落ちるのは嫌だな)
けれども浮遊感はすぐに消えた。代わりに力強い腕の感触が伝わる。紫苑のいた方向とは違ったはずなのにすぐにこられた理由を考えられるほどルーナに余裕はない。
「あ、ありがとうシオンさん」
痛みで声が上手く出せなかっが何とかお礼を言ったルーナ。それに対して紫苑は返事をする。
「良い気にするな。それよりも良くやった」
「あはは、ありがとう。上手くできてた?」
「…上手くは出来ておらぬ。大袈裟に動きすぎだ。転がるよりもあれは軽く足で避けてから射れば痛みもなかっただろうに。だが初めてにしてはよくやった方だ」
「あはは、次はもっと上手くするよ」
いつもの軽口もなく、ルーナは率直に言う。
そんなとき急に地響きが起こる。どすん、どすんとなって近づいてくる。
木々が折れる音がしていると森の中から4m程の巨人が姿を現した。
巨人の名はトロール。緑色の皮膚に長い手を持っていた。トロールは住処から離れない。ということはここはトロールの住処のようだ。彼らは住処にものを置かない。というか作ったり、保存食にするなどの頭が無いのですることもない。ただ食ったものは埋めるらしいが。
そんなトロールは住処に人がいるというのに目もくれずに死んでいるグリーンボアに目を向け、嬉しそうに顔を綻ばせた。
「そなたは少し休んでおれ。あれは俺がやる」
「あはは、頼むねシオンさん」
ルーナを優しく寝かした後に紫苑はそのままトロールの方を向いて刀を抜いて歩いた。
ゆっくりと近づいていく。それに気付くことなくトロールはグリーンボアを嬉しそうに口に運んでいた。
「そこの巨人よ。それは俺らが仕留めたもの。お主にやる義理はない」
静かなる森に言葉が響き、風が吹く。
それに反応してトロールは肉を口に運ぶのを辞めて紫苑の方を向いた。その顔は楽しみにしていた好物を取られた猫のように睨んできていた。
「グオォォ!」
トロールは咆哮すると棍棒を棍棒を後ろに構えて突進してくる。それに対して紫苑はその場で止まり刀を抜いた。
トロールが紫苑の前に来るとそのまま走り込みながらその勢いと一緒に棍棒を横に振るった。
勢いよく振るわれた棍棒はその巨体から放たれることもあり、ものすごい破壊力になると考えられた。
しかしその棍棒は紫苑の顔の直前で彼が手にした刀によって止められた。
トロールは困惑した。いつもならこれだけで獲物は全て潰れてしまうか吹き飛ぶからだ。(それのせいで食べ物にありつけない時があるのに気づいていない)なのにいつも食らう生き物よりも格段に小さい人間が自分の自信ある攻撃を止めてしまったからだ。それを理解出来ずに固まっていた。
そんな下に見ていた生き物から突然にものすごい気魄が放たれた。
「先にお主の住処に入ったのは俺達だ。お主がそれに怒るのは致し方ない。だが、それはあの娘が狩ったもの。それを奪うなら死ぬ覚悟をせよ!」
トロールは恐怖した。小さいものから溢れる気魄は力強く、恐ろしい。そしてその背後には角の生えた悪魔のような怪物が見えてしまっていた。
トロールはそのまま自身が持つ獲物をそのまま放り投げるとそのまま回れ右をして走り出し、森の中へと消えていった。その時に転けるがそそくさと逃げていった。
紫苑は放り投げられたグリーンボアを持つとそのままそこで血抜きをした。
そしてその後、ルーナの方に近づいた。
「今日はここで休もうか」
「うん。ごめんなさい。私のせいだね」
「気にするでない。これぐらいは良い。そのうち戦うのにもなれるだろう」
そう言うと紫苑は野営の準備を始めた。
その夜、ルーナも大分回復したようでどうにか話すようになってきた。焚き火を2人で囲み、飯を食らう。今回は回復を促す薬草も少量入れられているのでルーナにも効くだろう。
飯も食い終わり、夜も深くなってくるとそろそろ寝ようと準備する。紫苑は結界を貼っているので安全に寝れる。そして2人して横になったときふと、ルーナが質問をしてきた。
「エルフってどんな人達なの?」
深い森なのに開けている場所なので星がよく見える。そんな星々を眺めながら思案する。
「どんな暮らしをしててどんな人がいるんだろうね。やっぱりリオちゃんみたいな人が多いのかな?耳が長くて、金髪で…」
ルーナが想像を膨らましているのを聞いて紫苑はそれに答えた。
「エルフは様々な髪の色をしておるな」
「様々な?」
リオが紫苑のと言葉に聞き返す。そのようなことが帰って来るとは思っていなかったからだ。
「ああ、エルフの髪の色はその者の素質を表す。赤色ならば炎の精霊と相性が良いといった感じにな」
「へぇーじゃあ髪の色を見ればその人がどんな力を持ってるかわかるんだ。やっばりエルフが精霊と仲がいいって本当なんだね。あれ?じゃあリオちゃんみたいな金髪は?」
「金髪は全ての属性との適正があるそうだ。自分が契約したい精霊と契約できる。気に入られればだが」
「じゃあリオちゃんすごいんだ」
ルーナは感心したように頷くがそこでやはり詳しい紫苑に疑問を抱いた。
「シオンさんはエルフとあったことがあるの?」
「ああ、少し前にな。1度だけ」
「ええ!いいなぁ。私も早く見てみたいよ」
「見たら驚くぞ?あの町は良い」
「そんなこと言わないでよ!余計に気になるじゃん!」
2人はそのまま仲良く談笑するといつの間にかルーナは眠りについた。今日のこともあるし仕方がない。疲れているのだろう。
そんな時、ふとルーナの方に赤い輝きが見えた気がした。
紫苑はすぐに振り向くとそこにはすやすやと眠るルーナだけがいた。
(なんだ今のは?…赤い炎の様な光。気の所為と言うにははっきりとしておった。…確か、あの悪魔にさらわれた時もこのような感じがした気がするが…)
一瞬の出来事で何も見ることは出来ずに疑問だけが残ってしまった。紫苑は火を見ながら考える。しかし答えは出来ることはなく、紫苑は空を見上げるが星など一切見えず、月の光すら届いていなかった。
そんな闇の世界で炎の煌めきだけが世界を照らしていた。




