御馳走は焼き鮭
父は綾子と別れ、J子は綾子の実家に引き取られたそうだ。父がJ子を心配して様子を見に行ったという。綾子の実家は山奥にある粗末な襤褸屋で、近くに養鶏場だが養豚場だががあり、凄い臭いだったという。父が家に上がると、部屋の中に何十匹もの蠅で溢れており、綺麗好きだった父は耐え兼ねて、
「蠅取り紙を買ってこい!」
と怒鳴ったそうだ。買ってこさせた蠅取り紙は、直ぐに真っ黒になったという。父が今まで経験したことのない環境にカルチャーショックを受けていると、綾子の母(J子の祖母)が食事を持ってきたという。
「J子ちゃん、今日は御馳走だよ。」
と言って持ってきた食事は焼き鮭だったそうだ。そこで父はここで生活させるのは可哀そうだと思い、毒虫J子を連れ帰ってきたのだという。父の判断は人の親として真っ当な判断と言えるかもしれない。だが、悪魔に温情を掛けると、その後、どういう事になるかという視点が全く欠落していた。うちの親族は皆、J子に温情を掛けたばかりに一族崩壊の憂き目にあうとは予想だにしていなかった。現代社会に於ける「放置子」と同じである。親に育児放棄された子供を可哀そうだといって助けると、毒虫は際限なく面倒を見て貰おうとする。だから教育関係者によると、不用意に助けてはならないのである。私以外の親族は毒虫J子の事を可哀そう可哀そうと甘やかすばかりであった。特に父の姉、芳子おばさんは。その結果、最期は目を見開いての非業の死を遂げるのである。




