第19話 いつか見る我が家のために
「大活躍だったそうですね」
傭兵ギルドで報酬の受け取り手続きをしていると受付嬢──刺青禿げの父さんはシラルと一緒にいるとおかしくなるので隔離されてしまった──にそんなことを言われた。
中型の空賊船を複数撃沈したし、大物である戦艦を鹵獲したんだから大活躍に鼻高々である。ハイスカイフリートでもほとんど記憶にないレベルの大戦果大勝利!
褒められると素直に嬉しい。
でも何度も鉄火場は勘弁だ。
「ヴァルカさんなら、エスパノーラの外で稼いだほうがいいかもしれませんね。なんだかんだでエスパノーラは治安が良いほうですし」
「僕は空賊と切った張ったより毎日仕事がある輸送とかのが好みですけどね」
「御冗談を」
受付嬢さんに笑われた。
そんなにおかしかった?
「傭兵ギルドはヴァルカ船長とボラタイルに期待しています。いっそうのご活躍を」
「せめて護衛任務でも……」
「傭兵ギルドは護送船団の手分けもしてはいますが、ボラタイルの戦闘能力から優的に依頼される機会は少ないかもしれませんね。逆に大規模な戦闘では、高い報酬での契約と義務をつけるか議論されています」
「えぇ……シラルの習熟もあるんですけど」
「あぁ、そうでした、忘れていました。でしたら護衛船団に組みこんで早急に慣熟されたほうが良いですね。となれば戦力査定に上方修正が必要でしょうか?」
「あまり買いかぶらないでくださいよ」
僕はシラルを見る。
副船長に選ばれたばかりの新人。
帽子を深くかぶるがまだ大きい。
でも、いつかは似合う女になる。
なるんだろうが今じゃあないね。
「どうかされましたか、船長?」
「なんでもないよヴァルカ船長」
そんな僕達を受付嬢が眺めている。
「ヴァルカさんとシラルさんは仲が良いですね。健全な関係性は性能を引き出すうえで必要不可欠な要素です。また危機的状況においては相互に心理面を観測することで補強され、単独での任務遂行と比較して成功率が向上する傾向があります」
「……シラルに関してはまだまだこれからでしょう。それにボラタイルの規模だとまだ乗員が足りないかもです。先の討伐戦では何度も担当を兼業せざるをえませんでした」
「なるほど、では船員の募集も必要ですね」
「まあ急いではいないので大丈夫ですけどね。それに今はシラルを副長にして、ボラタイルについて教えている最中です、新人が増えても手が回りませんから」
「わかりました」
と、受付嬢さんが淡々と続ける。
「提案なのですが私が傭兵ギルドの受付を引退して、砲術長としてボラタイルに乗るのはいかがでしょう?」
「み……」
受付嬢さんが〝本気の目線〟を送ってくる。
「……魅力的ですが今は間に合ってます」
き、訊くべき離しがあるのを思いだした。
受付嬢さんに確認したい話とか!ね!!
「ライザさんがどうなったか知ってますか?空賊討伐のときには前にいたんですが、空賊相手に派手に損傷をおっていたように見えたので」
ライザさんが心配なのは嘘ではない。
帰還組に名前は載っていた。
生きて戻ってきているのだ。
だが頼れる先輩の姿はなし。
ぶっちゃけ行方不明なのだ。
どこかで入院しているかも。
「あ……」
受付嬢さんは気まずい雰囲気だ。
受付嬢さんが困り眉でほほえむ。
「ライザさんのアルテミア号は〝大破〟してしまったらしく……ライザさん個人に4世代先まで残りそうな借金を抱えています……」
……かなりやばい借金なのでは?
戦闘用飛空船だから保険だとか共同出資なんてほとんどないので、一族の資産に組み込んでいるいるとか、金持ちのものとはいえ、ライザさんは僕と同じオーナーだったらしい。
そして空賊討伐で稼ぎに失敗した。
勝利をしても末は破産の典型だね。
「幾ら借金があるとはいえ傭兵で稼ぐにはアルテミアが必要でしょう。ライザさんは復帰できそうなんですか?」
「ほとんど不可能でしょう。アルテミアはドラゴン型ですし修復ができても長い治癒期間が必要な内臓系の損傷があると聞いています。傭兵稼業ができないまま長期間の維持は期待できません」
「……」
生体系飛空船の、泣き所だね。
臓器を気軽に交換はできない。
重傷を負うと時間が必要になる。
機械系とそう修理日数に差があるわけではないが、ライザさんのように突貫で治して、稼ぎながら少しずつ直す無茶は効かないのがドラゴン型の欠点と言えば欠点だよ。
僕としてはなんとかしてやりたい。
同じドラゴン乗りなわけだし……。
それにライザさんもソロなら、うちのボラタイルと組んで、ボラタイルとアルテミアの2隻体制であれば今回のようなリスクでも、対処できる。
1隻でも動けば稼げるしね。
借金漬けで動けないライザさんか。
ボラタイルには乗員が必要だしな。
「ライザさんて今どこかわかります?」
これでまた借金を積むことになるな。
〈第一部・完〉




