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第20話 聖獣失踪事件、ナオミ動く

「……レオン様、いつまで膝に乗せてるつもりよ。緊急事態だって言ってるでしょ!」


王宮の静寂を切り裂いたのは、ツルリン先生の悲鳴に近い報告だった。

なんと、厳重に警備されていたはずの聖獣舎から、希少な『月光鳥』と数頭の幼い聖獣たちが、跡形もなく消え去ったというのだ。


私は、未だに私の腰をがっしりとホールドして「メンテナンス中だ」と言い張るレオン様の腕を、半ば力技でこじ開けて立ち上がった。


「事務職を舐めないで。頭数管理のミスは、私のプライドが許さないわ」


現場に急行すると、そこには狼狽する騎士たちと、荒らされた獣舎が無惨に広がっていた。


レオン様が銀狼の鋭い眼光で周囲を射抜くが、犯人は魔力遮断の香でも焚いたのか、王の鼻ですら「匂い」を捉えきれずにいる。

だが、私の目は誤魔化せない。

私はドレスの裾を大胆に捲り上げ、床に膝をついて一点を凝視した。


「……レオン様、ここ。見て」


「……足跡か? だが、これは世話係の靴跡だろう」


「いいえ。土の種類が違うわ。これは王宮の庭園の砂じゃない。……もっと粘り気のある、北部の湿地帯特有の泥ね。それに、このわずかな『匂い』……」


私は、獣舎の隅に落ちていた微細な繊維を指先で拾い上げ、鼻を近づける。

それは、高級な香水の裏に隠された、鼻を突くような「安酒と獣の返り血」の混じった、ひどく排他的な匂い。


「……隣国の『密猟ギルド』ね。あいつら、事務用品の納入業者に紛れて下見に来てたわ。領収書の筆跡が、やけに荒っぽかったから目をつけていたのよ」


「……ナオミ。貴様、なぜそこまで分かる」


驚愕に目を見開くレオン様を余所に、私は事務鞄から一本の「護身用鉄パイプ(事務用品名目)」を取り出し、バキバキと首の骨を鳴らした。


「受付嬢をやってるとね、怪しい客の顔と匂いは嫌でも覚えるのよ。……レオン様、指示を待ってる時間はもったいないわ。あいつら、まだシマの外までは逃げてない」


かつての「神」を商品扱いする無作法者たち。

私の管理下にある『異世界動物園』の在庫(家族)に手を出した代償は、高くつくわよ。


「……よし、行くわよ。事務職の『棚卸し』の時間よッ!!」


ナオミ、本日十三度目の大ピンチ。

見た目はオンナ、中身は漢姐オトコ

たった一つの真実を見抜くその名は……

ねい探偵ナオミ。

……真実は、いつもひとつ!!」

(つづく)


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