182 ソルの活躍! なんだけど……
パワーアップしたソルの力とは?
『切り取るんじゃなくて、周りを削って細くしたらいいんじゃないかな』
「なるほどー。ソル、これならいけるんじゃない?」
『んー……そうすると支えが弱くなって倒壊しちゃうかもね』
「倒壊すると、どうなるの?」
『地の力が発動して大地が割れる、かな?』
「えー、全然ダメじゃん! だったら、どうしたらいいの―っ!」
しーちゃんが頭を抱えて絶叫した。
「ソル、どうしたら地震を止められる?」
『ここまできたら止めるのは無理だね』
『だったら、なるべく小さくするにはどうしたらいいかな』
『小さくするために爆散してたんだろ? ま、あんまり小さくなってないけどな』
「う、」
「あ、」
私としーちゃんが一緒にダメージを受けて胸を押さえると、ミシェルさんも腕を組んで人差し指を額に当てる。
私たちが落ち込んでいる間に、ミシェルさんが言った。
『ねえソル、君ならこの地の力をなんとかできないのかな』
『え? 俺が? そうだなー。少しなら削ることはできるよ。だけど結構疲れるんだよねー。レナがどうしてもって言うなら手伝ってもいいけど?』
そう言うとソルはチラチラと私の方を見てくる。ミシェルさんが、ソルに気付かれないようにこっそりウインクで合図してきた。
── うん、察した。
「ねえソル、お・ね・が・い。ソルの力、見せて欲しいな」
父さんにする時みたいに、お願いポーズで頼んでみた。すると、ソルがキラキラと輝き出した。
「うわ、眩しい!」
しーちゃんが慌てて目を逸らしている間に、
『レナに頼まれたらしかたないなー。ちょっとだけ本気出すよ、いっけー!』
そう言ってソルが両手を上げると、全身を使って両手を振り下ろす。渦の船側部分に大きな切れ目ができた。
『……チッ、今の俺の力じゃこれだけかよ。おい、お前らも力を貸せ!』
ソルの側に浮いていた微精霊たちが一斉に切れ目に向かう。
『行くぞー、切り刻め!』
ソルがそう言って腕を振り下ろすと、切れ目の外側の部分にいくつもの線が走る。
『もういっちょ!』
ソルが腕を横に動かすと、今度は切れ目に垂直に線が走る。ソルの動きに合わせるように、大きくなった二つの微精霊さんが左右に分かれると切れ目に沿って動いていく。すると、ソルの付けた切れ目がサイコロのように切り取られていった。それを他の小さな微精霊さんたちが運び、海に落とす。
『リリリリリ……』
その時、水の精霊さんが渦の反対側に顔を出した。精霊さんの羽の音に合わせて、水の微精霊が次々と海の中からわくように出てきて、切り取られた地の力をどんどん運び出した。
「すごい……」
見事な連携プレーに見とれていると、
「ソルー、すごいね! どんどんやっちゃってー」
しーちゃんが両手を広げてソルに言った。
『むーりー。これ、疲れるんだって! 何回も続けてできねーよ』
「あ、意外とヘタレだ」
『ちょ、シイナおまえ言っていいことと悪いことがあるだろ! 俺はできるヤツなんだぞ?』
「一回やったくらいで威張んないでよ。あたしらそれを何回やってると思うの。たしかにあたしらよりか多く削ってくれたけどさ、続けてできないんじゃねぇー」
そう言ってため息を吐くしーちゃんに、ソルの顔が真っ赤になる。
『レナ、俺もうがまんできない! やっちゃっていいよね』
「だめに決まってるでしょ!」
途端にソルの頬がぷっくりとふくれる。
『ちぇー、俺だってがんばってるんだぞ! こいつらを使うのだって俺の力を使ってるんだ。なんにもしてないわけじゃねえ!』
『よし、とりあえず休憩しよう。シイナもお腹すいただろう?』
その時、ミシェルさんが言った。するとしーちゃんが、
「うん、もうペコペコだよー」
と言いながらミシェルさんの方へ歩いていく。
「ソル、たくさん削ってくれてありがとう。しばらく時間を置いたらまたお願いできる?」
『しゃーねーな、レナのお願いは聞かないとな。くっそー、今の俺じゃあれが限界だ。中心に行くほど塊がぶ厚くなってるし、どんどん削んの難しくなるな』
たしかにソルの削った跡は中心に行くほど残っている。
『レナ、熱中症にならないように日陰で休憩するんだ。これからどんどん暑くなるからね』
「わかりました」
『あーあ、俺たちも休むかー』
そう言うとソルは海面すれすれまで降りてきて、水の精霊さんと話し始めた。
「れーちゃん、早く食べようよ」
「うん、そうだね」
精霊たちが何を話してるのか気にはなったけど、とりあえず買ってきたお弁当で休憩することにした。
「……今、揺れた?」
「波じゃない?」
食べている間に船が揺れると地震じゃないかと気になる。
『午後からも同じ作業を続ける、ということでいいかな』
「やるしかないっしょ」
『でも、ソルは全部切り取るのは無理だって言ってたよね』
「外に出ている力が小さくなれば地震も小さくなるはずですよね。でも、ここから削るのはどんどん難しくなりそう」
「なんで?」
「さっきの見てたでしょ? 内側に行くほど塊が大きくなってるから、どんどんぶ厚くなってる。一回の爆散でどれくらい削れるか……」
「何回も爆散しないと削れなくなるってこと?」
「うん。それにどこまで削れば地震の規模が小さくなるのかな」
『そのあたりは専門家の姫様たちに聞こうか。他に気になることはあるかな?』
── 不安なこともまだまだあるけど、とりあえず今はできるところから、だよね。削れるだけ削ってしまおう。それには……。
怜奈が何か思いついたようです。
続きもお楽しみに!
それではまた2週間後にお会いしましょう。
皆様に風の守りが共にあらんことをお祈りいたします。