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178 進化したソル

『……あー、まあ、いいや。とりあえずその思念石から受容体を抜く時のことなんだけど、』


 ミシェルさんからの説明を聞いた私たちは、早速試してみることにした。


 途中のコンビニで昼食を買い、昨日と同じ港に着いて船に乗る。


「あれ? 今日は船長さんは?」


 しーちゃんがキョロキョロと船の上を見て聞く。


『いないよ。今日の船長は僕』

「え?」

『言ったよね? 僕船の免許持ってるって。大丈夫、僕にマッカセナサーイ』

「その言い方、すっごく不安なんだけど!」


 船長さんはニコニコと船着き場から手を振って見送ってくれた。


 私としーちゃんの不安をよそに、船は昨日と同じ場所に進んでいく。二回目だからか、揺れもそんなに感じないでいるうちに目的の場所に着いた。


「そんな!」

「え? うそでしょ?」

『元に戻ってるみたいだね……』


 私たちがあんなにがんばって削ったはずの地の力は、一晩で元通りになっていた。


『大きくなってなくて良かったって思おうよ。さあ、急いで始めよう。これは頑張らないといけないね』

「れーちゃん、始めよう! 」

「あ……う、うん!」


あまりのショックに動けずにいた私は、あわてて返事をするとソルを呼んだ。


「ソル、手伝って!」

『はいはーい』


 姿を現したソルを、思わず三度見してしまった。


「え? ソル……だよね?」

『ふふーん、レナ、驚いた? どう?』

「どうって……」


 そこにいたのは、絵本から抜け出した妖精のような姿をしたソル。昨日までは透き通るような全身水色だった姿が、嘘みたいだ。


 水色に波打つキラキラと光る髪に、背中には透き通る四枚の羽根。切れ長の濃い青紫色の瞳は、まるでラピスラズリをはめ込んだよう。人間の瞳とは違い、白い部分がないのでとても大きく見える。四本指は変わらないけれど、一本一本が長く、細い。


 体には不思議な光沢の一枚布っぽいもので出来た服を着ていて、この服も太陽の光の中でキラキラと輝いている。はっきり言ってちょっとまぶしいくらい。


「うわ、何これまぶしくて見てられないんだけど!」

『ああ、ごめん。ついモード解禁しちゃってた』


 そう言うと、キラキラが落ち着き、ソルの姿がより見えやすくなった。短かった髪は背中に届くくらいに伸び、身長も少し大きくなっている。クリーム色の服に身を包み、そこから伸びる手足は白いが、うっすらと青みがかっている。


「おお、ソルが進化したよ!」

『どう? 俺、カッコいい?』


 胸を張るソルにしーちゃんが満面の笑みで答えた。


「うん、すっごくカワイーよ!」


 途端に目に見えてソルが落ち込んだ。


『カワイイ……』

「すごいよ、ソル。見違えるくらいカッコ良くなったね!」


 あわててフォローを入れると、すぐに顔を上げ嬉しそうに私の周りを飛び回った。


『だよね、レナ! 俺すっごく頑張ったんだよ?』

「うん。ありがとう、ソル。今日も手伝ってくれる?」

『もっちろん! 俺、仲間も呼べるようになったからバリバリ手伝っちゃうよー。……ん? ミシェルー、どうしたの?』


 ミシェルさんは、あごはずれるんじゃないかというくらいあんぐりと口を開けて固まっていた。ソルに言われて、ハッとしたように頭を抱えて叫んだ。


『聞いてないよー! 何、ソルどうなっちゃってんの? まんまフェ(妖精)じゃん! 嘘、本物初めて見た!』


 そう言うとソルの間近に寄ってきてジロジロと観察しだした。


『ちょっとちょっと、ミシェル近いって!』

『だって本物の妖精だよ? こんなの次いつ見られるか分かんないでしょ』

『いや、俺珍獣じゃないし! それに俺がレナから離れるわけないんだからこれからもいるし! とりあえずなんかコワイから離れてー!』


 そう言うとソルは私の後ろに隠れてしまう。追いかけようとしたミシェルさんは、しーちゃんに引き戻された。


「はーい、ミシェルさん、とりあえずそこまでね、どーどー落ち着いてー。深呼吸してみようかー。大丈夫、ソルは逃げたりしないからねー」


 そう言ってミシェルさんを落ち着かせようとしている。


 ── うん、まんましーちゃんがいつもおばさんにされてるやつとおんなじだ。これは、放置しても大丈夫だよね。


「すごいね。ソルの姿がはっきり見えるよ。それがソルの本来の姿なんだね」

『ん? まあ、今のところはね。そうだ、レナ。この姿の俺はまた違う名前なんだ。手、出して』


 言われるままに手を出すと、ソルが手を重ねて伝えてきた。


『俺の今の名前を伝えるよ。俺の名はソウェル=ティワ=アルジス=エイムズ。レナの戦士で、守護する者っていう意味だよ。名前を呼んで、名を受けるって言って』

『わかった。ソウェル=ティワ=アルジス=エイムズ。あなたの名を受けます』


 私の思念波がソルを包み込むと、一瞬ソルが光った。


『ねえ、ソル。あなたの名前ってどんどん長くなるの?』

『うん、今はそんな感じ。名前が増えると使える力も強くなるんだよ。今の俺は、この近くにいる精霊なら従わせることができるし、仲間や下僕しもべにすることもできる。レナを助けるために、俺もっと強くなるから!』


 嬉しそうに言うソルは頼もしいけれど、急激に成長したのが少し怖い。


 ── まだ成長するって言ってたよね。ソルって一体……。


『さあ、レナ、シイナ、ミシェル! 地の力をどんどん削っちゃおー!』


 その時、ソルの元気な声が船の上に響き渡った。


「さ、れーちゃん。始めよう! また元に戻らないようにどんどん削っちゃおう」

「そうだね。やろう!」


 ── 考えるのは後。とにかく地の力を削らないと!


 私は気持ちを切り替えて、受容体の準備に入った。

ソルが成長しました。更に活躍してくれそうです。

そして安定のミシェルの暴走(笑)

しーちゃんに押さえられるなんてかなりヤバいのでは?

……はっ、しーちゃんげしっはやめてー!


それでは、また2週間後にお会いしましょう。

皆様に、風の守りが共にあらんことをお祈りいたします。


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― 新着の感想 ―
ソウェル=ティワ=アルジス=エイムズ!なんだか魔法の呪文みたいですね(*^▽^*)地の力が元に戻ってしまっていた時はショックでしたが、ソルがすごく頼もしいです!これならどんどん削っていけるかも? 続き…
ソルの成長に皆驚く。 ここからが本番ですね(*^^*) 続きも楽しみです!!
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