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173 淡路島へ行こう

いよいよ淡路島へ出発します。

 ミシェルさんの開いた口はなかなか閉じなかった。しかも説明していると、途中で考えるのをあきらめたみたいだった。


 ── ちょっと失礼じゃない?


 とは思ったけど、深く追求するのはやめた。


「ねーねー。そんなことよりもさ、明日のことを話そうよ!」


 説明を聞くのに飽きたしーちゃんが言い出したので、ミシェルさんは嬉しそうにその話に乗った。




 その後、博物館に戻ったミシェルさんは私の父さんとしーちゃんのお父さんに私たちをキャンプに連れて行く許可をもらった。たぶん、思念波も使ったんだと思う。父さんはミシェルさんの手を強く握って、涙ぐみながら私のことを頼んでいた。


 家では当然()めたけど、最終的に思念波を使ってお願いし、納得してもらった。そしていつも通り、たくさん母さんからは注意をもらうことになった。


 なんとか明日からの宿泊許可をもらった私は、さらに母さんたちにとっておきのお願いをすることにした。


「父さん、母さん。あたし、妹か弟が欲しいの」


 いきなりのお願いに二人ともビックリはしていたけれど、前向きに考えてくれることになった。


 ── 実はこれ、帰り際にしーちゃんと相談してお願いすることにしたんだよね……。


「これはさ、もしも、のことだよ? そんなことないようにやるつもりだけどさ、あたしたちがやろうとしていることって、やっぱり危険だと思うんだ」


 珍しくしーちゃんが真面目な顔でそう言ってきた。


「だからさ、保険っていうと変かも知れないけどあたしたちが死んじゃったら、うちもれーちゃんのところも父さんと母さんだけになっちゃうでしょ? それって寂しいじゃない。それにあたしずっときょうだい欲しかったんだよね」

「うん、私も欲しいな」

「だからさ、成功したらごほうびになるし、失敗しても弟か妹が生まれたらいいなって思うんだ」


 ── きっと今ごろしーちゃんも同じお願いをしているはず。


「これはさ、あたしたちのやる気スイッチにもなると思うんだよね。何がなんでも成功させてやるんだから!」


 ── そうだよね。やらなきゃ! 


 部屋で明日からの準備をしていると、ソルの声が聞こえた。


『人間って不思議な考え方するな。消えてなくなっちゃえば何も残らないのに』

『そんなことないと思うよ。亡くなった人は生きている人の心の中で生き続けるんだって。その人と過ごした時間が長いほど、一緒に過ごした人の心の中で生きるって先生が言ってたもの』

『でもそれって本当に生きてるわけじゃないだろ?』

『それはそうだけど……』


 私は自分の部屋の中を見回した。この家に来てまだ数ヶ月だけれど、もうずっと住んでいたような気がする。


 ── この爆散が済んだら、またしーちゃんと会えなくなるのはさみしいな。二学期が始まったら、今度は自分からクラスのみんなに話しかけてみようかな。そしたら、新しい友達できるかな。

 

 その時、突然ソルが言った。


『レナ、俺ちょっと出かけてくる。朝までには戻るから』

「え? いきなりどうしたの?」

『俺、レナを守るために強くなりたいんだ。だから、ちょっと行ってくる。いいよね?』

『いいよねって言われても……。よくわかんないけど明日出かけるまでには戻ってるんだよね?』

『ああ、約束する。俺、強くなるから! だからレナ、朝まで俺に自由をくれ!』

『自由をくれって大げさだね。行ってきたらいいのに』

『そういうわけにはいかない。俺はレナと契約したからな、勝手にレナからは離れられないんだ。我があるじよ、朝までの自由を願う』

『わかった。ソル、朝まで自由にしていいよ』

『ありがとう、レナ!』

 

 そう言うとソルはフッと気配を消してしまった。途端になんだかいつもとは違うところに一人ぼっちでいる気分になって、急いで用意を済ませるとベッドに入った。


 ── 明日から、頑張らなくちゃ……。




 次の日、博物館の駐車場には一台のキャンピングカーが止まっていた。入口の前にはミシェルさんとしーちゃんが待っている。


「それじゃあ、行ってきまーす!」

「行ってきます」


 ミシェルさんがまた涙を流す父さんと苦笑いで握手をすると、私たちはそのキャンピングカーに乗って出発した。



「すっごーい! あたし、キャンピングカーなんて初めてだよっ!」


 座席に座りながらしーちゃんが興奮した様子でキョロキョロと室内を見回している。


「うん、私も。すごいね」


 中は広々としていて、まるで小さな家のようだった。天井が高くて二階建てのようになっていて、上の部分に寝転べるスペースがある。


「ねーねー、ミシェルさん、上に上がってもいい?」

『うーん、運転中は危ないから止めてほしいな。それに君たちが寝るのはフロアの方だよ』

「ここ? そのちっさい場所にれーちゃんと二人で寝るの?」


 しーちゃんが指差したのは運転席のすぐ後ろ側のスペースだ。そこには区切られた高さのないベッドのようなスペースがある。一人ならなんとか寝られそうな場所だ。


『ふふ、それは後のお楽しみということにしておこうか』


 キャンピングカーは高速に乗り、淡路島を目指して走り出した。

最新話をお読みいただきありがとうございます!


ぜひリアクションボタンで反応いただけると嬉しいです。


地の力を爆散させるために淡路島へ向かいます。

それではまた二週間後にお会いしましょう。


皆様に、風の護りが共にあらんことをお祈りいたします。

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― 新着の感想 ―
万が一のことを考えて、弟や妹を作って欲しいと親に頼むなんて、2人の覚悟が感じられました。 でもこれは、自分たちが死んでも親が悲しまないようにという優しさでもあるんですね(;ω;) 2人が、もう10歳…
地の力の爆散させるために淡路島へと向かうしーちゃんとれいちゃん。 果たして!?
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