168 爆散の成功とミシェルさんの絶叫
「れーちゃん、準備はいい?」
「ちょっと待ってね。解除」
私は微精霊を囲っていた壁を消し、いつもの『風の護り』を発動させた。明るい水色の立方体を囲むように円柱を立ち上げる。ソルの言った通り、微精霊たちは動かない。立方体の形に集まったまま同じ位置にいる。
『レナ、さっきまでの爆散よりも強い力になると思う。しっかり壁を支えるんだよ』
「わ、わかった。そうだ、ミシェルさんこの『風の護り』に思念波を流すことってできますか? さっきよりも強い思念波が必要みたいなんです」
『わかったよ。でも、どんな思念を流したらいいのかな?』
「『強くなれ』、とか『支えて』でお願いします!」
「了解だぜ!」
ミシェルさんの思念波が加わって、『護り』が強くなったのがわかった。私は手の中で握っていた受容体を向かい合わせになるように配置して言った。
「しーちゃん、いいよ」
「よーっし。それじゃあ、いっくよー!」
しーちゃんがピッチャーのように投げる真似をすると、ゆっくりと受容体が移動してきた。『風の護り』の一部に穴を開けてしーちゃんの受容体を通すと閉じる。
「それじゃ、いくよーっ! 爆っ散!」
しーちゃんの受容体が微精霊のかたまりにぶつかると、かたまりが霧散した。と同時に強い風が巻き起こり、『風の護り』の中でぐるぐる回りながら上へと向かうと、外へ向かって四方八方に散っていった。周りの木々が一斉に揺れて風が通り抜けていくのが見えた。
── すごい。
今までとは比べものにならない大きな風の動きに、思わずぽかんと口を開けてしまっていた。
『スッゲー! ブラーヴォ!』
「うわー、すごいよれーちゃん! あたしたちやったんじゃない?」
しーちゃんが飛びついてきてぴょんぴょん跳ねながら言った。
「やった……のかな?」
『レナ、うまく精霊の力を散らすことができたね』
「解除」
ソルが嬉しそうにくるくる回りながら言った。
私は『風の護り』を解いて受容体を回収しようとして、びっくりした。
「え? 何これ?」
「ん? わー、でっかい。すごい大きさになったね」
受容体の周りにソフトボールくらいの大きさになった思念波がまとわりついていた。
『へぇ。爆散すると思念波エネルギーの回収もできるんだね。大きな力には大きな見返りというところかな』
「これ、回収できるかな? しーちゃんの思念石、空きはある?」
「あるよ。さっき使ったからね」
「余ったら手伝ってくれる?」
「わかった、やってみるよ。ていうか、それなら先にもらってみてもいい? 爆散で結構使っちゃったんだ」
「あ、そうか。しーちゃんのは爆散すると消えちゃうんだよね」
私は思念波を使っても、爆散の後で吸収する分のほうが大きいけれど、しーちゃんは使うだけだからどんどん思念石の思念波はなくなっていくよね。
── あ! それなら……。
「ねえしーちゃん。次から『風の護り』を発動したら、しーちゃんの受容体も付けてみたらどうかな?」
「それってもう一個作って片方は『風の護り』に使って、もう片方で爆散するってこと?」
「うん」
「なるほどー。それで思念波を回収できたら何回でも爆散できるよ! れーちゃん、頭いいっ!」
『ちょっと待って』
ミシェルさんがストップをかけてきた。
「何? ミシェルさん、どうしたの?」
しーちゃんが不思議そうに聞いた。
ミシェルさんは額にまた人差し指を当てて考え込んでるみたいだけれど、眉が寄ってちょっと変な顔になっていた。
『あのさ、気になってることがあるんだ。聞くタイミングがなくて黙ってたんだけど』
「だから、何?」
『ひょっとして君たち思念石を複数持ってたり、する?』
「持ってるけど?」
「持ってます。それがどうかしましたか?」
するとミシェルさんは、ぽかんと口を開けて固まってしまった。
── なんか変なこと言ったかな?
私としーちゃんが首をかしげていると、正気に戻ったミシェルさんが絶叫した。
『聞いてないんだけどーーーー!? え? 君たち最初から姫様たちに複数の思念石をもらってたってこと?』
「ミシェルさんは思念石いくつ持ってるんですか?」
『これだけど?』
ミシェルさんは右手の人差し指にはめている指輪を見せてくれた。紫色の大きな石が輝いている。
「これ、紫水晶ですか?」
『そうだよ。魔除けの指輪なんだ』
「ちっさいね」
『ちっ……これ、アメジストとしては結構大きいんだけど!?』
「思念石としてはちっさくない? あたしのは、これだよ」
しーちゃんはポシェットの中からスマホを取り出してストラップを見せた。白い勾玉と、ローズクォーツの石が並んでいるビーズストラップをみせる。
『二、二個あるね……』
「家にもあと二個あるけど?」
── あ、ミシェルさんがまた固まった。
しばらくして、
『聞いてないよーーーー!?』
再度絶叫。今度は予想できたので、私もしーちゃんも耳を押さえていたので、セーフ。
『ミシェルって、面白いね。これから、もーっと楽しくなりそうだね!』
無事爆散は成功しましたが、ミシェルが(笑)
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それでは、また2週間後にお会いしましょう!
皆様に、風の護りが共にあらんことをお祈りいたします。