166 怜奈、精霊に名前を付ける
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
ついに、怜奈が精霊を!
「え? どういうこと?」
『レナ テ ダシテ』
わけがわからないまま左手を出すと、精霊さんが手の上に乗った。途端に頭の中に精霊さんの言葉が響いてきた。
『今の俺の真名をレナに教えるからよく聞け。俺の名はソウェル=ティワ=アルジズ。レナを守る戦士だ。いかなることからも俺はレナを守ると誓う。真名は神聖なるもの。俺の真名を知ることは俺の全てをレナに与えること。主よ、そなたの命に従おう。俺はニンゲンの理がわからぬ。レナの命に背いた時は罰を受けよう』
突然そう言われても何がなんだか全然わからない。何も言えないでいると、
『レナ、俺の真名を呼んで。だけど絶対声に出しちゃダメだ。俺は真名を呼ばれたらそいつの命令には逆らえなくなる』
『それって、すごく大切なものなんじゃないの?』
『そうだよ。だけど、俺はニンゲンのことをよく知らない。レナの大切なものを傷つけたくないから真名をレナに預けるんだ。だから受け取って。俺の真名を呼んで、名を受けるって言って』
『私でいいの? もっと大人のミシェルさんとかのほうが良くない?』
『俺を見つけてくれたのはレナだよ。レナが話しかけてくれたから、強くなってレナを守りたいと思ったんだ。俺が主にしたいニンゲンはレナしかいない。だから言って。レナに怒られたくないし、悲しませたくないんだ』
── どうしよう。でも、これからもわけがわからないうちに突然精霊さんが怒って誰かを傷つけてしまうかも知れない。それが母さんや父さんになっちゃう可能性だってある。そんなの困る!
『……わかった。ソウェル=ティワ=アルジズ。あなたの名を受けます』
『我が主よ、命に従います』
私が精霊さんの真名を呼ぶと、受容体から思念波が流れていき、精霊さんを包み込んだ。精霊さんと私が繋がったのがわかった。
精霊さんは私の手から離れると言った。
『レナ、俺に名前をつけてよ。セイレイさんだと他のヤツと同じみたいでイヤだ』
「え、名前?」
『俺の呼び名をつけてよ』
──あだ名みたいなものかな。真名を呼んではいけないから別の呼びか方を考えてってことかな?
『そうそう! 俺に名前をつけて!』
── んー、何て呼ぼう?
「れーちゃん、どうしたの?」
「えーっとね、精霊さんが名前を付けてって言ってるの」
『精霊さんは何て言ったんだい?』
「人間のことがよくわからないから、これからは私の命令に従うって。そのために名前を付けてって言ってるの」
『なるほどね』
「ねぇねぇ、どんな名前にするの?」
私はしばらく考えてから言った。
「ソル。あなたのこと、ソルって呼ぶようにするね」
『オレノ ナマエハ ソル!』
嬉しそうにそう言うと、ソルは嬉しそうにぽーんと跳ね上がった。ふわふわとゆっくり降りてきながら、
『俺、レナのことを手伝うよ! レナ、さっき俺がやっていたみたいに精霊を集めてくっつけるんだ』
「精霊を集めてくっつける?」
『レナは地の力を壊したいんだろ? だったら満ちるまで集めて、力を加えればいい。俺がさっきやったみたいに』
「わかったけど、うーん、できるのかなあ」
「ちょっとちょっと、れーちゃんストップ!」
突然しーちゃんに腕をつかまれて、体がぐらぐらと揺れた。
『レナ!』
『だめだよ。大丈夫だから』
今度はソルを制止できた。
「え? なにしーちゃんいきなり?」
「いきなり、じゃないよ! 何突然妄想モードに入っちゃってるの! しっかりしてよ!」
「ちょっと、妄想なんかしてないでしょ? ソルと話してただけで」
『なるほどね。レナ、君が話している声は聞こえたけど、ソルの声は僕たちには聞こえなかったよ』
「え、そうなの?」
『ごめん、言うの忘れてた。俺の声は実態化しないとレナ以外のニンゲンには聞こえないよ。声を出すのって結構力がいるんだ。レナとは契約したからね、いつでも話せるよ』
ということは、しーちゃんとミシェルさんには勝手にぶつぶつ独り言を話し出したみたいに見えたってこと?
── 恥ずかしいっ!
慌てて二人に説明して納得してもらった。
「ということは、思念波じゃなくて精霊の力を集めて壊せってことだよね。んなのどうやって集めるの?」
『僕に出来るんならぜひやってみたいね』
「思念波を使うと寄っては来るんです。でも、それを集めるのってどうするんだろう?」
『レナ、海で『近づくな』って命じてただろ? 逆に『こっちに来い』って命じればいい』
「あの、ミシェルさんは微精霊が見えますか?」
『微精霊? って、何?』
残念ながらミシェルさんにも見えないみたいだ。
「とりあえず、やってみます」
私は思念波を網のように広げて呼びかけてみることにした。
ソルのアドバイスに従って精霊を集めようとする怜奈。
これで地震を止めることはできるのでしょうか?
続きは二週間後に(笑)
それでは、またお会いしましょう。
皆様に、風の守りが共にあらんことをお祈りいたします。




