159 二人で爆散実験開始
二回目の爆散実験が二人だけで始まります!
……大丈夫でしょうか(笑)
「わ、しゃべった!」
急に明るく光った精霊さんは、すぐに小さくなると、
『レナ、オネガイ キラキラ チョウダイ オハナシ デキナク ナル ヨ』
そう伝えてくる精霊さんは少し弱々しくなったように見える。
「大丈夫?」
精霊さんは答えるかわりにフルフルと震えるように動いて姿を消した。
「びっっくりしたー、本当にしゃべったね」
「……うん、本当はもっと話したいみたいだけど、疲れちゃったのかな。もっとキラキラを集めてって言って消えちゃった」
「ふーん。じゃ、ちょうどいいじゃん」
「え?」
「だって、練習しなくちゃいけないでしょう?」
「練習って?」
「もちろん、爆散のだよ。さて、それじゃ早速」
「ちょっと待って、しーちゃん」
しーちゃんが腕を引っ張って立たせようとするのを止めると、眉をしかめて文句を言ってきた。
「何? あたしたちには時間がもうあまりないと思うよ」
「どういうこと?」
「れーちゃん、聞いてないの?」
『緑の渦が変わってきていること』
「聞いてない」
するとしーちゃんが私の手を額の受容体に当てる。
しーちゃんから送られてきたのは、前に見た時よりも中心が濃い緑色に変わってきている渦の様子だった。その周りにはまるで台風のように緑色の線が巻き付いていたはずなのに、外側の線が小さくなっている。
『外側の緑色が全部なくなったら、勝手に爆散するって。それが大地震を起こすメカニズムだってシュリーアさんが言ってたよ。わかった? もうあまり時間がないの。早く、もっと大きな爆散が起こせるように練習しなくちゃ』
『……そうだね。わかってる、でも、こわいよ! 私、どんどん普通じゃなくなってるんだよ? 母さんや父さんに言えない秘密がどんどん増えてる! やらなきゃいけないことはわかってるの。でも、こわいよ!』
溢れそうになる感情を必死に思念石に流し込んでいると、目からぽとりと涙がこぼれた。一度出てしまうとこらえきれなくてぽたぽたと落ちていく。しーちゃんがそっと背中をさすってくれる。
『大丈夫だよ、れーちゃん。れーちゃんにはあたしがついてる。だから、大丈夫』
『でも、本当に地震を止められるの? そんな力使っちゃったら、私、どうなっちゃうの? この世界にそんなこと出来る人、誰もいないんだよ? 私にできるの? 本当に?』
『れーちゃんは一人じゃないでしょ。確かにあたしよりもれーちゃんの方が力は強いんだろうなって思うよ。でも、一人で抱え込まなくていいんだよ』
── そうか、しーちゃんが側にいなくて私、ずっと不安だったんだ。どんどん思念波が使えるようになって、そのことを誰にも話せなくて。これからどうなっちゃうんだろう? 精霊さんが見つかっちゃったら? って、一人で抱え込むのが辛かったんだ……。
しばらくすると、気持ちが落ち着いてきた。しーちゃんは黙って側にいてくれた。
「落ち着いた?」
「うん、ありがとうしーちゃん。顔、洗ってくるね」
お手洗いから出ると、父さんから電話があった。
「これから発掘場所に行くから一緒に行かないかい。二人に紹介したい子がいるんだ」
「え? 私たちに?」
しーちゃんのところに戻ってそのことを伝えると入口に向かった。
「父さん、紹介したい人って?」
古墳の方へ歩きながら父さんに聞くと、
「うん、秋から編入してくる子が昨日挨拶に来てね、ちょっと面白い子なんだよ。今日から手伝いに来てくれてるんだ」
「おじさん、面白いってどういうこと?」
「そうだね、会ってみたらわかると思うよ」
二人ではてな顔になりながら付いていくと、
「え?」
「わ、でっかくなってる!」
今まで発掘していた穴とは別に、古墳の反対側にも大きな穴が出来ていた。父さんは新しく出来た穴の方を覗き込み、
「あれ、まだ来てないみたいだね」
と呟いた。
「紹介したい人、まだ来てないの?」
「そうみたいだ、遅刻かな。時間は伝えておいたはずなんだが。仕方ないな、怜奈と詩雛はまた松永くんの手伝いをするかい?」
するとしーちゃんが、
『ふ、ふ、ふ、チャンス到来だね』
「おじさん、あたし久しぶりにれーちゃんに会ったから、話したいこといーっぱいあるんだ。向こうで話してるから、その人が来たら呼んでよ」
と言うとさっさと私の手を引っ張って公園の木の繁みの中へ入っていく。
「あまり遠くに行くんじゃないぞ」
「はーい」
と言いながら少し離れた場所まで来ると、
「さ、れーちゃん。早速始めるよ!」
そう言ってしゃがみ込むと何か探し始めた。
「しーちゃん、何してるの?」
「爆散させるのに適した石を探してるの。れーちゃんも用意しといてね。まずはこの前やったことを復習してみようよ。あたしは石を見つけて爆散の元とそれにぶつける受容体を作るから、れーちゃんは窪みを見つけてその周りを囲うのに必要な準備をしてよ」
「わかった」
二回目の爆散実験の準備が慌ただしく始まった。
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それでは、また二週間後にお会いしましょう。
皆様に、風の守りが共にあらんことをお祈りいたします。