157 精霊さん、見つかる
久しぶりにしーちゃんと再会した怜奈、どうやら前途多難なようです(笑)
夏休みも残り十日ほど。しーちゃんに毎日会えるのも後一週間くらいかもしれない。
そう考えると少し寂しいな、と思いながら一週間ぶりに父さんの車で博物館に来た。父さんたちの発掘調査はまだまだ続くらしい。古墳を発掘し終わっても周囲の調査を進めるんだって。それに玄室を保存するためにもいろいろすることがあるみたい。
──玄室の中でレイアーナさんたちに会ったのが、ずいぶん前に感じるよ。
しーちゃんと別れている一週間の間、かなり頑張って思念波を集めてきた。最初にもらった思念石はきれいな勾玉の形になり、御守り袋に入りきらなくなったので、しーちゃんと同じようにスマホのストラップにして吊るしている。
とうとう思念波を使わないと思念石に入っていかなくなった。思念波が満ちている状態になったんだろう。作った思念石も数が増えて、今は四個目を持ち歩いている。
── だけど、本当にこれだけで足りるのかな……。
緑の渦は結構な大きさだった。あの渦を爆散させて散らすには、ものすごいエネルギーが必要なんじゃないかな。そのとき、
「れーちゃん、久しぶり!」
しーちゃんがにっこにこ顔で駆け寄ってきた。
「ほほう、結構焼けてるね」
「うん、いとこたちと海にもプールにも行ってたからね。ふふ、しーちゃんも真っ黒だね」
「ふふーん、あたしも海に行ったよ。でも、秘策のお陰かもね」
「そうだ、秘策って何だったの?」
「あのね、」
しーちゃんが説明しかけた時、父さんが言った。
「怜奈、修復の様子を見に行くけれど来るかい?」
「え? いいの?」
「おじさん、お宝の修復も見られるの?」
しーちゃんも食いついた。
「もちろん。同じ部屋の中で作業しているからね。だけど、側を離れないこと。勝手に触らないこと。作業の邪魔をしないこと。約束できるかな?」
「「はい!」」
私たちは父さんの後に続いて普段は行けない非公開エリアへと入って行った。
「実は、博物館で公開しているエリアはほんの一部分で、それ以外の作業スペースや収蔵庫のほうが大きいんだよ。そして、今回発掘されたものの作業をしているのがここだよ」
長い廊下といくつもの部屋を通り過ぎた先に、その部屋はあった。ドアの先には、何列もの長い作業机が並べられていて、その間にところどころ手元を照らすライトが設置されている。そのライトの下で何人もの人が作業していた。
「一人一人、別々のものを担当しているんだ。土器の修復を専門にしている人、埴輪の修復を専門にしている人がいるのがこちらで、奥で作業しているのが武具の担当、その隣が剣や刀の担当、それから玉や勾玉などの宝飾品を扱うのが向こう側だよ」
それは、夢のような時間だった。少しずつ形を整えられていく物たち。時々父さんと言葉を交わす以外はどの担当の人も黙々(もくもく)と作業をしていた。何人もの人がいるのに、時々物を動かすガチャリという音がする以外には静かな空気が流れている。その中で、少しずつ元の形が作られていく発掘されたものたち。
「すごいね、見ただけでどの土器の破片か、どの場所に当たる部分なのかわかるんだ」
「そうだよ。ここにいるのはみんなその道のスペシャリストたからね」
── ああ、すごいな。この土器はきっと……。
『キット?』
── うん、きっとあの古墳の中にいた人のお屋敷で使われていたものなんだろうな。たくさんの使用人がいて、この土器で食事を作ったり……。
『ニンゲンッテ ゴハンタベルヨネ ドウシテ?』
── どうしてって、食べないと元気がなくなるし、死んじゃうよ……って、え? 私、誰と話してるの? もしかして!
なんとなく気配を感じて左肩に目をやると、やっぱりそこに小さな水色の光がフワフワ浮いていた。
── いつから、いたの!?
『? ズーット イッショニ イタヨ。レナガ ゼンゼン アソンデクレナイカラ オハナシ シテ ミタヨ』
そういえば、レイアーナさんに精霊に憑かれたって言われたんだった。あの後レイアーナさんが帰ってから見えなくなっていたからすっかり忘れていた。
『ニンゲンニ ミツカルト ツカマル。 アブナイカラ ヒカッチャ ダメ。 デモ カクシテルト オハナシ デキナイ。 レナ、 アソボウヨ。マタ キラキラ アツメテ モット オオキク ナッテ モット オテツダイ スル ヨ』
話している間にどんどん光が小さくなっていく。
『オハナシ ツカレルカラ マタネ』
そう言うとスーッと消えてしまった。
── ふう、いきなり現れるからびっくりしたよ……あれ? 私、思念波使ってたっけ?
私のスマホはお弁当と一緒に小さなリュックに入っている。想像が広がりすぎて他の人に漏れていかないように、博物館に入ってからはずっと背中の思念石を意識していた。この部屋に入ってからは、あまりに素敵な光景に夢を見ているようだったから、何度も溢れそうになるたびに思念石に流し込んでいた。
……使っていたわけではないけど、勝手に思念波が出ている状態にはなってたね。それに反応して精霊さんが出てきたということ? え? ということは、これからこの状態になったら精霊さんが現れる可能性大?
「ちょっと、れーちゃん。後で話しようか」
そのときぽんとしーちゃんが肩に手を置くと、にっこり笑いながら声をかけてきた。目が笑っていないところを見ると、これはもしかして……。
『ばっちり、見たからね! きっちり説明してもらうよっ!』
── うわーん、やっぱり見つかってるよ! 精霊さんのバカーーーっ!
面白いな、続きが気になるっと思ったら、下の方にある♡をぽちっと押してまりんあくあを応援してください!
ブクマと⭐️ももらえると嬉しいです。
この物語はコラボ小説にもなっています。コラボ小説「アプリで転移って最強じゃない!? ─しーちゃんが行く!~絶望の箱庭~鳥籠の姫君~のワールドエンドミスティアカデミーにお邪魔しました!─」最新話では、
35話までとリンクしています。自由研究を始めた頃、二人が異世界転移をして何をしていたのか? ぜひコラボ小説もお楽しみください。コラボの内容がどうして本編に出ていないのかって? コラボを読めばしかけがわかるはずです。しーちゃん主人公のコメディ小説もお楽しみください。素敵なうさぎの人形ソフィーちゃんとの心温まる小説となっています。コラボ小説はこちらから
https://ncode.syosetu.com/n0156hr/61/
それでは、また二週間後にお会いしましょう。
みなさまに風の守りが共にあらんことをお祈りいたします。