145 爆散!
予定通り投稿します。
ついにしーちゃんがやります。
大幅に修整しました(06.3.17)
私としーちゃんはレイアーナさんの指示を受けながら実験の準備を始めた。
地面に窪みのある場所を探し、その窪みの一番凹んだところにしーちゃんの作った思念石を浅く埋める。しーちゃんがもう一つ受容体を作っている間に、さっき作った二つの受容体を窪みを挟むように向かい合わせに浮かせ、その二つを核として「風の護り」を発動させる。すると二つの受容体から思念波が吹き出すように広がり、空気の壁でできた透明な円柱が出来上がった。大きさはさっきよりもかなり小さくて、ソフトボールくらいの大きさの底面に高さは周りの木と同じくらいになっている。
『レナ。これからシイナが爆散を起こす。その衝撃が外に漏れ出さないように、しっかりと「護り」を維持するように』
「わかりました」
うう、ちょっと緊張してきた。レイアーナさんがしーちゃんに声をかける。
『シイナ、準備は出来たか』
「ばっちり」
得意げに差し出したしーちゃんの手のひらの上にはスーパーポールくらいの大きさに思念波をまとった受容体が浮いている。側にはシュリーアさんがいてにこにこと微笑んでいた。しーちゃんの受容体を確認したレイアーナさんが言う。
『それでは始めるぞ。皆窪みから離れろ』
少し離れただけで思念石から思念波が流れて行くのがわかる。離れた所から壁を維持するには余分に力がいるみたいだ。額にまた汗が浮かんできた。木陰にいても、もうすぐ正午になる時間の熱気はじわじわと伝わってくる。
『レナ。気を抜かずに維持していろ。シイナ、先程埋めた思念石に思い切りその受容体をぶつけろ』
「わかった!」
しーちゃんが野球ボールのように受容体をふりかぶると、
「いっけーーーえ!!」
思い切り壁の中に向かって投げ込んだ。勢いをつけてぶん投げたわりに受容体はふわふわと動いていきゆっくりと壁に向かう。そして、壁の中に入ろうとして吹きとばされた。
「あ」
「あ」
私の護りを突破できなかったみたい。するとレイアーナさんが言った。
『レナ、精霊に願ってシイナの受容体を通過させろ』
── 精霊にお願いする……どうやって?
『姿を見せて』と願ったら現れてくれた。しーちゃんに挨拶しにいってくれた……同じように頼んでみたらいいのかな。
── お願い。しーちゃんの受容体を通して。
すると、いくつかの青い光が集まってきたかと思うと壁の真ん中にぽこっと丸く小さな穴が現れた。
『シイナ、今だ』
「わかった」
しーちゃんのスーパーボール型受容体がすうっと壁の中に入っていく。受容体が通り抜けたところで、
『閉じて』
と願うと、あっという間に通路がなくなり、青い光は壁の中へ散っていく。集まってくる時はサッと集まってきた青い光だけれど戻っていく時は一度クルリとその場で回ってから行くもの、ふよふよと上下に動きながら反対側まで移動していくもの、その場に留まるものとばらばらだ。思わず見とれていると、
『レナ、しっかり守れ。シイナ、やってみろ』
とレイアーナさんから指示された。
「はい」
「わかった!」
しーちゃんがぺろりと唇をなめると体を少し前のめりにして言った。
「行っけーー! 爆散っ!!」
しーちゃんのスーパーボール型受容体が地面に着き、中の思念石に接触した。すぐには中に入らないみたいでしーちゃんの眉間にだんだんとシワが寄ってくる。しーちゃんの顔からぽたぽたと地面に汗が流れ落ち始め、ぐっと歯を食いしばった瞬間、ばふっという音とともに地面から砂煙が真上に舞い上がった。「風の護り」のお陰で煙は円柱の外側へは出てこない。
けれども煙が上がった瞬間、中から壁に向けて強い衝撃が来た。そのエネルギーが外に漏れ出さないようにグッと力を込めて踏ん張る。
『レナ、しばらくそのまま耐えろ』
返事をするかわりに黙って頷く。そのままがんばって「風の護り」を維持していると、中の受容体がエネルギーをどんどん吸収していく。しばらくすると砂埃も収まり、爆散とともに溢れ出たエネルギーは壁の中の二つの受容体が全て吸収していった。
『……よし。そろそろいいだろう。レナ、護りを解いていいぞ』
「解除」
護りを解くと汗だくの私に、またいくつかの光がふわふわと飛んで来た。一回りくらい大きくなっている。その中でも一つだけ大きかったかたまりはさらに大きくなっていて十円玉くらいの大きさになっていた。
── 全部集まったら五百円玉くらいになりそう。
そう思った途端、一番大きかったかたまりがぷくっと膨らんだように見えた。すると周りにいた他のかたまりが吸い寄せられるように集まっていき、明るい青色の光を放った。
「わっ! 何か光った?」
しーちゃんにも光が見えたみたいで、ダっと駆け寄ってきた。
すぐにその光は小さくなり、そこには五百円玉くらいに成長した光が一つ。……え、合体した!? 『どう? 大きくなったでしょう』というように得意気にその場でくるくる回って見せる。
『……精霊が成長したようだな』
想定外だ、と考えているのがわかった。レイアーナさんが眉をしかめている。光をじーっと見ていたしーちゃんが、そーっと手を伸ばしながら近付いていく。するとびっくりしたのか、ついとしーちゃんから光が離れていく。
「あっ、逃げた」
「しーちゃん、見えるの?」
「うん、見えるよちっちゃくて青いのが。ふうん、これが精霊かー」
しーちゃんが近付いていくと、青い光がふるると震えて私の前に飛んで来て、『またね』というように上下に動くとぱっと姿を消してしまった。
「あーあ、消えちゃったー。あれが精霊かー。うん、ちょっとかわいいかもね」
そう言ってしーちゃんがうんうんと頷いている。
『あまり騒々(そうぞう)しくしたり、無茶なことをすると怒って二度と現れなくなるぞ。シイナは気を付けた方がいいな』
レイアーナさんがそう言うとしーちゃんが真面目な顔で、
「そんなことしないよ」
と言ったけど、誰も本気にしていないのは顔でわかった。しーちゃんは全然気付かず、
「私も精霊をゲットするぞー」
と拳をつき上げていた。
夏風邪で喉が痛い。微熱が出たり出なかったりで、早くも夏ばてしてます。
皆さんも気をつけてくださいね。
プロローグ、10、11話修正しました。配信前に読み直して悶絶しました。下手すぎるよ以前の私…… ということで、やはり文頭は要だと思うので、再びそちらの修正をしていこうと思います。配信はアーカイブで見ることが出来ます。
11話を天野蒼空さんが朗読してくれました。可愛いpopもいただきました。Twitterで公開しています。後程活動報告にもアップしますね。
アーカイブは、
https://youtu.be/CXniiGONGiY
こちらからどうぞ。
面白いな、続きが気になる!っと思っていただけたら、ずーっと下の方にある⭐️をポチポチポチっと押したり、ブクマ、いいねで応援してください。
感想もらえるとまりんあくあが大喜びします。レビューいただけると、変な舞いを踊って喜びます。
それではまたお会いしましょう!
皆様に、風の恵みが共にあらんことをお祈りいたします。