142 怜奈は「風の護り」を覚えた
テッテレー♪ (冒険RPG風)
すみません。今回のタイトル思い付いた途端に頭の中で鳴りましたので。
142話 お届けします。
修整しました(06.2.28)
『シイナ。なるべく小さな小石を一粒選んで手のひらに乗せろ。小さければ小さい程よい。ただし一粒だけだ。なるべく混じりのないものを選べ』
「わかった」
しーちゃんがしゃがみ込み、目を皿のようにして石を選び出した。シュリーアさんが横で何か指示を出していて、それに頷いている。
『さて、レナ。言いたいことは山程あるが、ひとまず置いておく。今からそなたに思念石を使った技を一つ教える。これは、大地の力を爆散させる時に必ず必要になる技だ。そなたはイメージするのが得意なようだ。私がその技を使ったときの記憶を今からそなたに見せる。手を前に出せ』
私が言われた通り手をまっすぐ前に出すと、レイアーナさんがすっと腰を落とし、額の受容体を私の手に触れさせようとした。その時、
『何をなさいます、御姉様!』
ものすごい勢いで私とレイアーナさんの間にシュリーアさんが割って入ってきた。シュリーアさんは私の前に立つと、レイアーナさんに向かい両手を広げて立ち塞がる。
『やめてくださいませ、御姉様。世継ぎの姫のなさることではございません!』
── びっくりしたー。
今まで大人しくて優しいイメージしかなかったシュリーアさんの大きな声と素早い動きに、思わず呆然としてしまった。
── でも、何がいけなかったの?
頭の中にはてなを浮かべているとレイアーナさんがため息をついて言った。
『勘違いするなシュリーア。レナに正確な記憶を受け取らせるためだ。レナの身長では手が届かぬ』
『ならば、レナに受容体を授けて下さいませ』
シュリーアさんが食い下がるように言う。いつもはレイアーナさんの言うことに従っているように見えたシュリーアさんとは思えない剣幕だ。
けれどもレイアーナさんがきっぱりと言った。
『それは出来ぬ』
『何故ですか』
なおも反論しようとするシュリーアさんに、レイアーナさんが冷たい視線を浴びせる。
『シュリーア』
その視線にシュリーアさんがびくりと肩を震わせる。レイアーナさんが厳しい声で言った。
『そなたこそ場所をわきまえよ。レナとシイナが驚いているではないか。小さき子らの前ですることではない。そこを退け、シュリーア』
『……申し訳ございません』
しぶしぶといった様子でシュリーアさんが引き下がると、驚いて固まっていた私の手にレイアーナさんが素早く額の受容体を近付けて来た。その途端、私の頭の中に映像が送られてくる。私が記憶を受け取ったのを確認すると、レイアーナさんはすぐに立ち上がった。
『驚かせてすまなかったな。我らの世界では、先程の姿勢は臣下の礼を示すのだ。特に額に手を当てるのは、その手を持つ者を自分の主と定め、絶対服従を誓う礼になる。シュリーアが取り乱したのはその為だ』
「それは、びっくりするでしょう!」
言ってくれたらもっと上に手を挙げるとかするのに! でもレイアーナさんは全く気にもとめていないようだ。
『ここは我らの国ではないし、世界からして違うのだ。我らの習慣や風習に意味があるとは思えぬ。……さて、この話はもう終わりだ。レナ、今伝えたことをやってみろ。まずはしっかりとイメージをすることが大事だが、そなたなら出来るであろう?』
「うん、れーちゃんの妄想力はハンパじゃないからね」
しーちゃんが腕を組んでうんうんと力強く頷いている。それ、絶対ほめてないよね! むっとしたけれど、レイアーナさんが少し後ろに下がって『早くしろ』と待っている。私は急いで目を閉じて、受け取った記憶を再生する。
── イメージするのは中が空洞の円柱。高さは伸ばせるだけ。自分をすっぽりと包み込むように周囲に張り巡らせる……。
『レナ。技をかける時に目は閉じるな。周囲を見渡しながら完成させろ。思念石を握るなり手の上に乗せるなりして自分の肌に直接触れるようにしてから唱えるのだ。そして自分の中の思念波を使うのではなく、思念石の中のものを使え』
── え? イメージして、思念石から思念波を使う?
……よくわからないけど、とりあえずやってみよう。ゆっくりと目を開けると、周囲を見渡しながら自分の周りに透明な円柱を思い描く。高さは高く、高く……こんな感じかな。私を覆う空気の壁……。昨日石の形を変えた時のように、頭の中でかちっと何かがはまったようにその形が見えた気がした。その時、ぐうっと思念波が思念石に引っ張られた。思わずぎゅうっと思念石を握り込みながら、そこからエネルギーを押し出すイメージをして教えられた言葉を口に出した。
「風の護り」
次の瞬間、ものすごい勢いで思念石から何かが飛び出したような気がしたと思うと、あっと言う間に自分の周りを覆う空気の壁が出来ていた。
「これが、風の護り……?」
『ふむ。一度で完成させるとは大したものだ。シイナ、思念石を持たずにレナに触れてみろ』
目を丸くして私を見ていたしーちゃんが、そーっと近付いて来てゆっくりと手を伸ばす。
「わっ」
しーちゃんの手が私の作った空気の壁のようなものに弾かれる。途端にしーちゃんの目がキラキラと輝き出した。
「すごい! すごいよっ! れーちゃんの魔法だ!」
レイアーナさんの片眉がぴくりと上がった。
『魔法? こちらの世界ではそう呼ぶのか? これは思念石に呼応する精霊の力を借りた技だ。この世界では精霊の力が統制されておらぬゆえ、人工物の多いところでは上手くいかぬ。それゆえ精霊の力を借りやすい場所で試してみたのだが、上手く借りられたようだな』
── ええっ! ……ということは、精霊が近くにいるってこと? 何、いきなりファンタジー!?
書き終わった瞬間にうわ、怜奈のレベルが上がった、て思ってしまいました。タイトルはそういうわけです。
ようやく佳境に向かいつつあります。Twitterで予告(仮)していた爆散実験までたどり着きませんでした。次こそは。
え、この話ってSFじゃなかったの? ファンタジーだったの!? と思われたそこのあなた!
どっちもです(笑)
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感想もらえるとまりんあくあが大喜びします。レビューいただけると、変な舞いを踊って喜びます。
それではまたお会いしましょう!
皆様に風の恵みが共にあらんことをお祈りいたします。