140 思念波の暴走を止めろ
140話目、予定通りお届けします。
修整しました(06.2.21)
「こーゆーこと?」
ウエストポーチからローズクォーツとラピスラズリの思念石を取り出すと、しーちゃんはローズクォーツの思念石をじっと見つめる。すると、ふわり。水色の小さな光の塊が出て来て浮かび上がる。それを思念波で動かし、ラピスラズリの思念石の上へ。水色の光はすうっとラピスラズリの思念石の中に入って行った。
「なるほど」
── この手があったか……。
そんな方法考えてもみなかった。しーちゃんが、
「確かにこれなら持ち歩かなくても集められるね」
そう言ってうんうんと頷いた。ふとレイアーナさんを見ると額を押さえている。シュリーアさんは、また頬に手を当てて緩く微笑んでいるけれど、雰囲気から『困った人たちですこと』と思っているのが伝わってくる。
── 仕方ないでしょう。そんな方法全然考えつかなかったんだから。
するとレイアーナさんがため息を吐きながら、
『私がなぜ複数の思念石を持ち歩くなと言ったのかわかるか?』
と聞いてきた。レイアーナさんの顔が怖い。普段からあまり感情を表に出さない人だけれど、今は完全に無表情だ。何を考えているのか全く読めないところが余計に恐怖心をかきたてられる。
「力が強くなるからですか?」
おそるおそる聞いてみると、
『それはその通りだが……お前たちは支配者になりたいのか?』
真面目な顔で尋ねられた。するとしーちゃんが目を細めて『何を言ってるのこの人は』という感じで言った。
「それ、前も聞かれてれーちゃんがそんなめんどくさいものになりたいわけないって答えなかった?」
『気が変わったのかと思ったのだが、その様子では危険性について全く認識出来ていないことが確認出来たな』
レイアーナさんがやれやれ、といったふうに首を振ると腕を組む。
『以前警告したはずだが覚えているか? 』
── 前回の会合で言われたことかな?
思い出しているとしーちゃんが首をかしげながら可愛く言った。
「そういえばぁ、満ちた思念石を持ち歩かないことって言われた気がするけどぉ、あたしたちどの思念石もまだいっぱいにはしてないしー? たくさん集めようと思ったらいっぱい持ち歩いた方がいいよね?」
あ、レイアーナさんのこめかみがピクリと動いた。しーちゃんは見ていなかったのか、お構い無しで続ける。
「あたしたち見たんだよ、緑の渦を。あれが濃い緑でいっぱいになったら地震が起こるんでしょ? だったら本当に急がないと危ないじゃん」
その時、かすかにシュリーアさんが動いた気がした。気のせいかもしれないけど、笑顔が少し固くなったような気がする。レイアーナさんが目を伏せて言う。
『……やはり見たのだな。渦のことを聞いてきたから予測はしていたが』
それからため息をつくと、すっと顔を上げる。また無表情だ。背中がひやりとした。
『そなたらが見たのはおよそ十日ほど前の状態だ。私は出来る限りの協力はすると言った。だから後程渦については結果を伝えよう。だが、今問題にしているのは複数個の思念石を持ち歩く危険性についてだ……レナ』
「はい」
反射的に返事はしたけれど、何を言われるのかと思うと目が逸らせない。体にぐっと力が入る。
『そなたには警告しておいたはずだな。思念波が強くなれば影響を受けるのは誰だ?』
「周りにいる人、でしたよね」
『そうだ。力が強くなればなるほど影響力が増す。しかも、そなたとシイナの思念波は共鳴する。その影響力がさらに高まることになるのはわかるだろう。前回、普通は接触しなければ出来ないはずの使役を二人の力で成した。今のそなたら二人が力を合わせればこの建物のフロア全体にその影響が出るぞ』
するとしーちゃんの目がきらりと輝く。あ、嫌な予感。
「え、なに? それじゃあたしたちが命令した通りに、ここにいる人全員を動かせるってこと?」
しーちゃんの顔には『なにそれ面白そう、やってみたい!』とありありと書いてある。
「できないよ」
なので私はビシッと言ってやった。
「何でー!?」
うわぁ、しーちゃんが「待て」のまま長時間我慢しているわんこみたいな顔になってるよ。耳がついてたらぜったい顔にぺたんと張り付いてるやつだ。
「何で~?」
いや、涙目になられても。だって、しーちゃんには絶対できないと思うんだよね。以前、「欲望のままに使わない」って命令したからね。でも……。
── もしも、無理やりしーちゃんがやろうとしたらどうなるのかな?
ちょっと試して見たくなって思わず、
「じゃ、やって見たら?」
そう言ってしまった。しーちゃんの顔がぱーっと明るく輝く。
「え、いいの? じゃ、遠慮なく。ほーら、このフロアの人みんなー、うぐ!?」
何を言おうとしたのかはわからないけど、肝心のところでしーちゃんの体の動きがピタリと止まった。その後何度試しても、途中で動きが止まってしまう。なるほどー。これならばどうやっても無理そうだね。思念波最強、いい仕事してるー。感心していたら、
「れーちゃーん、何でー? 」
しーちゃんがウルウルしながら聞いてきた。なので、追い討ちをかけるようだけれどきっぱりと言ってやった。
「しーちゃん忘れた? 欲望のままに思念波を使わないっていう約束」
「がーん」
しーちゃんがそのままうずくまると叫んだ。
「わーん、あたしのロマン返せーー!」
その途端、しーちゃんを中心に思念波が渦を巻き始めた。あっという間に辺りに広がっていく。
── ダメ、このままだと危ないっ!
「しーちゃん、感情を抑えて! すぐ思念石に流し込んで!」
慌ててしーちゃんにそう声をかけると、しーちゃんごと包み込むように自分の思念波を一気に広げた。
『レナ、何をするつもりだ!』
皆様に応援いただいた外伝ですが、二次を通過することは出来ませんでした。ですが、突破に向けてブラッシュアップしましたので、さらに読みやすくなりました。まだ未読のかたは#ぜひ姫様たちの故郷を覗いてみてください。
https://ncode.syosetu.com/n2812hj/
また、コラボ小説は2話目投稿しています。こちらは最終選考まで行った神崎ライ様の作品に、しーちゃんが乱入していく物語です。ご笑覧ください。
https://ncode.syosetu.com/n0156hr/
面白いな、続きが気になる!っと思っていただけたら、ずーっと下の方にある⭐️をポチポチポチっと押したり、ブクマ、いいねで応援してください。
感想もらえるとまりんあくあが大喜びします。レビューいただけると、変な舞いを踊って喜びます。
それではまたお会いしましょう!
皆様に、風の恵みが共にあらんことをお祈りいたします。