135 ジョンソンの怒りと恐怖
すみません。少し遅れましたが、135話
お届けします。
加筆修整しました(06.2.5)
アリーシャのことを考えながら眠ったからか、ジョンソンがレイアーナさんに詰め寄っているシーンが見えた。
『今の叫び声は何だ? 他の協力者か? どういうことだ、まさかこの石のせいじゃないだろうな!』
レイアーナさんたちもアリーシャの叫び声を受け取った直後のようだ。
── このタイミングでか。今の思念波の勢いならば全ての協力者に届いただろうな……。
心の中ではそう考えていても、腕を組んで顎を引いたいつもの姿勢で、表情も変えずそのまま立っている。驚いたり慌てたりしている様子は全然見えない。そんなレイアーナさんの様子に余計にイライラしたのかさらにジョンソンが怒鳴る。
『おい、あれは誰の声なんだ! 一体何があったんだ!』
レイアーナさんがため息をついて説明しようと口を開きかけたその時、ブルル、という振動がジョンソンのスマホから聞こえ、通知画面が光った。Chatterの通知だったみたいで、ミシェルさんのコメントが表示されている。英語だからよく読めないけど内容は知っている。
『先程助けを求める悲鳴を聞きました。情報を求める。皆さん無事ですか』
それを見たジョンソンが、
『フランスのミシェルからだ。あちらでも聞こえたらしい。情報を求める、皆無事かと書いてあるな。あの悲鳴は明らかに女性のものだ。一体何が起こっているんだ』
そう言いながらレイアーナさんをジロリとにらむ。けれどもレイアーナさんの様子は全く変わらない。流れてくる思念波にも揺らぎはない。
── レイアーナさん強いな。ジョンソンが怖くないんだ。あんなに大きな声で怒鳴ってるのに。
『あれはアリーシャだ。おそらくこの世界からもうすぐ旅立つのであろう。アリーシャはもともと重篤な病に犯されていた。いずれ命の火が消えるであろうことは本人も自覚していたことだ』
それを聞いたジョンソンが震える手で胸元から懐中時計を取り出す。前に見た時と変わらず大きなダイヤが蓋の中央で光り輝いている。そのダイヤを突きつけるようにレイアーナさんに向けると言う。
『これが関係してはいないのか? これのせいで死にかけているのでは?』
レイアーナさんは黙って首を振る。
『むしろその逆だ。思念石があるからこそ今までもったのだ。思念石に治癒の効果はないが精神を安定させる効果ならある。苦しみや痛みから精神が混乱することを防げるのだ。そして……望むならば穏やかな死を送ることも可能だ』
そのとき、
── これはいい機会だな。少し脅しておくか。もとより高慢なところのある男ではあったが、力を蓄えて少し増長してきているからな。
そして例のものすごく怖く見える笑顔を浮かべてジョンソンを見る。
『ひっ』
ジョンソンの顔色が悪くなった。
── あー、なるよねー。あの笑顔破壊力がありすぎるよ。
その様子を面白がりながらレイアーナさんが追い打ちをかける。
『そなたが望むのなら、今すぐにそなたに送ることもできるがどうする? 私には簡単なことだ』
するとジョンソンがブルブルと震え出した。
『ご、ご冗談を!』
焦ったように叫ぶと、媚びるような視線を向けてくる。今まで迫力ある応対をしていた人と同じだとは思えないくらい顔色が悪い。
── ふむ。もう一息刻みつけておこうか。こやつの思念波は強い。良いエネルギー源ではあるからな……だが、だからといって見くびられると後が面倒だ。
レイアーナさんはゆっくりとジョンソンに近づく。
『な、何を!』
足が震えているのを見て、笑みを深くする。
── うわ、これ絶対恐い顔になってるよ……。
すっと人差し指を上げ、ジョンソンの額を指すと、
『そなたの命を刈り取るなど簡単なことだ。何なら今すぐにしてやっても良いが?』
『ひいいいっ! お、お許しくださいっ!』
ジョンソンが真っ青になって飛び退く。大きな体を縮こまらせ、がくがくと震えている。そんなジョンソンを見下ろして言う。
『そなたは協力者としてよくやってくれている。それゆえ今すぐに命をもらうつもりはない。だが、私に逆らうならば話は別だ。お前が影響力を増しているのはお前の実力ではない。思念石なしにこれ程民衆に支持されたかはわからないぞ。そして私はいつでもお前の思念石を取り上げることも、思念波に関する記憶を全て消去してしまうことも出来るのだ。そのことを忘れないようにするのだな』
ジョンソンの記憶はそこまでだった。そういえば、ミシェルさんのところにレイアーナさん行ってるんだよね? さっきchatterに連絡来てたし。
するとミシェルさんとレイアーナさん、シュリーアさんが話している映像が見えてきた。ミシェルさんはいつものようにジーンズとカジュアルなシャツを着て立っている。違うのは人差し指で額をとんとんとたたいていることだ。その仕草のままで言う。
『そっか。彼女の記憶がベッドの中ばかりだったのはそれでなんだね。僕、力が強くなってから時々夢の中で他の協力者に会うことがあって。でも、僕から話しかけても答えてもらえないし、彼らが一方的に話しているのを聞くだけで変な夢だなって思ってたんだけど』
するとレイアーナさんが、
『それは我らが構築した思念波網の影響だろう。アリーシャのような緊急事態に対応出来るようにあらかじめ我らが張り巡らせたものだ。媒体に協力者に関する記憶を使ってあるため、能力の高い者は感応してその記憶を見ることがあるようだ』
ミシェルさんが額から手を離し、シュリーアさんの方を向く。
『じゃあ、それで気付いたシュリーア姫がアリーシャのところへ?』
シュリーアさんが頷いて答える。
『ええ、参りました。それでルークにアリーシャの伝言を託したのです』
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