133 できる女モードのしーちゃん
予定通り133話投稿します。
加筆修整しました(06.1.28)
そういえば、どうしてだろう? クラスも少なくて同じ学年の子はほとんど顔見知りだから、どこでも普通に話しかけられるんだと思ってた。
「ふーん。じゃ、聞くけど。れーちゃん、あたし以外に仲のいい子っている?」
── しーちゃん以外に?
私たちはしーちゃんの家に帰宅し、リビングでおやつのアイスを食べていた。シャリシャリのソーダアイスを食べながら考えているとまたもやしーちゃんに突っ込まれた。
「それは……しーちゃんほど仲良くはなかったけど、それでも友達はいたよ。だって、ずっとしーちゃんと同じクラスだったわけじゃないもの。そんなの当たり前でしょう?」
そう言うとしーちゃんがにやりと笑った。
「じゃあさ、転校してからあたし以外の子と連絡取り合ったこと、あるの?」
う、そう言われると……。しぶしぶ答える。
「……ないです」
「電話したり、手紙もらったりは?」
「……ないです」
「んじゃあ、れーちゃんから電話したり、手紙書いたりした人は?」
「ない、です」
しーちゃんが大きなため息をついた。顔が呆れている。うぐぐ、ぐうの音も出ない。
「そういうことだよ。れーちゃんはさ、自分から友達を作ろうとしたことがないの。ずーっと受け身だったの。今までずーっとね!」
── そう言われると自分から友達を作ったこと……。
「ない、かも」
ガーン、殴られたくらいのショックだった。自分から「友達になって」と言った記憶は言われてみれば全くない。大体が「怜奈ちゃんだよね、よろしく」って向こうから声をかけてきてくれて仲良なった子ばかり。前の学校はみんな知り合いみたいな感じだったから、自然と声をかけてくれる子も多かった。そうか、だから友達ができなくて困ったことなんて一度もなかったんだ……。
「ざーんねん。それもはずれ」
「それ、どういう意味?」
本当に分からなくて困り顔で聞くと、しーちゃんが食べ終わったアイスの棒をふりふりしながらちらりと横目で見て、得意そうに言う。
「ふふーん。種明かしをしてあげよう。れーちゃんは放っておくと一人で本読んでるかぼーっと妄想して一人で楽しんじゃっててさ、他の人と積極的に関わるってことをしないでしょう? 人からこうやって言われなきゃそれにも気付かない。今みたいに、ね!」
ぐぐ。悔しいけど否定出来ない。しーちゃんはさらに続ける。
「だーかーら、あたしが前もってれーちゃんのクラスの知り合いに、れーちゃんが放っとくとすーぐ一人の世界に行っちゃって戻って来なくなるから、そうならないように見張ってて! って、頼んでたの」
── 何ですと?
そういえば想像の翼を広げていると必ず声かけてくれる子、いた。「もー、れーちゃんまた? ほら、けいどろ行くから来て」とそのまま外に引きずり出されていた記憶が結構ある。みんなと一緒に遊ぶのも楽しかったからそんな細かいこといちいち気にしてなかったけど。
「そ。れーちゃんは流されるとそれが嫌じゃない時はそのまま楽しめるからね。でも、自分から何かアプローチしたことってないはずだよ?」
「言われて見ればないかもしれない」
そっか。私が受け身すぎたんだ。もっと自分から積極的に声をかけなきゃいけなかったんだね。思わず落ち込んでいるとしーちゃんが真面目な顔で言った。
「だからさ、れーちゃんに今友達がいないのはれーちゃんのせいでもあるんだよ、自分から声かけないからね。こっちにいるときみたいにこっそり様子見てるだけじゃあ、周りの子にれーちゃんのしたいことなんて伝わるはずないじゃない。「これ、手伝って」とか「仲間に入れて、」とか、何でもいいから自分から声をかけなきゃ。もしかしたられーちゃんみたいに本好きの子だっているかもしれないよ!」
しーちゃんの力強い言葉に背中を押される。そうだね、今度は自分から周りの子に声をかけるようにしよう。
「うん、わかった。二学期が始まったらやってみるよ」
そう答えるとしーちゃんがにかりと笑う。
「がんばれ、れーちゃん。れーちゃんはやれば出来る子だよっ」
「ありがとう、しーちゃん」
やっぱりしーちゃんはすごいな。私もがんばらなきゃって感動していたら、
「こら。何自分に都合良く怜奈ちゃんに偉そうに言ってるの」
後ろからおばさんの呆れた声が飛んできた。テーブルの上に冷たい麦茶をことんことんと置くとしーちゃんをチラリと見る。するとしーちゃんは明後日の方向を向いて口笛を吹き出した。ちゃんとは吹けないからヒューヒュー音がしている。おばさんがそれを見てくすくす笑いながら言った。
「怜奈ちゃん、詩雛の言うことを真に受けちゃだめよ。怜奈ちゃんがいなくなって誰よりも困ってるのは詩雛の方なんだから」
しーちゃんが、
「あー、あー、聞こえないなー」
と両耳を塞ぐマネをしている。そんなしーちゃんはあっさり放置しておばさんが続ける。
「怜奈ちゃんが転校してからね、毎日帰ってくるたびにれーちゃんがいないとつまらないーだの、れーちゃんがいてくれたらなーだの、ずーっとぶつぶつ文句言ってたのよ。転校して心配してたのは本当だと思うけれど、本音は自分が相手して欲しいだけよ」
そう言われてしーちゃんを見ると、ちょっと顔が赤くなっていた。何より思念波が伝わってくる。
『べ、別に、れーちゃんがいなくて寂しかったなんてこと、ないもん。居てくれたらもーっと楽しいのにーなんて思ってないよ。思ってないったら、ないっ!』
うん、とても分かりやすい。そのときしーちゃんが床の上をゴロゴロと転がりながら『あー、もー!れーちゃんいないとつっまんなーい!』と叫んでいる映像も伝わってきた。
何だかほっとして、そしておかしくて。思わずお腹を押さえてしばらくクスクスと笑い続けた。やっぱりしーちゃんは最高の親友だ。なんだかとっても嬉しかった。
詩雛「あたしはやる時はやる女だよ!」
胸を張る。
やらかししーちゃんだけではないということですね、はい。
あんまりいじると反撃されるのでこの辺に。
げし あいたっ
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こちらの外伝がネット大賞一次通過しました。
合わせて応援いただければと思います。
再読してくださっているリピーターの皆様、いつも本当にありがとうございますm(_ _)m 感謝します。思った以上に時間がかってますが、仕上げたら連載再開しますのでもう少しお付き合いください。
それではまた4お会いしましょう!
皆様に風の恵みが共にあらんことをお祈りいたします。