132 プールサイドのやらかし事件発生
132話、予定通り投稿します。
修整しました(06.1.21)
外は薄曇りで、絶好のプール日和だ。空いているベンチを見つけてポーチを置き、シャワーを浴びに行こうとしたら、
「おう、小鳥遊じゃねーか。お前も来たのか?」
と聞き覚えのある声がした。手を上げて声をかけてきたのは、私の苦手な元クラスメイトだった。
「あれ? そこにいるの本の虫じゃねぇか! お前、転校したんじゃなかったのか? へー、本読む以外のこともするんだー」
そう言って面白そうに見てくる。むっとしているとしーちゃんが、
「こおら、高橋! あんたも、でかごりらって言っていいなられーちゃんをそう呼びなっ!」
と言い返してぎろりと高橋をにらみ返した。すると高橋はちっと舌打ちして腕を組むと、
「相変わらずお前、口が減らないな。本の……」
高橋がまた悪口を言おうとしたのを察したしーちゃんは、無言で足を上げると高橋の太い足に狙いを定める。
「次、言ったら、即踏むよ?」
すると高橋は嫌そうにしながら両手を前に出すと、慌ててしーちゃんを制止する。
「ああ! わかったよ、悪かったよ。お前言い出したらマジでやるからしゃれになんねーよ」
そうして高橋は頭をがりがりっとかくと、
「……ごめん。久しぶりだったからつい言っちまった。……その、元気だったか?」
とぶっきらぼうに聞いてきた。びっくりして、
「う、うん。まあ……」
とだけ答えると、しーちゃんがニヤリとして言った。
「れーちゃん、高橋ねー、れーちゃんが転校してからさ「何であいついねーんだよ、つまんねー」ってしょっちゅうぼやいてたんだよ」
すると高橋が真っ赤になって、
「ちょ、おま、今それ言うか? お前だっていつも言ってるじゃねーか! あーあ、守川がいたら教えてくれるのにーって。先生にも言われてたぞ。困ったときの守川頼みって!」
わあ、やっぱり私って便利屋扱いされてるー、いいけどね。ふふ、ちょっと懐かしい気もする。なおも言い合いを続ける二人を見守っていたら、しーちゃんがくるりと振り向いて、
「れーちゃん! れーちゃんもびしっと言ってやりなよ、このでかごりらにっ!」
と高橋に向けて人差し指を突きつけた。
「おっ前! でかごりらって言うなっ!」
高橋がキレてしーちゃんに殴りかかりそうに見えた私は思わず、
「二人とも、やめて!」
と叫んでしまった。すると二人が一瞬無表情になり、そろって、
「「わかった。やめる」」
と言うと距離を開けて向かい合った。しーちゃんが恨めしそうな目で言った。
「ひどい。ちょっとふざけてただけなのに」
── いや、そんなのわからないからっ!
心の中で突っ込んだつもりが、また思念波で外に漏れていたらしく、今度は高橋がため息をついて、
「守川ってそういうところあるよな。俺がふざけてても、お前本気だって思うだろ」
「うっ」
── ……それは、心当たりがありすぎる。
するとまたしーちゃんが笑いながら、
「高橋さ、でっかいかられーちゃんに怖がられるんだよ。声も大きいしさ」
そう言うと高橋がぶすっとした顔で言う。
「しかたねーだろ。もともと地で声がでかいんだよ。……そっか。お前、俺のこと怖かったのか……」
── あれ? 落ち込んでる? 私が苦手だって思ってたのは勘違いってこと?
確かめたいけどやっぱりまだちょっと怖いので、おそるおそる、
「私、いつも怒鳴られるから嫌われてるんだって思ってた。んだけど?」
すると高橋はベンチに片手をついて、
「やっぱりそう思われてたのか」
明らかに落ち込んでいる感じ。戸惑っているとしーちゃんがくすくす笑いながら言った。
「わっかんないよねー」
はい。分かりませんでした。しかたなく高橋に、
「えっと、何か、勘違いしててごめんなさい」
とびくびくしながら謝ると、
「や、まあ、その……怖がらせて悪かった。そんなつもりはなかったんだ。ただ、お前頭いいからちょっと羨ましかっただけっつーか」
そう言って、またちょっと顔を赤くした。……思ってたよりかわいいところがあるみたい? なんだかちょっとほっとした。
「で、高橋。あんた一人でここに来たわけ?」
タイミングよくしーちゃんが話題を変えてくれた。
「んなわけねーだろ。あっちにみんないるよ。拓也と陽祐、それに彩花と満里奈もな。他にも来てる。俺は便所に行ってたからシャワー浴びに行こうと思ったら、お前達を見つけたんだ。そうだ、お前らも来いよ。みんなびっくりするぜ」
そう言ってにかっと高橋は笑った。久しぶりにみんなに会えそう。わくわくしてきたよっ。その時高橋が、ふとしーちゃんのポーチに目を留めた。
「何だ、小鳥遊。お前こんなのプールに持ってきてどうすんだよ」
そう言ってポーチを手に取ろうとする。
「「駄目。それにさわるなっ(さわらないで)!」」
私としーちゃんの声が重なったその時、事件は起こった。市営プールの中の喧騒が一瞬にして静まり、その場にいた人全員の顔が無表情に。それから口々に、
「分かりました。触りません」
「わかった。それには触らない」
「分かりました」
「触らない」
と呟き出した。全員が言い終わった次の瞬間、プールはいつも通りの騒々(そうぞう)しい空間に戻っていた。高橋もさっさと手を引っ込め、
「何だよ大げさだな。そんなに触られたくないなら持ってくんなよ」
と文句を言ったが、
「んじゃ、みんなのところへ来いよ」
と普通に誘ってくれた。
思念石増やしたために、よりパワーアップした威力を発揮。しかも二人分なので影響が大きくなりました。
速報です。
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皆様に、風の恵みが共にあらんことをお祈りいたします。