131 アリーシャの死と私達の決意
予告通り投稿できました。良かった……。
修正しました(06.1.9)
ゴーグル翻訳で読んでみる。ジョンソンとヤーンの書き込みがあった。
ジョンソン『アリーシャの死に大変驚いています。ご冥福をお祈りします』
ヤーン『シュリーア姫からアリーシャの伝言を預かりました。「短い間でしたが楽しい時間を過ごせました。みなさん、ありがとう」です。アリーシャの旅立ちに敬意を表します』
何も言えなかった。しーちゃんは黙ってスマホを握りしめて俯いていた。何と声をかけていいかわからない。私でもショックなんだ。しーちゃんはシュリーアさんの記憶を通して弱っていくアリーシャさんをずっと見ていた。綺麗な人だと憧れてもいたと思う。そんなしーちゃんにどう声をかけようかと考えていると、しーちゃんが俯いたまま私を呼んだ。
「れーちゃん。あたしたち、やり遂げよう。あたしたちが失敗したら、もっともっとたくさんの人が辛い目に会う。たくさんの人が死んじゃうかもしれない」
ゆっくりと顔を上げると、真っ直ぐな瞳で、
「あたし、アリーシャに会ったことない。でも、それでもこんなに辛いんだ。もし、友達や父さん、母さんがって考えたら……そんなの絶対やだ! だから守るよ。絶対地震止めてやる。そのために出来ることなら、何だってしてやるよ」
そう言いながらしーちゃんが私の肩をがしっと痛いくらいにつかむ。
「だかられーちゃん。思念石作ろう。作って、作って、作りまくろう!」
鼻息が顔に当たる。その必死さになぜかくすっと笑ってしまった。真面目に言ってるのはわかるんだけど、一気に盛り上がつて鼻息荒くやるぞー、と迫られて、何だかいろいろ吹っ飛んでしまった。思わずくすくす笑っていると、
「ちょっと、れーちゃん! 失礼じゃない?」
しーちゃんがおこりだす。それがまたツボにはまってしまい、私はお腹が痛くなるくらい、くすくす笑ってしまった。あんまり笑っていたので、しまいにはしーちゃんも、
「れーちゃん変ー」
と言って笑い出した。笑ったお陰で気分が切り替わり、スッキリした私たちは、顔を見合わせて、よし、と気合いを入れた。
それからプールに向かった。市民プールは歩いていけない距離ではない。自転車なら楽に行けるけど、引っ越した私には乗れる自転車がない。暑いけど歩いて行くかー、と言いながら階段を降りて行くと、おばさんが車で送ってくれることになった。やったね。
市民プールは思った通り混雑していた。プールサイドにはいくつか持ち込みの簡易テントが張られている場所もある。ここは市営のプールだけれど、いくつもの種類のプールがあり、滑り台とか水が流れるプールもある。だから夏休みは平日でもよく混むんだ。
おばさんは、夕方また迎えにくるからと言って戻って行った。私としーちゃんは更衣室に入ると、シャワー室の一つに入りカーテンを閉めた。もちろん着替えるためではない。水着はあらかじめしーちゃんの部屋で服の中に着込み、日焼け止めもばっちり塗ってきてある。
「じゃあ、やるよ」
「どんとこい、だよ」
荷物の中から天然石を一つ取り出す。茶色い縞模様の入った少し楕円形に近い石だ。持っている中で一番大きいのがこの石だった。色からするとたぶん、瑪瑙だと思う。次にポケットから御守り袋を取り出すと、その中のローズクォーツの天然石を意識する。私が作った方の思念石だ。今回はこの思念石から受容体を複製する。
レイアーナさんが以前、自分たちで増やした分は自分たちで使えと言っていた。だから自分の思念石のエネルギーを使った方がいいと思うんだよね。意識をローズクォーツの中の受容体に集中させる。思念石が増えればその分コントロールは難しくなると思う。それでも私たちが前に進むために、これは必要なことだ。
── やるよ!
ローズクォーツの中の受容体を複製し、瑪瑙の中に入れる。しーちゃんもその様子をじっと見ている。
「いい? 離すよ」
「わかった」
しーちゃんが答えるのを確認してから思念波を瑪瑙から外す。途端に周囲の思念波が新しい思念石めがけて一気に流れ込んでくる。
ズザザ、と音がしたような気がする。自分の思念波を元の受容体に繋ぎ止めているうちに、波はすぐ収まった。ほっとして目を開けると、ふうと大きく一息ついたしーちゃんと目が合った。にやりと笑ったところをみると大丈夫そうだ。
「次は、これをお願い」
しーちゃんが取り出したのはラピスラズリの思念石とローズクォーツの天然石だ。
「うん」
頷いてしーちゃんの思念石から受容体を複製する。
「行くよ」
声をかけると新しい受容体をローズクォーツに移動させる。後はさっきと同じように合図を送り、思念波を外す。
── あれ?
さっきよりも衝撃が少ない。スーッと流れ込む感じはあったけれど、効果音が付くほどではなかった。しーちゃんも眉をひそめて、
「え、何これ不良品?」
ツンツンつついてみている。
「あ」
原因はすぐにわかった。プールサイドから戻ってくる賑やかな声とともに、ザザーッと思念波が流れ込んでいったからだ。
「……ああ、なーるほど。一回目で取り込んじゃってて、周りに残ってなかったからかー、びっくりした」
「たぶんそうだね」
私たちはロッカーに荷物をしまうと、しーちゃんのウェストポーチに出来たての思念石だけを入れてプールサイドへ向かった。
── さあ、吸収しまくるよ!
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それではまたお会いしましょう!
皆様に、風の恵みが共にあらんことをお祈りいたします。




