129 いきなりファンタジー!?
本日より投稿時間を夜に変更しました。
加筆修整しました(05.12.28)
しーちゃんは部屋へ戻ってくると、またもや折り畳みテーブルにべたりと貼り付いた。
「まだアリーシャのこと考えてる?」
そう聞くと首を振り、つぶれたままの姿勢で手を伸ばしてきた。
「れーちゃん、手貸して」
手を伸ばすとまた額に持って行く。ぺたり。思念石に触れた瞬間、ずわりと思念波が流れ込んで来る。目を閉じると再生が始まった。
レイアーナさんとシュリーアさんが、くっきりと日本の形が見える空に浮かんでいる。これ、私がしーちゃんに調べるように頼んでいた記憶だ。レイアーナさんが近畿地方を指差し、
『あの辺りだな』
と言うと、シュリーアさんも思念波を感じ取って、
『ええ、感じます。初めてですわね。御姉様とわたくしのイルラが同時に見つかるのは』
と少し嬉しそうに答える。
『今回のイルラはどんな方でしょう』
とシュリーアさんが少し楽しみにしている様子も伝わってくる。ついでにしーちゃんが、
『さあ、次に来るのはあたしたち? それとも大災害? どちらでもカモーン!』
と盛り上がっているのも伝わる。相変わらずのテンションだね。
昨日、しーちゃんに大災害についての記憶がないか探して欲しいと頼んだ。何となくだけど、レイアーナさんはその記憶を思念波網には流していないような気がしたからだ。レイアーナさんが流したという、地球に来てからの記憶はこの世界にいる間の全ての記憶ではない。地球中を飛び回っているはずなのに、移動中の記憶はほとんど見たことがない。大体がイルラと会う直前から、会っている間の記憶しかない。
どこから来ているのかな、と思って探してみても宇宙ステーションに来る前の記憶は見たことがないし。昨日の私としーちゃんを見た記憶も、あの古墳の前からしかなかった。だから大災害につながる記憶をレイアーナさんは流していないと思う。昨日探した時も見つからなかった。シュリーアさんの記憶にあって良かった。
── おっと、集中しないと。
しーちゃんがくったりとしている間に確認しておかないと飽きっぽいしーちゃんのことだ、またぐちぐち言われちゃう。
二人はどんどん近付いていく。大阪府全体が見えるくらいの位置に来た時、レイアーナさんが突然ぴたりと停止した。
『御姉様?』
不思議に思ったシュリーアさんが声をかけたけれど、レイアーナさんは淡路島と大阪府の間の海を無言で見つめている。
『どうかなさいましたか?』
少し不安になったシュリーアさんがもう一度聞くと、レイアーナさんは顎に手をやり、考え込む仕草をしながら言う。
『大地のエネルギーに歪みが生じている。かなり大きい。……あれは放置しておくと大災害を引き起こすだろう』
驚いたシュリーアさんが、
『御姉様、大地のエネルギーが見えるのですか?』
そう聞くとレイアーナさんの口元が引き上がる。
── 知ってる。これは面白そうだと思ったときの顔だ。
『見えるぞ。そなたも感じ取ってみれば良い』
『感じ取る……のですか?』
シュリーアさんが戸惑いながらそう呟くと、
『思念波網の波を感じ取るのと似たようなものだ。この世界にも統率されてはいないが精霊の力はある。その力の流れを読めば良い』
── ええっ? 精霊の力? 何それいきなりファンタジー!?
しーちゃんも同じタイミングで驚いていて、
『なになに!? いきなり魔法の世界へいらっしゃいなの? ええーっ! それって、あたしたちが気づいてないファンタジー世界が、実はあるみたいな? うそ、ハリー・ポッターみたいな魔法使いが本当にいるの? やだやだ! まじ楽しすぎるんだけど!』
大興奮で非常にうるさい状態になっていた。……んだけど。次の瞬間、
『のおおおおおおおおおぉ!』
しーちゃんの雄叫びが脳内にこだました。うるさすぎて思わず頭を抱える。うわぁ、頭の中がぐわんぐわんしてるよ……。
残念ながらシュリーアさんの記憶にその先はなかった。くううっ、まさかのお預けである。私の記憶じゃなくて良かった……。これ、夢で見てたらしばらく立ち直れなかったと思う。ものすごく、ものすごく気になるけれど、記憶にないものは仕方がない。
── 精霊の力!? ああ、気になるっ!
でもしーちゃんの記憶は続いていた。
『見えました、御姉様』
シュリーアさんが見ている海の一部分に、緑色の点が見えていた。二人が近付いていくと、その場所に渦が出来ているのが見える。黄緑、緑、深緑のまだら模様が一点でぐるぐると渦を巻いている。よく見ると内側の方が緑が濃い。レイアーナさんの声が聞こえる。
『あの渦が全て深い緑色になれば危険だ。おそらくかなりの災害を引き起こすだろう。……ふむ、これを餌に次のイルラを得るのも面白そうだ』
『御姉様、この災害を餌にするとはどう言うことでしょうか? 申し訳ありません。わたくしにはこの渦とイルラを得ることとの関係がわかりません』
シュリーアさんは、『御姉様の意図が汲み取れないなんて、わたくしは何と役立たずなのでしょう』と、とても悔しそうに思っている。けれどもそんな気持ちを一切顔には出さず、本当にすまなそうに見せている。そのときレイアーナさんは片方の眉を上げた。
『災害が起こることを知らせれば、その対策をせねばと思うであろう。それに思念波を使えばあの渦を散らすことも出来よう』
『そのようなことが出来るのですか? 』
シュリーアさんが驚いて聞き返す。
── シュリーアさんも知らなかったんだ。
しーちゃんはさっきの衝撃から立ち直って、
『ふふ、さあいよいよ分かるよ』
とわくわくしている。レイアーナさんが渦を見つめながらきっぱりと言った。
『出来る』
今回はここまで。←鬼?
続きが読みたい病になってくれるといいな、と思っています。
そして、現在コラボ企画が進行中です。詳しくは活動報告に載せています。
(改稿現在、コラボ小説連載中です。神崎ライくんの物語に、しーちゃんが主人公で転移をしては学園にお邪魔して素敵なお友達と遊んでいます。最新話では、れーちゃんが巻き添えにあい、二人で転移することになり、衝撃の爆弾を投下します。コラボはこちらの物語の6話までとリンクした内容になっていますので、そちらもお楽しみいただけると嬉しいです。コラボはこちらから)
https://ncode.syosetu.com/n0156hr/
それではまたお会いしましょう!
皆様に、風の恵みが共にあらんことをお祈りいたします。




