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125  玄室での遭遇の裏側1

すみません。また投稿が遅れました。

125話お届けします。


姫様達がなぜ二人を協力者にしたのか?

二人の思念石がなぜあの形なのか?


加筆修整しました(05.12.10)

 シュリーアさんは震えながら自分の腕で身体をかばうような仕草をしている。その間にも私としーちゃんの思念波は重なったままで、時々少し大きな波を寄せてくる。声が大きくなると波も大きくなっているみたい。


 ── 知らなかった。私としーちゃんの思念波がこんなにも強いなんて……


 自分としーちゃんを見ている驚きよりも、自分たちの思念波の威力いりょくへの驚きの方が強くて、しばらく茫然ぼうぜんとしてしまった。


『ほう、強いな』


 そう言ってレイアーナさんが、いつものにやりとした笑いを浮かべた。それから、


『気が変わった。あれをイルラにするぞ。シュリーア、ぎょせそうか?』


 と言ってシュリーアさんの方へ目をやる。

 

『あの思念波を野放のばなしにしておくのはしい。とりあえずイルラにして様子を見るとしよう』


 何気なにげにレイアーナさんの思考が失礼だとは思うけれど、これは記憶だからどうしようもない。シュリーアさんは一瞬ぴくりと身体を震わせたけれど、顔を上げて、


『やってみます』


 とひと言だけ言って、背を伸ばした。レイアーナさんが、


『思念石があれば、あれらの思念波も落ち着く。何よりあの威力ならば良いエネルギー源になるだろう……行くぞ』


 そう言って動こうとした時、古墳の入口から声がして私たちは移動していく。レイアーナさんがちっと舌打ちをし、


『間が悪いな。どうするか……』


 私たちの様子をうかがっている。おじさんが説明している様子を見て、古墳の中に入るようだと気付いたレイアーナさんはシュリーアさんに声をかけた。


『シュリーア、あの穴の中へ行くぞ』

『はい』


 そう言うと二人は古墳の中へ移動していった。

 玄室に着くとシュリーアさんがぎょっとしたように一度立ち止まり、


『これは、お墓ですか?』


 と気味悪そうに見渡した。レイアーナさんは特に動じた様子もなく、


『そうであろうな。古代の墓を発掘しているのだろう。……あれは資料映像を撮っているところだな。ふむ、これはこれで面白いものが見られたな』


 そう言って父さんたちが写真を撮っているところを興味深そうに見ている。ひつぎの方はちらりと目をやっただけで、特に気にする様子もない。


 ── 二人とも、もっと古代ロマンに感動してよ!


 今は封鎖ふうさされてもう中に入ることができない玄室をまた夢で見られるなんて。レイアーナさん、ありがとう! じっくり見たいのに、レイアーナさんの視線は入口近くで立ち止まっているシュリーアさんに向かう。


『シュリーア、どうした?』


 いぶかしげに聞くと、シュリーアさんはためらったように言った。


『ここ、お墓、なのですよね……』


 声が震えている。するとレイアーナさんは、ふと笑って、


『なんだシュリーア、怖いのか?』


 と少しからかうように聞いた。


『いえ、怖いというよりも気味が悪くて。あそこに死体があるのですよね?』


 シュリーアさんは立ち止まったまま。


 ── やれやれ、幼いな。これくらいでおびえるとは。だが、普通はそんなものなのか? 私とシュリーアでは立場が違いすぎてよく分からぬな……しかたない。


 軽くため息をつくとシュリーアさんに言った。


『シュリーア、私もくわしいわけではないが、おそらくその棺はからだぞ』

『え、そうなのですか?』


 シュリーアさんは不思議そうな顔をして聞く。私もびっくりした。


 ── どうしてレイアーナさんはそう思ったんだろう?


 レイアーナさんが続ける。


『向こうにいる研究者たちを見てみろ。棺に無関心だろう。もしもこの中に死体が入っているならぱ、あのように冷静に記録など取れないはずだ。それに棺が綺麗きれいすぎる。おそらく儀式用のもので、本体は別の場所に埋葬まいそうされているのではないか?』


 真相は思念波を読まねばわからないが、ずはシュリーアを落ち着かせる方が先だ。そうレイアーナさんが考えているのがわかった。


『それよりも懸念けねんすべきは、あれらに渡す思念石だ』

『あの子どもたちの持ち物から造るのではないのですか?』

『今までのイルラは全て成人だ。だが、あの者達は子どもでしかも強い思念波を持っている。成形されたものでは思念石の許容量が足りなくなるかも知れぬ。未成形のものか、破損はそんした石が望ましい。そうすれば思念波を吸収しながら思念石が成形体になるまで成長する。何かそれらしきものがないものか……』


 そう言うと、辺りを調べ始めた。そして棺と棺の間の地面に、いくつもの破片が散らばっているのを見つける。


『ほう、これはいい。シュリーア』

『はい』

『この辺りに散乱している破片はへんの中から、そなたの思念波が最も馴染なじむ石を見つけよ。思念波を出来るだけしぼり、いくつかの石に伸ばしてみよ』


 そう指示を出す。


 ── 私たちが玄室に入るまでに、こんなやり取りをしていたんだ。言われてみれば、他の協力者の人たちの思念石って指輪とかブレスレットの石とか、形が決まっていて大きさは変わらなさそう……。


 そんなことを考えているうちに、シュリーアさんは目を閉じて言われた通り思念波を細い糸のようにして伸ばし、地面に落ちている欠片かけらに触れていく。やがて、真ん中の棺と左側の小さい棺の間の地面を指差し、


『あの辺りのものが馴染みがいいように思います』


 と言った。そこはまさにしーちゃんが白い勾玉の欠片を拾った場所と、ぴたりと一致していた。レイアーナさんも同じようにして自分の思念波を最も効率よく吸収しそうな石を選び出す。


 その石があった場所は、もちろん私が欠片を拾った場所だった。

次回の投稿で、「古墳に入ったら…」が無事投稿一周年を迎えます。ここまで書いてこられたのは読者の皆様のお陰です。本当にありがとうございます。


そこで感謝の気持ちを込めてアンケートをTwitterでしています。題して、

「一周年記念にあなたが読みたいのは??」

是非投票してみてください。こちらから↓


https://twitter.com/marine_aqure/status/1507635021821390853?t=KjXXq1a9oc2c4vK7xNjcsg&s=19


3月31日午後17時まで投票受付中です。


それではまたお会いしましょう。


皆様に風の恵みが共にあらんことをお祈りいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] レイアーナさんのクールさが如実に出ていて、読んでいてとても楽しい場面でした。淡々と理路整然と物事を考え、話せる人が個人的には好きなので。シュリーアさんの反応に戸惑いつつも、やっぱりクールと…
[一言] なるほど! しーちゃんとれいちゃんは思念波の才能があり大きな力をもっていたのですね! そして選ばれたということですね! 続き楽しみにお待ちしております(๑ーㅅー๑)
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