121 手に入れたスマホ
すみません。今回も遅くなりました。
大幅に加筆修整しました(05.11.19)
夜、新しく買ってもらったスマホを持って部屋に戻ってきた。あの後母さんが迎えに来てくれてそのまま携帯ショップに行った。お店で簡単な使い方を教えてもらっているとチャイルドロックの説明があって、すかさず母さんがチャイルドロックをかけようとしたので断固として阻止した。
「チャイルドロックをかけないのならスマホは買わないわよ」
と母さんもなかなか折れてくれず、仕方なくまた思念波を使ってしまった。
「お願い、チャイルドロックはかけないで。それからスマホに勝手に触るのもやめて欲しいの。画面のチェックもしないでください」
思念波を流しながらそう言うと、また母さんが一瞬無表情になって私の言ったことをくり返すと、何もなかったように元の表情に戻る。それからは何も言ってこなかったのでほっとしていたら、今度はくどくどと細かい注意をしだした。ちょっと面倒だったけれど、何とかスマホを手に入れることができた。
メールの設定をしたり、父さんと母さんの連絡先を登録したり、SNSのアプリをインストールしたり。難しいところを帰ってきた父さんに手伝ってもらっていると、また母さんから細かい注意を受ける。ここで余計なことをするとまた注意が増える。黙ってやり過ごし、なんとか部屋に引き上げてきた。思わずベッドに突っ伏して、
── つ、つかれたよー。
そのままゴロゴロ転がった。母さんってどうしてあんなに細かいんだろう。心配してくれてるのはわかるけど、もうちょっと信用してほしいよね。って、信用されないような隠し事をしてるのは私か。でも、異世界の姫様たちに協力して地震が起きるのを防ごうとしているなんて絶対信じでもらえないし。危険だって言って思念石も取り上げられるか、最悪捨てられてしまうよね……何回考えても隠しておくことしか考えられない。あーあ、いくら考えてもしかたないよねー。どうしようもないものはどうしようもない。なんとか気持ちを立て直し、しーちゃんに初電話をかけた。
『はーい、もしもーし』
「あ、しーちゃん?」
『お、無事にゲット出来たみたいだねー。ちょっと待ってて』
電話越しに遠くでしーちゃんとおばさんのやり取りしている声が聞こえた。あら、怜奈ちゃんからの電話? それならここで話しなさい、ていうおばさんの声にしーちゃんが、えー、やだよーと文句を言ってるのが聞こえた。すると、
『もしもしれーちゃん? 連絡先登録してあたしからかけなおすから、ちょっと待ってて』
と言って通話が切れた。そのまましばらく待っていると着信音が鳴る。
「もしもし」
『もしもしれーちゃん? 今から言うことよく聞いて。あたしたちの通話は傍受されてるかもしれない。気をつけて!』
「え? どういうこと?」
傍受って。何かまた突飛なことを考えついたのかな、しーちゃんらしいけど。くすりと笑っていると真剣な声が携帯から聞こえた。
『れーちゃん、笑いごとじゃないよ。母さんたち、あたしたちが影でこそこそしているのは、何かまたたくらんでるんじゃないかって警戒してるんだ。だからこっそりあたしたちの電話を聞こうとしたり、SNSをチェックしたりしようとしてるんだよ』
……あー、それは、あり得る。昨日の花火の時も心配そうにしてたもんね。私たちが内緒で何かやらかすつもりだと思っても、仕方ない。
── 実際やっちゃってるしね。でも、
「え? そうなの? さっき二階に上がってくる時は特に何も言われなかったよ? 父さんはいつも通りにこにこしていたし、母さんは……普通だったと思う……けど」
え、まさかそこに落とし穴が?
『甘いよ、れーちゃん。あたしたちの計画、母さんたちにばれたら速攻止められて終わりだよ。……ね、れーちゃん。今どこで電話かけてるの?』
「自分の部屋だけど」
『あたしがさっき電話を切ったのはさ、母さんたちの側だったってこともあるけど、母さんが耳を大っきくして電話を聞こうとしてたからだよ。部屋に上がろうとしたらここで電話したらいいでしょって聞いてくれないし! 仕方ないからまた使っちゃったよ』
しーちゃんの大きなため息が聞こえた。それから、
『だからね、れーちゃん。これからは電話をかけたり、SNSを使う時は最っ大限の警戒が必要だと思う』
「わかった。気をつけるよ」
「本当にわかってる? 嘘だと思ってないよね? だったら、今確かめてみるといいよ」
そう言われて閉じた部屋のドアの方をちらりと見る。まさか……ね。でも母さんなら……あり得るよ! そーっとベッドから立ち上がると携帯を口元に近づけてこっそりと言った。
「しーちゃん続けて。試してみるから」
『わかった、……』
しーちゃんがおばさんたちに思念波を使ったことを話してくれている間に、そうっとドアに近づく。ゆっくりとドアノブを回して廊下を覗くと……。
「あ」
「あら」
そこにはドアに耳をつけた姿勢で固まっている母さんがしっかりいた。
「ごめん、しーちゃん。後でかけ直すね」
『了解ー』
電話を切ってじとーっと母さんを見ると、ぺろっと舌を出して、
「あーあ、バレちゃったか。残念」
と全然残念そうでなく言った。やっぱり信用なかったよ……。仕方なくまた力を使うことになった。
「母さん、私が電話しているときは近くにこないで。わかったら下に降りてて」
母さんが無表情になり、私の言葉を繰り返す。……だんだんこのやり取りにも慣れてきたよ。元の表情に戻った母さんは、
「遅くまで話さないで早く寝なさい」
と言うと階段を降りていった。これで大丈夫だろうと思いつつも、しばらく様子を伺って戻ってこないのを確認してからもう一度電話をかけ直した。
「もしもし」
『ね、言った通りだったでしょう?』
「うん……もう大丈夫だと思うけど」
『そっか。ねえれーちゃん、あたしたちこのこと絶対秘密にしとかないといけないと思うんだ。バレたら速攻で思念石取り上げられちゃうよ。そしたら大地震が起こって津波にぜーんぶ呑み込まれておしまいだよ?」
「そうだよね。だけど母さんたち、あれで大丈夫なのかな」
「そこは、またあの人たちに聞いてみないとわかんないけど。とにかくバレないようにするしかないよ。ね、ね、だけどさ、これってなんかスパイっぽくない? あたしたち秘密組織の一員みたい! 世界中に仲間がいてさ!』
……あー。なんかしーちゃんが違う方向に盛り上がっちゃったよ。
「しーちゃん、切っていい?」
盛り上がったしーちゃんが興奮して何か叫んでいたけれど、私はおやすみーと声をかけて通話を切った。するとすぐにしーちゃんからSNSのトークに書き込みが。
『勝手に切るんじゃなーい!』
……携帯で思念波が送れたらいいのに。でも興奮したしーちゃんの相手は本当に大変なんだよね。そう考えている間にもしーちゃんからはどんどんSNSが書き込まれている。
「やったー秘密組織の一員だよ!」
「スパイだよエージェントだよ」
「ドラマの主人公みたいだよね! ラノベ書いたら売れるかな?」
ヤバい。これ暴走モードだ。こうなったしーちゃんは止められない……止められない?
「あ」
ピンとひらめいて、しーちゃんに初メッセージを書き込んだ。
「れー、ちゃ、ん。石を 二つ と も 持って みて……と」
メッセージか既読になると、書き込みが止まった。しばらくしてから、
「落ち着いた?」
と書き込むと、
『うん、落ち着いた』
と返って来た。ほっとして「じゃ、また明日ね」と書き込むと、茶色いくまが布団に寝ているスタンプが送られてきた。
「さて、寝ますか」
スマホを充電器にセットすると、布団に入った。なんだか盛りだくさんな一日だったな、と思いながら目を閉じた。さて、寝る前にもう一仕事してしまいますか……。
投稿遅れ気味ですが、必ず投稿はしますので、長い目でみてください。頑張ります。
ブクマ、評価、いいね、感想、いつでもお待ちしています!
再読の方いつも本当にありがとうございます。感謝の気持ちでいっぱいです!
それではまたお会いしましょう。
皆様に風の守りがあらんことをお祈りいたします。