120 だだ漏れでとほほな私
本当にごめんなさい!
だいぶ更新遅れてしまいましたが、
120話目をお届けします。
怜奈のやらかし回です。
かなり大幅に修整しました(05.11.15)
おじさんは笑いながらしーちゃんに説明を始めた。
「詩雛には宝物に見えないかもしれないけれど、考古学的にはとても重要な遺物なんだよ」
しーちゃんは、ふうんといかにもどうでも良さそうに答えている。だけど私は我慢できなくておじさんに聞いた。
「おじさん、じゃあ、何歳くらいの子どもだったかわかったんですか?」
すると父さんが、
「だから怜奈、今それを父さんが説明していたじゃないか」
と悲しそうに言う。ごめん、父さん。でもちょうどいい機会だから言っておこう。
「父さん、今まで黙ってたけど、私父さんの説明じゃいつもほとんどわからないの」
そう告白すると父さんは分かりやすく背中にガーン、と書いた看板をしょっているような顔をして、そのまましょんぼりとうなだれてしまった。
「そうだったのか……」
うん、そうだよ。私にもわかるようにこれからは説明してくれたら嬉しいな。そうお願いしようと口を開いた途端、すっと思念石から力が流れ出したのがわかった。
「うん、だから父さん」
けれども、もう話し始めていたのでどうすることもできない。溢れ出た思念波が言葉と一緒に父さんに流れていく。
「今からおじさんがする説明をよく聞いてて。おじさんの説明なら私にもよくわかるから」
父さんの表情が一瞬抜け落ち、
「わかった。小鳥遊の話をよく聞く」
と言うと、その後はすぐ元の父さんに戻って、
「よし、小鳥遊。勉強させてもらうからしっかり怜奈に説明してくれ」
真面目な顔でおじさんに言った。おじさんはちょっと苦笑すると説明を続けてくれる。
「それじゃ説明するよ。歯には二種類あるのは知っているね?」
「それくらい知ってるよ。乳歯と永久歯でしょう」
しーちゃんが唇を尖らせて答えるとおじさんはにこにこしながら続ける。
「そうだね。もしも見つかった歯が乳歯なら、とても幼い時期に亡くなったことがわかるよね。歯は成長と共に大きくなる。歯の大きさから亡くなった年齢を推定することもできるんだ。もしもDNAが採取出来れば、もっといろいろなことがわかるんだよ」
今回見つかった歯はとても小さかったらしい。小さい棺に葬られていたのは、十歳かそれよりももっと小さい子どもの可能性があるそうだ。けれどもしーちゃんはその話を聞いても、
「ふーん、あ、そう」
と気のない返事でつまらなそうにしている。うーん、これってかなり大発見のものすごーいことだと思うんだけどなー。そこはもっと感動しようよー! 話を聞いているうちに素敵な古代ロマンがたっぷりつまったストーリーが後から後からわき出るように脳内で展開されていった。
── 私はさる豪族の娘。お父様とお母様、それに大事な跡取りの弟の四人家族。弟はまだ小さくて、飼い犬と遊ぶのが大好き。よく近くの丘で転げ回って遊んでいた。お父様は戦上手で次々と領土を拡大し、邑の誰からも信頼される立派な人。けれどもだからこそ敵も多くて、常に暗殺の危険にもさらされていたの。敵の間者が隙を見ては私たちを狙ってくる。危険と隣り合わせの生活だった。それでもお父様が負けることは一度もなかった。
そんなある日、珍しい野草が手に入ったからと食卓に見たことのない料理が出された。とても身体にいいということなので皆が喜んで箸をつける。私は青菜が苦手で食べたふりをして捨てていたら、突然皆が苦しみ出した。身体にいいと出されたその野草は実は毒草だったのだ。……ああ、何って悲劇! ──
じーんと感動していると、妙に生あたたかい視線を感じた。ハッとして周りを見渡すと、おじさんだけでなく休憩中の作業員の皆さんまでが、生あたたかい視線で私を見ている。え? あれ? これってまさか……。
「れーちゃんおめでとう。今の妄想、思いっきりだだ漏れしてたから」
みるみる私の顔が火照り出した。
「こ、これは、あの、そのっ!」
見事に私は撃沈した。そんなはずじゃなかったのにー! 思わずその場にしゃがみ込むと、頭の上から父さんの嬉しそうな声がした。
「うんうん、怜奈の想像通りだったかも知れないね。さすが僕の娘だね」
何だかよくわからない喜び方をされてるよっ。おじさんは、
「怜奈ちゃんの想像力はすごいね」
と優しく笑ってくれた。
勝手にだだもれした思念波のことは誰も疑問に思っていないみたい。そのことにはほっとしたけれど、穴があったら入りたいくらい恥ずかしいよっ。でも、心の中で思いっきり叫んだだけできっちり皆に伝わるんだろうってことは想像できたから、必死でその気持ちを押し殺した。その押し殺した気持ちは、きっちりと思念石が吸収していく。お陰で穴を掘らなくても無事復活できた。
── ありがとう、私の思念石。もう同じ失敗はしないよっ!
落ち着いたのでゆっくりと顔を上げたらしーちゃんと目が合った。途端にニヤリとしながら、
「掘ってあげようか、穴」
と言われたのでにらんでやった。これくらいじゃしーちゃんには効かないけどね! ふんっ。
何とか感情を抑えている間にしーちゃんが、
「あーあ、あたしにもれーちゃんみたいな妄想力があったら、たかが歯が見つかっても大興奮できたかもねー。でも、やっぱりお宝だとは思えないよ。そっからいろいろわかるのが大事なのはわかったけどね。ちぇー、お宝もうないのかなあ」
とぶちぶち文句を言い続けている。
「ねえ、しーちゃん。お願いがあるんだけど」
なかなかリアルが忙しくて更新遅れが続きすみません!
次回は遅れず投稿出来ると思います。
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