119 お宝大発見その2
またもやお待たせしてすみません。
何とか投稿することが出来ました。
加筆修整しました。
(05.11.12)
「しーちゃん、まだぐらぐらする?」
「うん。なんか体の中に別の身体があって、それがふわふわ浮いてる感じがする」
思念石を持つしーちゃんの手も微かに震えている。
── そうだ、思念石を持ってるんだから、あの方法が使えるかも?
私は思念石からエネルギーを補給する方法を伝えた。何度か試行錯誤をして、しーちゃんは勾玉からエネルギーを取り出すことに成功した。思念石から出たエネルギーがしーちゃんの体に吸い込まれていく。何度かそれを繰り返していくと苦しそうな表情がなくなった。ほうっと息をついたしーちゃんは、いつものにかっとした笑い顔を取り戻し、
「れーちゃん、マジ助かった。あたし、復活!」
元気良くその場で跳び跳ねて見せた。
── 良かったー。
ほっとして胸に手を当てた。
『常に冷静であれ』レイアーナさんの言葉が頭の中で警告する。何て難しい。でも、このコントロールが出来るようにならないときっと大変なことになる予感がする。頑張ろう、私。
しーちゃんはそのまま木の周りを跳び跳ねながらぐるりと一周して戻って来ると、
「すっごーい。前より調子がいいくらいだよ」
と満面の笑顔で言った。ほんとに調子いいんだから。ちょっとため息を吐いていると、しーちゃんが私の顔を覗き込んできた。
「れーちゃんの方が元気足りない感じだね。よし、」
そう言うと私の前に仁王立ちし、スマホを突き出した。何?
「れーちゃんに届け、元気パワー!」
しーちゃんの思念石からエネルギーが飛び出してきて、ふんわりと私を包みこんだ。
『れーちゃん、元気になーれ』
それ゙はすぐに思念石に吸収されていったけれど、確かに元気エネルギーを分けてもらった気がする。
── そうか。強い想い全てが悪いわけじゃないよね。こうやって人を元気にする力にもなるんだ。
私はいつの間にか俯いていた顔を上げて、精一杯の笑顔で言った。
「ありがとう、しーちゃん」
それから私はスマホを買ってもらえるようになったことを話し、レイアーナさんに聞いた思念波の危険性についても伝えた。しーちゃんは真面目な顔で、
「わかった、気を付けるよ」
と言ってくれた。その後、夢の記憶を昨日のように送り合い、情報共有をしているとようやくさやかさんが私たちを呼んでくれた。
「ごめんねー、つい夢中になっちゃって」
さやかさんのところに駆け寄ると、両手を合わせてひたすら謝ってくるので思わず顔を見合わせて首を傾げてしまった。
さやかさんの説明によると、今日掘っていたのは家型埴輪が見つかった場所のさらに後ろの方で、残念ながら松永さんが見つけたような大きな塊は見つからなかったらしい。そのかわりにいくつもの破片が固まって出土したため、元の形が何だったのか気になったさやかさんは、そのまま夢中で掘り集めていたそうだ。それで私たちを呼ぶのが遅くなってしまい、謝ってくれたのだった。
「なーんだ、お宝が見つかったわけじゃないんだね」
「さやかさんのお邪魔じゃなければ気にしなくていいですよ。それで、何の埴輪が見つかったんですか?」
ちょっとがっかりしているしーちゃんはさらりと無視し、わくわくしながらそう聞くとさやかさんは得意そうに、ふふんと鼻を鳴らした。
「わかりやすそうな部分を持って来てあげたわよ」
穴の中からいくつもの破片を取り出して並べて見せてくれる。何の欠片だろうと熱心に覗き込んでいると、松永さんと同じように刷毛を渡してくれた。刷毛を受け取るとさやかさんはさっさと穴の中に戻って行った。
「れーちゃん、やるよ」
さやかさんを見送っているうちにしーちゃんはさっさとしゃがみ込み、猛然と刷毛を動かし始めた。私も慌てて刷毛を手に取り、しーちゃんに負けじと欠片の掃除を始めた。
欠片掃除に夢中になっているうちに、昼食の時間になった。お弁当を広げていると大興奮の父さんたちが戻って来た。あまりの興奮具合に離れた所からでも思念波が飛んでくるくらいだ。これは、何か大発見があったに違いない! しーちゃんも思念波を感じ取ったらしく、おじさんをギラギラする目でにらんでいた。
父さんがとても嬉しそうな顔で戻ってくるなり、弾丸のようにしゃべり出した。例によって例のごとく専門用語をばんばん出しながら話し続ける父さんに適当に相槌を打ちながら流し聞く。父さんのことをひきつった笑顔で眺めるおじさんのことなんかお構い無しだ。こうなった父さんは話し終わるまでどうしようもないので、おじさんには目で放置していいよと合図を出した。すると、すかさずしーちゃんがおじさんを捕まえて、
「ね、ね、父さん。どんなお宝が見つかったの?」
とわくわくがあふれ出た顔で聞いている。父さんの話を聞いているふりをしながらおじさんの説明を横耳で聞いたところによると、再び玄室に入った父さんたちは棺の中に残っている微粒子を採取する作業をしていたらしい。単なる土の塊に見えても、実はその中に骨の一部や服の繊維なんかが残っていることがあるそうだ。
今回はたくさんの遺留品が見つかっているけれど、長い年月の間に風化は進んでいる。だから棺の中に残っているものは出来るだけ採取して分析するんだって。うわぁ、大変そう。それで、その採取中におじさんが一番小さい棺の中から歯を一本見つけたのだそうだ。途端にしーちゃんがかっかりした顔になる。
「なんだ、歯かぁ。お宝でも何でもないじゃんー。つっまんないー。どこが大発見なのー?」
唇を尖らせてぶーぶー言うしーちゃん。でも、私は知っている。だてに父さんの娘をやってるんじゃない。歯、歯の化石だよ? いや、化石じゃないのかな。どっちにしてもこれは大発見だ! 父さんが興奮するのもわかる。歯はすごいのだ。知らないうちに左手の拳に力が入っていた。
本当に歯はすごいんですよ。でも確かにお宝には見えないですよね。しーちゃんが普通です。そんな歯にも食いつく怜奈は、やっぱり考古学狂いです。立派に父さんの血を受け継いでます(笑)
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それでは、またお会いしましょう。
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皆様に風の守りが共にあらんことをお祈りいたします。




