116 協力者ディエゴの力の使い方
本当にお待たせしました\(_ _)
ようやく出来たので、投稿します。
今回の舞台は…?
加筆修整しました(05.10.29)
もう少しジョンソンの様子を知りたかったけれど、レイアーナさんは次の約束をしたらジョンソンから離れてしまった。でも、思念波が影響を与える範囲が思っていたよりも広い範囲で、かなり多くの人に影響を与えてしまうことがわかった。私があんな大勢の人に向けて使うことなんて、あり得ないとは思うけど覚えておこう。
── そういえば、また長い夢を見ているな……。身体、大丈夫かな?
昨日の朝、思念体が体から離れかけていたことを思い出して不安になった私は、自分の体が感じ取れるか試してみた。
── うん、大丈夫。
少し重い感じはするけれど、右手を動かしてみるとゆっくりと動く。思い切って腕を上げてみた。大丈夫だ、上がる。今晩も予防のために御守り袋は側に置いて眠ったので、思念波で思念石を探す。
── あった。
そこからエネルギーを身体に流しこむ。しばらくすると重みを感じなくなったので、安心してまた眠りについた。
── 他の協力者で、思念波を使っている人はいるかな?
次に見えてきたのは、日射しの眩しい国だった。真っ白な砂のビーチがカーブを描くように長く続き、そこに真っ青な海が白い波を寄せている。海岸に沿うように高い建物が並び、ビーチ沿いには広い道路が伸びていた。
── すごくきれい! ここはどこだろう?
景色にうっとりとみとれていたら、レイアーナさんはビーチから何本か離れた通りへと移動していく。高い建物の間にはさまれた通りは、たくさんの人で賑わっていた。通りの両側にずらりと店が並んでいて、どの店も綺麗でおしゃれな感じ。化粧品を売る店、色鮮やかなバッグを並べている店。
通りを歩いている人も様々で、肌の白い人、真っ黒な人、褐色の人、アジア系の人。いろんな国の人が歩いている。観光地ってことかな?
レイアーナさんはその中の一軒の店の前まで来ると、ショーウインドーをくぐりぬけて中へ入っていった。店の中に入った途端、緑、赤紫、黄色、明るいピンクと鮮やかな色が目に飛び込んで来た。たくさんの雑貨が並んでいる。籠、帽子、帯みたいなもの、紐状のもの。見たことのないものばかりだ。
── すごい。とってもカラフルできれい!
壁際にサッカーのポスターが貼ってある。選手のユニフォームに付いている国旗が、見たことのある形をしている。……どこだっけ? もう少しじっくり見たかったけれど、レイアーナさんの視線は店の奥を向いている。レジから大きな声が聞こえる。外国の言葉だから何を言ってるのかはわからない。するとまた同時通訳のように頭の中に声がする。
『それでは安すぎるよ。そっちのキーホルダーを一個つけるから、それでどうだい?』
それに答える声も聞こえるけれど、こちらはよくわからない。レイアーナさんは気にせずゆっくりと近付いていく。
『よし、それで手を打とう。はいよ、二百五十ヘアイスね。良い旅を』
すると、若い男の人と女の人が連れ立ってレジから店の入口へと出ていく。最後に二人が、
「オブリガード」
と言って店から出ていった。……オブリガード。確か、ポルトガル語のありがとう、じゃなかったかな? レイアーナさんはレジの横にいた中年っぽい男の人に声をかけた。
『ディエゴ。調子はどうだ?』
『おお、姫さんか! もう三日たったかい。早いねー、元気だったかい?』
男の人はそう言うとがははと大きな声で笑った。ディエゴと呼ばれたその人は、褐色の肌に縮れた焦げ茶色の髪の朗らかな男の人だった。濃い眉毛と大きな茶色の目がくるくるとよく動き、目尻のしわが人懐こそうだ。ディエゴは素早くお金を片付けるとレイアーナに、
『ちょっと待っててくれよ』
と声をかけて、店の扉に何かをかけに行った。カチリと音がしたので、ドアに鍵をかけたみたいだ。笑いながら戻ってくると言った。
『こうしとかないと客が来ちまうからね。……さて、と』
ディエゴはレイアーナさんの前に来ると腕組みをして言う。
『姫さんのお陰でこっちは大助かりだ。ありがとよ。最初は体に触れてなけりゃわからなかったが、こいつの力が増えてからは近くにいるもんの考えてることがすこーしだけわかるようになったよ』
ディエゴは右手の中指にはめている指輪を見る。きれいな黄緑色の指輪だ。
──あれは、エメラルドかな。
金色の輪の上で石が光っている。ディエゴがにやりと笑いながら続ける。
『仕入れの時にキズモノをつかまされることも減ったし、客が求めてることもわかるんで、店の売り上げが上がったよ。リオは大都市だが、カーニバルのある夏場に比べると今の時期は客も少ないんでね。どうしても収入が減るんで本当にありがたいよ』
レイアーナさんはそれを聞くと、ふんと鼻を鳴らして言った。
『客が少々割高の値段でも気前良く買っていくように仕向けてもいるのだろう』
するとディエゴはまたがははと笑った。
『やっぱり姫さんにはお見通しか! その通り。ま、クレームが来てるわけじゃなし。品質を落としてるわけでもないからな。マージンがかからない分それでも大手の店よりはうちはまだ割安なはずさ。足元見られなくなったんで損が減ってるのさ』
『そうか。そなたが自分の思念波をどう使おうが、それはそなたの自由だ。そなたが思念石に貯めているものを貰えれば私はそれで良い。……では、いつも通り半分もらうぞ』
レイアーナさんはそう言うとディエゴの指輪に手を伸ばした。指輪の中にはまだ思念波が満ちていなくて、三分のニくらいたまっているようだった。ディエゴが構えるのを待ってレイアーナさんが思念波を取り込んでいく。
『では離すぞ』
回収を終えるとレイアーナさんがまた自分の思念波を額に繋ぎ止める。ざざっと辺りの思念波がディエゴの指輪に流れ込んでいく。
『おっと』
ディエゴはそんなに苦痛を感じることなく反動の波を乗りきった。レイアーナさんも今度は難なくその波を受け流していた。
── ふうん、人によって思念波のたまり方にも違いがあるんだ。三分の一くらい抜かれるだけならそこまで強い反動は来ないみたいだね。
遅くなってすみませんでした。ずれて今日いつもの投稿時間に、あれ、まだアップしてない?と思った方もいると思います。
言い訳すると資料の読み込みに思ったよりも時間がかかりました。南半球は季節が逆なので、冬の資料探したり、その時の海岸の様子、それからディエゴの店の様子。難航したのは、コパカバーナが、二つあって、最初見つけたのがボリビアの資料で、え?私間違ってた?ってなりました。
ちゃんとあったんですけど、めちゃくちゃ焦りました。
それでは、またお会いしましょう。
皆様に風の守りが共にあらんことをお祈りいたします。