107 花火はどこへ
章を追加しました。
(と言って、付け足し忘れてました。)
101話から第七章になります。
修整しました(05.9.29)
「食ったー!」
しーちゃんの満足気な声でバーベキューは終わった。すかさずおばさんが、
「詩雛、口が悪い!」
としかっていたけれど、私もしーちゃんと同じ気分。美味しい時間ってあっという間に過ぎちゃう。お腹だけがその時間の存在を主張しているよ。
── ああ、本っ当においしかった。
少しぽっこり丸くなったお腹をさすりつつ、バーベキュー広場を出た。
── もう少ししたら、約束の時間だ。
花火の打ち上がりを見るために移動するだろうと思っていたら、母さんたちの足が出口に向かっている。しーちゃんが慌てて、
「ちょっと、父さん。花火見ないで帰っちゃうの?」
とおじさんの腕を引っ張りながら聞くと、おばさんが笑いながら、
「大丈夫。花火は見えるわよ」
と言って先へと歩いていく。
「どーゆーこと?」
しーちゃんがはてな顔で大人の顔を見比べながら聞くと、今度は母さんが答えた。
「あのね、詩雛。今日は花火を見るためにたくさんの人が来ているでしょう?」
「そうだね」
「うん」
私たちは頷いた。確かにどんどん人が増えてきている。朝からもまあまあ混んでいたけれど、今はもっと人が多い。私たちのような家族連れだけではなくてカップルやグループで集まっている人たちが増えてきていることに気付いた。母さんが続ける。
「花火目当てに午後から入園してくる人がすこく多いの。駐車場もたぶんいっぱいになっているわよ」
父さんが続ける。
「ハルヴェストの丘の駐車場から出る道は一本道なんだ。花火を園内で見終えてから帰ろうとすると、駐車場を出るだけで一時間以上待たされるんだよ。父さんたちは明日も仕事があるし、怜奈たちが寝る時間も遅くなってしまう。だから花火は駐車場から見て帰ろうと思っているんだよ。大丈夫、駐車場からでも十分花火は見えるからね」
母さんが笑って言う。
「そうしたら花火が終わったらすぐに駐車場から出られるでしょう?」
そういえば朝園に着いたとき、まだ駐車場には空きがいっぱいあるのに、父さんは車を随分入口から離れた場所に止めてたっけ。あれ、わざとだったんだ。母さんたち天才。そう思っていたら父さんが苦笑しながら、
「前にここへ来た時にね、花火を間近で見てから帰ろうとしたら出口までずらーっと車が並んでいて、停めているスペースから車を出すのも大変だったことがあるんだよ」
と教えてくれた。
「あの時は本当に大変だったわ」
と母さんも思い出したのかくすくすと笑った。同じように考えている人たちが結構いるみたいで、駐車場の一角に人が集まっていた。皆園の方に体を向けている。私たちもその中に加わり、花火が打ち上がるのを待った。
次第に辺りが暗くなっていき、園内で花火の前イベントとして開催されている野外ライブの音が聞こえてきた。その時、不意にしーちゃんが手をつないできて、小声で話し始めた。
「れーちゃん。あたし、まだ昼間の説明受けてないんだけど」
「え、何のこと?」
『何のこと、ってもう忘れちゃったの? トイレにこもって何かやってたでしょう。あの辺にあった思念波が一気にれーちゃんのところに流れ込んでいってたのに、あたしが気付かないと思う?』
おお、副音声みたいに思念波がしーちゃんの言葉を伝えてくる。なにげに便利。……うーん、どう説明したらいいのかなあ。ポケットの中のお守り袋をそっと握る。そこには二個の思念石が入っている。新しく作った思念石も、同じようにお守り袋の中にしまっておいた。
新しい思念石は、最初ものすごい勢いで思念波を取り込んでいたけれど、その勢いが収まってからはレイアーナさんから受け取った思念石とそれほど変わらないスピードで吸収を続けている。
吸収する量は二倍に増えたわけだけれど、それで私の負担が増えたかと言われるとそうでもない。初めは持ち歩いても大丈夫なのか不安はあった。扱いを間違えたら命の危険があることも分かっている。……だけど、必要だと思ったから。ある程度覚悟してもう一つ思念石を作ることにしたつもりだ。結果としては思っていたよりもうまくいった。
── あと二つくらいならコントロール出来そうな気がするんだよね……。
天然石はまだいくつもある。やろうと思えばできる。……でも、どうやってしーちゃんに伝えたらいいのかな。
「えっとね、あれは……」
とりあえずしーちゃんの方を向いて何か言おうとしたそのとき、
『どういうことか説明してもらおうか』
冷ややかに響く声が頭の中に届いた。
頭上からゆっくりとレイアーナさんが降りてくる。目がつり上がり、怒っているのがわかる。そのすぐ後ろからシュリーアさんが頬に手を当て、困ったような顔で微笑みながら降りてきた。そのまま私たちの目の前に来ると、レイアーナさんが腕を組み、険しい目つきのままで言った。
『お前たちはどうしてこうも毎回問題事を引き起こすのだ。あれからたった二日だぞ。なぜこうも次から次へと』
しーちゃんが、
「やっぱり」
『れーちゃん、やらかしたね?』
と得意そうにふんと鼻で笑って言った。なんだかとっても嬉しそうでしゃくにさわる。
『さっすがあたしの親友』
って、何それ。思い立ったら即実行のしーちゃんと一緒にしないでほしい。これでも一生懸命考えたんだから。……まあ、確かにちょうどいいタイミングで天然石が手に入ったからっていうのはあるけど。それでも思い付いてすぐに実行したんじゃないよ? 心の中でぶちぶち文句を言っていると、レイアーナさんが、
『ふむ。ではレナの言い分を聞いてやろう』
と言うと、一転して面白そうだという顔に切り替わって聞いてきた。
── ええっ、これって私の考えてることが伝わっちゃったってこと?
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\(^-^)/
変な舞を舞ってお迎えさせていただきます。
それではまたお会いしましょう。
皆様に風の守りがあらんことを。




