5おしまい いきなりのモテ期
いきなりだが俺はクイテーナ学園の料理大会で優勝した。
死ぬ前はシェフとは無縁だったが、料理漫画のおかげでなんとかなった。
「貴方が優勝者の菓月さんね!?」
「あーはいそうですけど」
「私貴方が好きになりました!!」
「え」
それ優勝したからじゃね。ぜってー優勝者の称号目当てだよな。俺である必要ないよな
「ちょっと待ったああアタシなんて彼が優勝する前から目つけてたし好きだったわ!」
まさかそれはないだろ。こいつも優勝したから興味持っただけだろ。
「くだらない帰りましょう」
「そうそう」
女神と誰だっけ商人ちゃんに両手をひかれ、家へ帰る。
《人間よ》
「あ神様、優勝したら辛いものくれる約束だったよな神様」
《優勝しろとはいったが辛いものをやるとは言っとらんな》
――――たしかにそうだった。考えてみりゃこいつは優勝したら辛いものを俺にくれるとは言っていなかった。
《なんだかんだであの二人に挟まれ前世より幸せに暮らせるんだからいいじゃろ》
「別に幸せはいらない。七味くれよ」
《七味より女二人のほうが特じゃろ》
「あんたの価値観と俺の価値観は違うんだよ神様。七味プリーズ」
《もうお前にさける神の気力ポイントは切れた。あきらめろ》
「くそ……」
愛しい七味<ななみ>と俺は引き裂かれた。心のどこかにぽっかりと空いた穴はふさがらない。
苦肉の策に、胡椒やバジルで代用することにした。
気がつけば料理作ってくれる女神と家に通ってくる商人ちゃんがいる。
前は誰ともかかわらず部屋中七味だらけで気楽な一人暮らしだったが、まあこれはこれで悪くない。
「やっぱうどんはカップ麺より生タイプだな」
いつの日か、七味に会えることを願いながら、女神の作ったうどんを啜る。
「今日はカレェマンだよ~」
――――スパイスも悪くないな。